この戦いが始まった時から嫌な予感はしていた。名前が迅に玉狛の奴を助けて欲しいって話をされたっていうのを聞いた時から、ずっと。迅が絡むと必ずといって名前が傷付く。それすら、名前からしたら当たり前で当然で、どうでもいいことのようで。
オレはそれがずっと気に入らなかった。
名前はオレを助けてくれた。
オレが育った星で、オレがやっていた研究が引き金で人々は争い星が滅んだ。トリガー技術は何処の国でも重要な物で、それに携わってる者は重宝もされれば敵視もされる。ましてや、オレがやっていた研究はトリガー技術による医療の進化だ。身体の弱かった姉ちゃんを助けたい一心でやっていた研究が、結果として姉ちゃんを死なせた。
オレもあの時、死ぬつもりだった。
それを助けてくれたのが、たまたま遠征に来てた玄界の兵達──苗字名前だった。
オレを庇って黒トリガーになり死んでいった姉ちゃん。行く宛のないオレを連れ出してくれた名前。
何処か似ているんだ、この二人は。
だから次はオレが守る番なのに。
本当なら戦場になんて行かせたくない。でもそれは出来なくて。オレは非力だから戦闘では役に立てない。黒トリガーも普段は使用を禁止されているし、オレもあんまり使いたくない。背を守る事が俺には出来ないから、だからせめて名前のサポートを全力でするって、いつも決めてた。
「瀬尾!今すぐ三雲の所に飛ばせ!」
「換装は解除してありったけのトリオン全部回して奴を仕留める!良いから早くしろ!」
名前がオレらの事を苗字で呼ぶ時は完全に頭から"仲間"とか"味方"とかっていう文字が消えている余裕がない時。オレ達は一兵士なんだって思わされる時。
オレのサイドエフェクトは本来眼で見た対象を解析するものだけど、名前に限っては何時戦神の鎖が暴走するかもわからないから常にデータを採れるように繋がっていて名前の状態が視れる。
だから、戦神の鎖の常時開放に加え、全戦闘員のトリオン反応感知、更にはトリオン量を多く消費するワープの連投で名前がボロボロなのはわかっていた。
名前が三雲を助ける為に、自分を犠牲にする事なんてわかっていた。
止められなかったのはオレだし、その技術を作ったのもオレだ。名前が誰かを救う度に名前は傷付いていく。それが悔しい。
迅の未来視とか関係ない。
三雲の命とかどうでもいい。
オレは──名前に傷付いて欲しくない。
ただ、側に居て欲しい。笑っていて欲しい。傷付かないで欲しい。
名前の両親が死んで戦神の鎖が名前の心と身体を蝕んでいたあの時の名前に戻って欲しくない。まるで別人のように変わってしまった名前を、見てるのはつらかった。
最近良く笑うようになったのが、迅のおかげっていうのは気に入らないけど、それでも名前が笑ってくれるならそれでいい。
だから
「頼むからちゃんと眼を覚ましてくれよ…名前…じゃないとオレ、」
──迅を殺すしかなくなっちゃうよ
眠り姫は目覚めない
(バカ名前って呼んだ声も静寂に解けていくだけ)
毒林檎を食べたのは
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