諏訪隊ばっかり贔屓してたら面白くない。ならば次に向かう所は自ずと決まってくる。狙撃手の訓練室に足を運べばお目当ての人よりも先に声をかけてきたのは可愛い後輩だった。
「名前せんぱーい!どうしたんですか?此処に来るなんて珍しい」
「人捜し。荒船隊は…居ないのか」
「荒船隊なら防衛任務中ですよ。もうすぐ帰ってくると…ていうか名前先輩!荒船さんとデートしたってホントですか!?」
「は?」
思い出したかのように声を大にした佐鳥に対して頭の上に浮かぶ複数のハテナマーク。荒船先輩とデート?はて何の事やらと頭を捻らせて浮かび上がった一つの事実に、ああ、と声を漏らせば「デートしたんですか!」と佐鳥に肩を掴まれた。痛い。
「デート、うん、そうね。したかも。ていうか何で知ってんの?」
「奈良坂先輩から聞いたんですよ」
「…あのお喋りめ…」
「名前先輩、もしかして、荒船さんと」
次に佐鳥の言わんとしてることが視えて言い終わる前に溜息がこぼれた。
「師匠の名誉の為に言っておくけど、デートっていうか私の退院祝いで付き合って貰っただけだから」
駅近くの喫茶店と影浦先輩家にお好み焼き食べに行っただけ。確かに参考書買いに本屋行ったりもしたけど。それを果たしてデートと言って良いのか。荒船先輩にはデートですねってからかったりはしたけど。
「奈良坂には喫茶店の礼があったから冗談ついでに話しただけ。お食事とお買い物したのをデートと呼ぶならまぁ仕方ないが。変な話が広まると師匠に迷惑かかるし私がぶった斬られるから勘弁して」
「それだけですか、ホントに?」
「しつこいよ佐鳥。そんなにデートしたいならするかい?」
「へ?」
「だからデート」
思考が停止したように目をパチクリさせてる。大丈夫か心配になって顔の前で手を振ってやったらその手を掴まれた。
「あ、生き返った」
「先輩!デートしましょう!」
目をキラキラと輝かせて手を掴まれたままとんでもない事言ってるなこの子は。冷静になる頭の中でふと、忍田さんの言葉が過ぎった。
「あ、でも待って。折角だし模擬戦で私に勝ったらデートしよう」
尾鰭や背鰭がついた変な話が忍田さんの耳に入った時の事を考えたら「私より強くなくてはな」とか冗談か本気かわからない発言の恐怖を感じた。私より強い奴もなかなか居ないだろうけど。折角だ、これを口実に佐鳥と遊ぼう。
「オレ勝ち目なくないですか?」
「だって純粋な狙撃勝負じゃ私勝ち目ないし。MAP選択権は佐鳥にあげるし私に一発食らわせたら佐鳥の勝ちで良いよ」
んー…と頭を抱える佐鳥。ていうかそんなに考え込むとかどんだけデートしたいんだよこの子は。
「なーに楽しそうな話してんだ?俺も混ぜろよ」
「当真先輩!」
佐鳥に気を取られてて後ろに居る気配に気付くのが遅れた。後ろから頭をガシッと掴まれて髪をぐしゃぐしゃにされる。最近良くやられるんだよなこれ。
「名前のこと撃ち抜いたらデートしてくれんだろ?」
「当真先輩もデートしたいんですか?やだ私モテモテ」
「そうだな。名前とデートとかアイツが黙ってないだろうし楽しいだろうな」
「アイツ?」
「こっちの話」
ニヤニヤしてる当真先輩に不信感を抱く。が、別にこの人がニヤニヤしてるのは割と何時もだ。佐鳥は佐鳥で邪魔しないで下さいとかギャアギャア騒いでる。何だか話が拗れてきた気がしなくもない。
「何やってんだお前ら」
「師匠!防衛任務お疲れ様です。荒船隊の事待ってたんですよ!」
「あーあ荒船帰って来ちまったじゃねーか」
「何があった?」
当真先輩はつまんねぇーのと言いながらも相変わらずニヤニヤしてる。そんな当真先輩に荒船先輩は眉間の皺を濃くする。あ、これ私怒られるパターンのやつかも。隠しても仕方ないので今までの流れを全て洗いざらい話した。佐鳥は顔面蒼白だし当真先輩はニヤニヤが増して荒船先輩は怒りのボルテージが上がった気がする。後、穂刈先輩と半崎は我関せずだ。
「お前は馬鹿なのか」
「だってこのまま放っておいたら師匠とデートしたっていう話だけが広まるだろうし。そうなったら師匠怒るじゃないですか。じゃあ佐鳥ともご飯行こうかっていう我ながら名案だったのに」
「その発想も馬鹿だし何で当真がいる」
当真先輩は「お前には関係ないだろ」とニヤニヤした顔で荒船先輩をひたすらにからかってる。これ以上は時間の無駄だと判断し近くに居た穂刈先輩と半崎に助け、というか、本来の目的を伝える事にした。
「次のランク戦の対策、お手伝いしに来たんですけど。玉狛のデータ少なくて困ってるんじゃないかなって思って」
「助かるな、それは」
「師匠はどうしましょうか?」
「あの中に入るのダルいっすね」
「じゃあ放っておこう。作戦室に加賀美先輩居ます?折角なら一緒に見た方がいいかな」
「荒船。行ってるぞ、先に」
「佐鳥またね。ちゃんと考えときなさいよー」
穂刈先輩の声は多分届いてない。半崎に背中を押されるようにして私達は訓練室を後にした。
喧嘩する程仲が良い
(結局師匠は何であんなに怒っていたのだろうか)
34 敵の敵はやっぱり敵
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