【スクルドの時計は動かない】





「んっ……わたしどんだけねてた…」
「一週間」
「そっか…み、」
「皆、とは言えないけど無事だよ。あの眼鏡も名前が目を覚ますちょっと前に目が覚めたって」
「…瀬尾ちゃん、怒ってる…?」
「当たり前デショ。改めて全員で説教するから覚悟しといてよね」
「ういっす…」

目が覚めて色々検査されて病室に戻ってきて、私が気を失ってから今までの話を瀬尾ちゃんに聞いた。三雲の無事と、C級が連れ去られた事。守りきれなかった事に後悔の念が溢れてくる。

「名前、眼」
「あ…ああ…これね」

眼を覚ましてすぐ異変に気付いたのは瀬尾ちゃんだった。瞳の色が金色のまま。今まではすぐ元に戻ったのにこんな事初めてだ。さっき検査して貰ったけど勿論原因なんてわからない。

「しかも右目だけとか。悪目立ちして仕方ないよね」
「起きた時は両目ともだったからそのうち戻ると思うけど」
「最悪カラコンするしかないかなぁめんどくせぇー」
「自分のせいデショ」

呆れた様子で溜息吐かれ、それが何だか可笑しくて笑った。嗚呼、ちゃんと日常だ。トントン、と扉をノックする音が聞こえ返事をすると現れたのは支部長だった。
 
「よぉ元気そうだな」
「支部長!すみません御迷惑おかけして」
「別に迷惑なんかかかっちゃいないさ。ちょーっと瀬尾が塞ぎ込んで、ちょーっと凍矢と凛香が荒れてたくらいだ」
「ホントウニモウシワケナイデス」
「冗談だ。それより瀬尾から論功行賞の事聞いたか?」
「あ、忘れてた」
「だろうと思ったよ。名前、お前今回特級戦功だから」
「え」
「ついでに亜里阿第一で一級戦功貰ったから名前は2300ポイントゲットだよヨカッタネ」
「え」

ちなみに他の特級戦功は太刀川さんと空閑と三輪が貰ったらしい、が。

「そんなポイントいらねぇ…!!太刀川さんと相殺されるの1500だけでしょ?個人ランク上がっちゃうじゃん」
「今更デショ。ボーナス入るから名前の奢りでお寿司行こう回らないやつ」
「皆も貰ってるデショ」

お寿司お寿司と連呼してはしゃぐ瀬尾ちゃんは年相応に見えてくる。こういう所は可愛いんだけどなぁと何だが笑えてきた。

「お、そうだ。名前テレビつけろ。面白ぇもんが見れるぞ」
「面白いもの?」

ニヤリと笑う支部長に何だか嫌な予感がする。支部長に言われるまま、病室のテレビをつける。支部長がチャンネルをいじって、映し出されたそれは。

「始まってるのか」
「ボーダーの記者会見じゃん。え、ていうか何で支部長行ってないの?」
「めんどくさそうだったから断った」
「それが許される上層部なんなんだよ」

瀬尾ちゃんの発言にごもっともだと思った。支部長はケラケラと笑っている。この人に何を言っても無駄だと思ったので、テレビに集中する事にした。画面の中では主に根付さんとある記者とのやり取りが、段々ボーダーから一人の隊員の話へと流れていく。反吐が出るやり取り。流石メディア担当。

「これ、根付さんの仕込みデショ」
「あの眼鏡に矛先向けて事を丸く収めようって訳だ。ゲスイね、玄界の奴らも」
「ちょっと瀬尾ちゃん一括りにしないでくれないかな」
「まぁまぁお前ら、黙って見てろって」

こんな仕組まれた会見何が楽しいのか。仕方なくその視線を画面に向き直す。直後、画面の中に現れたそいつの姿に目を見開いた。

「三雲!?」
「ククッ…ナイスだぜ唐沢さん」
「え?何?どういう事?」
「別に。会議で三雲に矛先向けるのは決まってたんだけどそれじゃあちょっと面白くねぇーよなぁって思ってたら、唐沢さんと意見が合致してな。ヒーローにも反撃の機会を与えてやろうと思っただけだ」
「ヒーロー…か…」

画面の中の三雲は自分はヒーローではないと明言しながらも、信ずる道に真っ直ぐで、記者からの非難なんて物ともしていない。ただ、己に正直で。

「なんか、三雲って名前に似てるよね」
「…全然似てないよ」



ヒーローなんて柄じゃない
(私のはただの自己満足だ)


30 紙一重の大きな違い

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