胸のざわつきはあれから全然晴れなくて、気晴らしに片っ端からランク戦をしていても全然収まらなくて。そこに現れたのは我が偉大なる師匠だった。 「師匠ー!助けてくださーい!」 「あーわかった!わかったから離れろ!」 縋り付く可愛い弟子を容赦なく引き剥がす師匠は鬼の化身か何かか。でも黙ってジュース買ってくれるし座れって話を聞く姿勢を取ってくれるからやっぱり師匠は優しい。 「で、どうした」 「師匠は好きな人とかいますか?」 「は?」 一瞬で呆れられた。 「コイツ何言ってんの?」って哀れむ眼を向けられた。でも今助けを求められるのは師匠しかいないから頑張って話を進める。 「今日村上先輩の事好きなの?って聞かれたんですけど、その答えがよくわかんなくて。よく、″like″と″love″の違いなんて言うけど、私にはその違いがわからないです」 何が″like″で何が″love″なのか。 そもそもLとRの発音の違いすらわからない日本人が偉そうな事言うなよと私は言いたいけど今はそんなのどうでもいい。 だって、みんな同じ【好き】じゃないか。 「お前、鋼の事好きか?」 「好きですよ。村上先輩はよく私のこと好きだって言ってくれるから私も好きですよって言ってます。でも荒船先輩も好きですよ?」 「俺と鋼の″好き″は違うだろ?」 「好きの、違い……」 違いなんかあるだろうか。 頭をフル回転させてみるがその答えは見付からない。見かねた荒船先輩は盛大に溜息を吐き出した。やばい本気で呆れられてるぞこれ。 「わかった質問を変えよう。俺と加賀美が一緒に、二人っきりで歩いてたらどう思う?」 「師匠と加賀美先輩?え、仲睦まじいなって思います。あわよくば師匠をからかいます」 「一言余計だ」 「痛っ!」 グーで殴られた。だってそうじゃないか。同じ隊である師匠と加賀美先輩が一緒に歩いてたら何て仲の良い隊なんだって思うし、もしそういう関係なら祝福するし全力で師匠をからかうに決まってる。勿論加賀美先輩には一切迷惑はかけない。 「じゃあもし、鋼と今が同じようにしてたらどう思う?」 「そんなの、」 そこで言葉が詰まった。あれ、なんで私言葉詰まったんだ。だって同じ隊で学校も一緒の二人が一緒に居たって可笑しくないはずなのに。村上先輩はからかえないから素直に祝福する、はず。 思い返されるのは今日見た、あの光景。 「どうした?」 「……なんでだろう…モヤモヤします」 胸の奥がザワザワする。今まで普通に見てきた光景のはずなのに、黒く塗り潰してしまいたいような。あの優しい声と柔らかい表情を他の人にも向けてるのかって思うと、胸が苦しくなる。 「それが答えだろ」 「いや、全然わかんないっす」 「何でそこまで来てわかんねーんだよ」 「師匠理論派でしょ!もっとわかるように説明して下さい!」 「うるせぇな!それが″love″の方の好きって事だろうが!大体普通の奴はどうでも良い奴に好きなんて言わねえよばーか!」 言わせんな!ともう一発グーを頂いた。だから痛いって。え、でも、それじゃあ。 「村上先輩の好きは?え?あれはどういう意味?」 「それは本人に聞け」 師匠が視線をやった先に居たのは、村上先輩。罰悪そうな顔で此方に向かってくる。村上先輩が一歩一歩近付いてくる度、私の心臓は大きく音を立てた。 鳴り止まない心音 (自覚してしまったから止められそうにない) 5 濃いめの抹茶で目を覚ます |