あの後しばらくして荒船先輩は作戦室に戻ってきて私は何故か睨まれた。予定通り荒船隊に三雲と空閑とバトッた時のデータを横流し。それを見た荒船隊、主に荒船先輩の感想は「お前との戦いじゃなんの参考にもなんねぇよ」と厳しいお言葉。溜息つかれた挙げ句、代わりに付き合えと個人戦ブースまで引っ張り込まれて好き放題ぶった斬られた。ぶった斬ってやった分もあるけど、これを理不尽と言わずなんて言うんだろうか教えて欲しい。
「なんで荒船さん達に情報流しちゃうかなー」
「その方が面白いデショ。だから玉狛にもこうやって協力しようとしてるじゃない」
玉狛に向かう道中、丁度出くわした宇佐美に諏訪隊、荒船隊との話をしたら呆れられた。ごめんね宇佐美。私は玉狛贔屓ではないんだ。こんな面白い三つ巴滅多に見れないから全力で戦り合って欲しいだけだから玉狛第二の作戦会議にも参加するんだ。宇佐美と一緒に三雲達の見解を聞き、宇佐美がそれに対してフォローアップしていく。両チームともまぁまぁ分析してるようで良い事だ。宇佐美がMAP選択の説明をしていてそこでようやく気付いた。
「次の試合は玉狛第二が一番下だから戦いやすいステージを選べるよ」
「なるほどそりゃ有利だ」
「地形を使って狙撃を封じるのか……!」
まぁ狙撃封じても師匠はぶった斬りに来るんだろうなぁ。あれ、そういえば弧月抜刀してる荒船先輩のデータってあるのかな。ランク戦なんて全然興味なかったからなぁ。
「名前も協力してくれるってさ。名前は荒船さんの弟子だから色々教えてくれるかもよー?」
「そうなんですか!?」
「え、ああ…そうね。師匠って言ってもちょっと特殊なんだけど戦い方はよーく知ってるよ。私の端末繋げば荒船隊も諏訪隊も仮想戦闘出来るし」
宇佐美が試作中だと言っていたデータも私の端末繋げばより正確な戦闘値で仮想戦闘が出来る。やる気満々の後輩達を見ていてランク戦当日が更に楽しみになってきた。
□■□
ランク戦前日。個人戦ブースに空閑と緑川が居た。仲良いなって思いながら眺めてたらあっという間に戦闘終了してブースから出てきたと思ったらこれまたあっという間に二人に捕まった。何故だ。
「名前先輩!今丁度名前先輩の話してたとこなんだよね!」
「人の話勝手にシナイデ」
「今ミドリカワにグラスホッパー教えてもらったんだけど、ミドリカワがナマエ先輩の方が使い方上手いって言ってた」
「オレは名前先輩から学んだからね」
「は?私緑川に何も教えてないけど。勝手にログ見て覚えただけデショ」
あれはまだ緑川がC級だった頃。あの時からクソ生意気だった緑川はあろう事か私を同じ訓練生だと勘違いしランク戦しようと絡んできた。正隊員、しかもA級とわかるや否や、それはエスカレートしてB級に昇格したらしたでまた絡んでくる。ほんとしつこくてあの当時何度ボコボコにしたかわからないし草壁隊に何度文句を言いにいったかわからない。
「迅さんと名前先輩はオレの憧れなのに!尊敬してるんだから」
「はいはい。尊敬してる相手には敬語くらい使えっての」
「ナマエ先輩この後玉狛来るんだよね?」
確かにこないだ行った時宇佐美とそんな約束をした気がする。と同時に空閑の言わんとしてる事が視えた。好奇心でいっぱいといったところか。この子のこういう所、嫌いではない。
「グラスホッパー見せろって?良いよ別に」
「ええズルイ!何で遊真先輩には優しいのにオレにはそんな厳しいの!?」
「日頃の行い?」
「酷い!!」
しょんぼりとうなだれる緑川に垂れ下がった耳と尻尾が見えた気がした。流石にちょっと言い過ぎたか。仕方ない。ふぅ、とわざとらしく息を吐き出して緑川の頭をわしゃわしゃと掻いてやれば何時も通りギャアギャア五月蝿い声をあげる。
「仕方ないから今度ちゃんと勝負してやるよ。だから今日は勘弁な」
「ほんとに!?約束だからね!!」
「わかったわかった。んじゃあ空閑行こうか」
「おお。ミドリカワまたな」
緑川と別れ、空閑を引き連れ玉狛へと向かった。良いとこのどら焼きと宇佐美が煎れてくれたお茶を美味しく頂きながら此処までの事情を諸々説明することに。
「とりあえず宇佐美、空閑のトリガーにグラスホッパーセットしてあげてよ。グラスホッパーのチップ持ってなかった」
「オッケー。グラスホッパーかぁ名前が教えたの?」
「いや、教わったのはミドリカワ。グラスホッパーならナマエ先輩が一番使い慣れてるからって言われて」
「そういうこと。本部で教えてきても良かったんだけど、折角の秘密兵器見せちゃったら明日のランク戦つまんないデショ」
「ナマエ先輩はおれたちの事手伝ったり他の隊手伝ったり、いったいどっちの味方なんだ?」
不思議そうに空閑が訪ねてくる。
「どっちもなにも、私は誰の味方でもないよ。あえて言うなら、セイギの味方かな」
今回たまたま諏訪隊と荒船隊と玉狛第二があたるから。諏訪隊も荒船隊も比較的仲良い方だから、そんな顔馴染みのメンバーが全力でハイレベルな戦いをしてくれたらそれ以上に楽しいことなんてない。ただそれだけ。そう話せば空閑は更に首を傾げた。
「ナマエ先輩の考えはよくわからん。ウソなのかホントなのかもわからない」
「サイドエフェクト無効化してるからね。まぁでもそれは嘘じゃないよ。結果的に皆が強くなればそれでいーじゃんってこと」
あえて空閑に対するサイドエフェクト無効化を一度解いて、視線を合わせる。空閑は納得したようなしてないような顔をした。
「ウソじゃないのはわかったけど、今度はナマエ先輩のサイドエフェクト無効ってのが不思議だ。それは自分でやってるのか?」
「そうだよ。強化五感とかは無効にしづらいんだけど、逆に空閑みたいな奴は相殺しやすい」
「全部じゃないのか。じゃあ一体なんのために?」
なんのために?そんなの──
未来が視えたらつまらないデショ
(脳裏に浮かぶのは悲しげな顔を浮かべたヒーローの姿)
35 セイギの味方に憧れる
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