別役が復帰したらしい。御丁寧に連絡をくれた村上先輩と、別役からの「おれのせいですみませんでした!良かったらうちに遊びに来て下さい今先輩にお菓子用意してもらいます!」ってもうよくわからないお誘いを受けた所だ。これはフラグだろうかと、このやり取りを間近で聞いていた笹森と半崎はそれぞれ苦笑いとダルいっすわの一言だったので次本部で逢ったら憶えとけ。 一応別役の勝手な判断で鈴鳴にお邪魔するわけにもいかないと大人な判断をした私は村上先輩伝いで来馬先輩へと確認を取り、放課後鈴鳴に遊びに行くことになった。 一緒に行こうと誘ってくれた村上先輩には悪いんだけど支部に用があったので後から向かいますと告げて校門前で一度別れた。 「流石に手ぶらでお邪魔するわけにはいかないデショ」 誰に言うでもなく吐き出した言葉は空へと消える。 □■□ 支部に立ち寄りその足で鈴鳴へ。村上先輩が出迎えてくれた。 「遅くなってすみません。これお土産です」 「これは?」 「アップルパイです。昨日瀬尾ちゃんにせがまれて焼いた余りなんですけど……良かったら食べて下さい」 「こっちが呼んだのにすまないな。有り難う」 ソファのある部屋まで案内され、来馬先輩に軽く御挨拶。私から受け取った紙袋を今先輩に渡しに行く村上先輩はどことなく嬉しそうに見えたから喜んで貰えたなら良かった、と胸をなで下ろす。その後を追って別役がわいわい騒ぎながら今先輩達の居るキッチンの方へ向かっていったからこれはフラグかなって思ったら案の定今先輩の怒鳴り声が響いてきて来馬先輩と目を見合わせて一緒になって笑った。 「鈴鳴は何時も楽しそうですね」 「ははは、どちらかというと落ち着きがないって感じかな?」 「私は好きですよ、鈴鳴のこーいう空気」 勿論亜里阿のことだって私は好きだし皆でいれば賑やかになることだってあるけれど、うちはこんなに癒される空気はしていない。うちの隊は一言でいえば血生臭い。キッチンの方から甘い香りがしてきた。どうやら持ってきたアップルパイを温め直してくれたらしく、それを紅茶と一緒に運んできた今先輩は凄くニコニコしてて可愛らしい。 「名前ちゃんわざわざごめんね、太一が無理矢理呼んだのにお土産まで」 「いえ。可愛い後輩に振り回されるのは嫌いじゃ無いので」 「苗字先輩これ手作りですか!滅茶苦茶美味しいです!」 「コラ太一!口に入れたまま喋らないの!」 それは行儀が悪いよ、と。私から注意されると思ってなかったのか、すみませんと口を押さえて身を正す素振りを見せる。こういう素直な所が可愛いのだ。 「苗字先輩強いし勉強出来るしその上料理も上手いんだもんなーそりゃあモテますよねー鋼さんもうかうかしてられないですよ」 「何でそこで村上先輩が出てくるのさ」 「太一!アンタちょっと黙りなさい!」 「ははは、まぁ太一の言うとおりだな」 今先輩が怒ると別役はやべーって顔して謝るし、それを見ていた村上先輩は楽しそうに、来馬先輩は微笑ましそうに笑うから私も可笑しくて笑う。ふと、村上先輩と目が合って何時もの優しい顔を向けてくれるから、急に心臓がドキリとした。 その顔の意味を私は知っている (それじゃあまるで私のこと好き、みたいじゃないか) 2 臍で茶が沸く話 |