私が普段から米屋出水の馬鹿二人と一緒に居ると思ってる人も多いだろうが、意外とそうでもなかったりする。今日は熊谷ちゃんにお昼誘われてE組の教室にお邪魔している。小佐野と仁礼も一緒だ。皆任務があるからそんなに頻繁ではないけどボーダー女子とこうしてお昼を一緒に過ごす事も少なくはない。
そして女子というのは集まると話題に尽きないのだ。さっきまで話してた話はすぐに違う話題へと代わり、どんどん話は変化していく。女子って凄い。今は女子が大好きな色恋の話になってる。仁礼が「どっかに良い男居ないかな」とか言ってるのを片耳にだし巻き玉子を一口。うん、今日の玉子も良い味だ。

「皆好きな人とか居ないのー?」
「熊谷ちゃんって村上先輩の事好きなんじゃないの?」
「はぁぁ!?」

熊谷ちゃんは大きな声出すし仁礼と小佐野は興味津々だ。あれ、これは私間違えたやつか。

「な、なんでそうなるのよ!」
「いや、なんとなく。ランク戦観て?」
「そんなわけないでしょ!……確かに村上先輩は格好良いとは思うけど…」

ほんのり顔を赤くして尻窄みになる言葉。これは間違えたやつだな、熊谷ちゃん普通に照れてる。どうやら勘違いだったようなのでごめんごめんとお詫びに熊谷ちゃんのお弁当箱にだし巻き玉子を一つお裾分けした。

「そういう名前こそ、こないだ村上先輩と一緒にお昼食べてたよねー」
「え」
「アンタ、自分こそどーなのよー?」
「名前!その話詳しく聞かせろ」

小佐野がサラッと落とした爆弾に熊谷ちゃんと仁礼が勢い良く食い付いた。うっかり落としそうになったミートボールを口の中へ放り込んでさてどうしたものかと考える。考えた所で、それは事実なんだし別に隠す必要もないことだからと。ゴクリと飲み込んでからその日あった事を全部三人に話した。身勝手な男に対する怒りよりも、三人は村上先輩との関係の方が興味あるようだ。

「結局ちゃんと時間内にお弁当食べ終わって教室戻ったよ。サボったら師匠とか忍田さんに怒られるし」
「それでそれでー?そのあとはー?」
「その後?普通に授業全部終わらせて本部行って諏訪隊のとこ行ってお話した後笹森借りてったじゃん?あの日だよ」

小佐野も居たじゃん、と言えばつまんなーいと気の抜けた返事。食べ終わったお弁当を片付けて時計を見ればそろそろお昼休みが終わる時間だ。

「結局名前は村上先輩の事好きなの?」
「熊谷ちゃんそれ仕返しデショ」

ジト目で睨んでも楽しそうに笑う。ほんと女子はこの手の話題が好きだよな。その点でいえば米屋出水の馬鹿二人は気が楽だ。これは答えないと終わらないやつだろう。熊谷ちゃんが尋ねる質問の意図もわからなくはない。荷物をまとめ終え席を立つとガタリと大きな音をした。

「その質問の答えは″l don't know.″かな」

ニヤリと笑って一足先に退散。
熊谷ちゃんが何か言ってた気がするけど此処は逃げるが勝ちというものだ。

でも、その質問
ちゃんと答えてるよ?

だって、


──私はその答えを、知らない。


次の時間は教室移動だった事をすっかり忘れていた私は、急いで教室に戻って授業で使う一式を持って置いてくぞと騒ぐ馬鹿二人の後を追い掛けた。

走らなくても間に合いそうだし廊下を走ると怒られるから、少し早足で歩いて行く。三年生の教室の前を通るのは未だにあんまり良い気はしないけど、此処を通っていくしか他に道はない。もうすぐチャイムが鳴る。お目当ての教室もすぐそこ。

ふと目にしたC組の教室内。
村上先輩と今先輩が楽しそうに話してる姿を目にして、胸の奥がざわつくような気がした。


私はその答えを知らない
(″like″と″love″の違いなんて私にはワカラナイ)


4 千利休もお茶を濁す
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