風間隊二人と別れ、個人戦ブースに向かう。空閑と緑川は絶賛バトル中で待ってるのも暇だから米屋と五本だけ勝負してボコボコにしてやり、それでも時間があるからと適当にランク戦を繰り返す。飽きてブースから出てきた頃、丁度緑川と空閑も三十本勝負を終えたようで。結果は空閑の圧勝。それでも七対三まで持って行った辺り、ちょっとは成長したのだろう。
「おっ?荒船さん個人ランク戦すか?」
米屋の声に思わず身体がびくりと反応してします。振り返った先に居たのは確かに荒船先輩で。この人もランク戦終わった後なのに元気だなぁと感心反面、今会うのは複雑だなと思う気持ち反面。
「どしたの?荒船さん遊真先輩に負けて熱くなっちゃった?」
「緑川てめー俺が負けるって予想してたらしいな」
「オレのサイドエフェクトがそう言っていたのだ」
緑川をガッチリホールドしてる荒船先輩。今日はやけにこの光景を見るな。
「あ、あの…師匠、お疲れさ…痛っ!!!!!」
「名前てめーもだ。弟子なら師匠の応援してやがれ」
グーとか。年下の女子にグーとか。普段師匠っていうと怒るくせに理不尽だ。
「ていうか個人的には応援してましたし!戦況見て、嗚呼これは空閑が勝つなって思っただけだし!私は荒船先輩に勝って欲しかったし」
言って、空気が止まった。
あれ、私何かマズいこと言った?言った……気がする。米屋と緑川と空閑はニヤニヤしてるし、古寺と三雲は硬直してるし荒船先輩は顔赤いし。気付いた時には何だか自分まで恥ずかしくなって顔に熱が集まっていくのがわかる。
「ほうほう。すまんなぁナマエ先輩」
「名前先輩だいたーん」
「うっせ餓鬼共!! 師匠が負けるとことか見たくないでしょってことだよ米屋笑ってんじゃねぇぇぇええ!!!全員ブース入れぶっ殺す!!」
言い切ってぜぇはぁしてたら周りがざわざわし始めた。待って私のせいか?ざわざわの中心はどうやら私ではないようで、其方に視線を向ければ。
「村上先輩?」
「あの人は……?」
「鈴鳴第一の村上先輩。攻撃手ランク第四位──荒船さんが攻撃手をやめる理由になった人だ」
古寺の言葉に息が詰まる。握った拳がやけに痛い。
違う。違うんだよ、そうじゃない。荒船先輩は──
当の本人は村上先輩と話始めてるし。村上先輩は村上先輩で玉狛の二人に呑気に自己紹介始めてるし。緑川に対策付き合ってくれとか言い出すし。空閑は空閑で、
「じゃあおれと戦ろうよ」
この子の好戦的意欲こういう時ほんと馬鹿なのって思う。全員「は?」って顔してる。そりゃそうだ、だって村上先輩は。
「やめとけ空閑次の試合が不利になるぞ」
「うーん。口出すのも出さねーのもフェアじゃねー感じがするなーけどまぁ荒船さんの言うとおりだ。勝負は試合までとっとけよ」
「空閑。私は止めないけど玉狛第二の事考えたらやらない方が利口だよ」
やりたいなら止める権限はない。だけど遠征部隊に選ばれるという玉狛第二の目的を果たしたいのであれば、今此処で村上先輩と戦り合うのは利口ではない。そうは言っても空閑と村上先輩の試合は避けられないだろう。だって、視えてしまったから。
村上先輩が出した二つの条件の元、空閑と村上先輩の試合が始まった。前半は空閑が押してる、ように見える。初見で空閑の動きを捉えるのは中々骨が折れるし。そろそ五本目が終わる頃、忘れかけていたモヤモヤが蘇ってきて気がついたら画面に集中してる荒船先輩の袖をクイッと引っ張ってた。
「なんだよ」
「あの…十五分休憩の間に一本だけ手合わせお願いします」
何でそんな事言ったか。答えは簡単だ。
小さな小さな嫉妬心
(ただ自分と向き合って欲しいだけ)
36-V 切っ先を向ける先
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