【スクルドの時計は動かない】





入院生活も終わり無事退院した。怪我の治りも良好、心配していた瞳の色は退院する時には元に戻っていた。退院したからといってすぐに活動が許される程甘くはなく結局本部に顔を出したのは退院後の翌日だった。

ランク戦ブースに顔を出したら見知った顔に大丈夫か?心配したぞ、と言った声を掛けられそれら全てを笑って返す。心配されるのは、慣れてない。

「お、ナマエ先輩」
「空閑。なに?ランク戦?」
「そう。B級まで後もう少しなんだよね」
「あれ?空閑って確か特級戦功じゃなかった?」
「おれとオサムのポイントは全部チカにあげたんだ。だからおれは自力でB級あがらないといけない」

特例措置、確かそんな事支部長が言ってた気がする。

「早くしないとB級ランク戦とやらに間に合わなくなってしまう」
「もうすぐじゃん。くそ…私のポイント譲れるなら譲りたいくらいなのに…まぁでも余裕で間に合うか」
「ご心配なく。B級に上がったらナマエ先輩からもポイントもらうから」
「小南に勝てないくせに生意気な奴め。じゃあB級上がったらランク戦しようか、約束」
「おお。ナマエ先輩はなかなかランク戦してくれないってミドリカワが言ってたからちょっと意外だ」
「あの餓鬼…」

A級三馬鹿はしつこいから嫌なんだ。とは言えない。実際しつこいのは太刀川さんや蒼也さんも変わらないし。ランク戦に戻ると一礼してきた空閑を見送って、堪えた怒りを誰にぶつけてやろうかと私もランク戦ブースへと足を踏み入れた。

ランク戦前という事もあってか、何時もより人が多い気がした。気がしただけ。所構わずとりあえず片っ端から蹴散らしたからよくわかんない。指導を仰がれる事もあったけど、基本的には退院後のリハビリがてら溜まった鬱憤を晴らしていただけ。ていうか私まともに指導とか出来ないと思う。習うより慣れろ派だ。つまり小南の事言えない。一通り蹴散らしたから帰ろうと思ったのにA級馬鹿三人に捕まってブースへと逆戻り。ムカついたので出水と米屋はもちろんだけど、緑川も容赦なく斬り伏せてやった。

「あーあボロ負け。一本も取れなかったー……」
「ほんと緑川には容赦ねぇよな」
「おい名前もっかいオレと戦ろうぜ!」
「ざけんなもう帰るお腹すいた」
「確かに。じゃあ飯行こーぜ」
「お。出水ナイスだなゴチでーす」
「特級戦功貰った奴が何言ってんだよふざけんな」
「名前先輩ゴチでーす」

こいつら怪我人を何だと思ってるんだ。という問いも馬鹿には通じないだろう。此処でのやり取りは無駄だと判断したんで四人でファミレスへと場所を移した。各々が好きな物を注文して話したい事を話す。なんだかんだこの馬鹿達と一緒に居るのは嫌いではない。

「そういえばB級ランク戦もうすぐだな」
「ああ。空閑から聞いた」
「遊真先輩昇格間に合ったって言ってたよ」

間に合ったのか。ということは、ランク戦挑まれる日もそう遠くない。それはそれで楽しみだなと人知れず頬が緩む。

「良いなぁ私も久々にチームランク戦したくなってきた」
「オレ亜里阿隊が揃ってるの見たことないよ」
「こいつの所は色々特殊だからなぁ」

特殊。米屋の表現が珍しく的を得てると思った。うちの隊は確かに特殊だ。だけど使ってるトリガーは凛香ちゃん以外一応本部承認の皆と同じ物だからランク戦への参加が認めてられていないわけではない。ただ、あんまり目立ちたくっていう全員の何となく共通の意志があるだけ。後、単純に本部に滅多に来ない。

「じゃあ今度混成チーム戦やろうぜ」
「あ、面白そう。やろうやろう」

折角だから空閑とかも誘おう。後はそうだな。師匠もぶった斬って、

「ねぇ荒船隊のランク戦スケジュール知ってる?」
「お前どんだけ荒船さん好きなんだよ」
「弟子として師匠の勇姿は目に焼き付けておこうかと」
「とりあえず初戦の日一日中本部に居りゃいいんじゃね?」
「暇なのバレると解説頼まれちゃうかもだよ」
「うわ…武富か…」
「名前って解説やったことあんの?」
「ない。毎回武富から逃げてる」

逆にこいつらやったことあるのかよっていう疑問が浮かんだけど、腐ってもこいつらはA級メンバーだ。忍田さんからもちゃんと協力しなさいと言われたし。

「解説かぁ…まぁ声かけられたら考えるか…」
「コラ。餓鬼じゃねぇんだからストロー噛むな」
「うるさいいずみだまれ」



そういうのガラじゃない
(ストローを咥えながらそんなもしもを考えていた)


32 気を抜ける間柄

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