『今から本部に行くから帰らないで待ってて欲しい』
迅さんはいつも突然だし、そんな迅さんの言葉に逆らえないのは昔からだ。
待ってろと言われた所でどうしようかと思ってたら、目の前に居た沢村さんのお尻を触ってたその人。
「セクハラ」
「名前ちょうど良かった。一緒に来てくれ」
正直嫌な予感がした。だけどどうしてだか、迅さんの言葉にはやっぱり逆らえないんだ。
嫌な予感は案の定当たり、連れて来られたのは会議室。迅さんは何時もの調子で扉を開けて挨拶してるけどその視線は本当に居心地が悪いボーダー上層部メンバーに加え、何故か三輪と知らない眼鏡の子。
「ちょっと迅さん。私居る空気じゃないですよね?」
「まぁまぁ。亜里阿支部にも協力して貰わないといけないことだから名前も聞いといて損はないだろ?」
亜里阿支部という言葉に会議室の空気が一瞬ピリッとした。
「名前、そういうことらしいから聞いてけ。そしたら俺が後から説明する必要なくなるだろ」
「支部長……」
林藤さんと忍田さんの間に陣取っている我等亜里阿支部の支部長は城戸さんに目配せして、そのまま何事もなかったように城戸さんは会議を進めた。
会議は最近多発しているイレギュラー門の事が本題のようだが、どうやらC級の眼鏡くんが勝手にトリガー使った事への処罰云々の話も混じってるようで、私の場違い感が半端ない。
(三門第三中学校って…あの時の)
鬼怒田さんが一日に二度の隊務規定違反だと言ってるから二度目は多分さっき屋上で見たやつだ。ということは、あの見知らぬトリオン反応は彼だったということか。それにしては、
(トリオンの質が明らかに違う……)
疑問とも疑いとも取れる目線を彼に向ける。彼は一体何者なのか?ふと、別の視線に気付き目を向けると三輪とバチッと目が合って、それはすぐに外された。
三輪の眼、あれは──
会議が終了した。最後の方ほとんど聞いてなかったけど、迅さんがイレギュラー門の原因探る代わりに眼鏡の彼の処分を迅さんに委ねさせる、という話になったようだ。
「というわけだから、名前もよろしく」
「今の会話の流れで何処をどうよろしくされるんですか?」
本当に掴めない。この人のこういうところは昔からだ。迅さんの後に着くように会議室をでようとした時、三輪が眼鏡の彼を呼び止めて話をしていた。
「秀次が心配か?」
会議室をでてすぐの所で迅さんの言葉にピタリと動きを止めた。心配。この感情は果たして心配という言葉で表していいのだろうか。答えが出ないまま眼鏡くんが迅さんの元へ戻ってきた。三輪と眼鏡くんが何を話していたかは知らないが、眼鏡くんに変わった様子はない。
一度だけ会議室の方を振り返る。
あの時の三輪の眼は疑いの眼だ。三輪は多分何かを知っている。それを確認するために眼鏡くんと話をしたのだろう。そしてそれはおそらく、私が可能性として見出してるものと同じだと思う。
「心配、か……違うなこれは、」
同族嫌悪に似た感情
(わかりすぎるくらい、アイツの気持ちがよくわかる)
03 脆くて危険な存在
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