朝っぱらアラームより先に鳴り響く着信音に苛立ちを覚えたのは言うまでもない。相手が瀬尾ちゃんじゃなかったらいろんな意味でぶった斬ってるとこだったけど、内容が「凍矢を迎えに来い」というものだったので変わりに凍矢をぶった斬る事が決定した。
「仕方ねぇだろ、俺一人じゃ動けねぇんだし」
「トリオン体なら動けるだろ馬鹿」
「どうせ名前も本部行くんだからいいじゃねーか。たまには同行させろよ隊長」
ニヤリと笑う凍矢に対して私は何ともいえない表情をしてるだろう。これでは私が普段隊員を連れ歩いてないみたいな言い方じゃないか。実際殆ど連れ歩いてはいないんだが。釈然としないが連れて行かない理由もない。盛大に溜息が零れた。とりあえず後で凍矢をぶった斬ろう。
あの日、迅さんとの出来事の後、私は亜里阿のメンバーを集め、改めて自分の考えを話した。戦神の鎖は恐らく外せない。だから、自分自身の役目を果たす為に戦うと。
彼らは思い思いに言葉を綴った。
一人はあらゆる物から護る楯になると
一人は全ての障害を振り払う戈になると
一人は火粉すら被らぬよう傘になると
一人は還るべき家になると
私の仲間は、私よりもずっと強い。
□■□
ランク戦を観に来た隊員たちで賑わう室内。我々の姿を発見した隊員たちの群れが一瞬ざわついたのは気にしないでおこう。
「隊長目立ってるじゃん」って呑気に宣う凍矢を睨み付ける。お前のせいだよお前の。席に座り、辺りを見渡すと解説席にいたその人と目が合って思わずドキリとした。
「なんだ……今日の解説は迅なのか」
「そうみたいだね」
「隣太刀川さんだろ。大丈夫か今日」
A級1位の隊長と元S級に対してなんてことを。と、思う反面、確かに大丈夫かよ、と実況担当の三上に哀れみの目を向けざるおえない。
ステージが決定しスクリーンに映し出される。河川敷A。今回のステージ選択権は那須隊だ。確かに川を挟んで橋を落とせば中距離戦メインの那須隊に有利だが。解説の二人が言ってるように川は渡ろうと思えば渡れる。
「各隊員転送完了!MAP河川敷A、天候暴風雨!」
スクリーンに映し出された光景は嵐吹き荒れる河川敷。仕掛けた側の那須隊は動きも早く、真っ直ぐ橋の方へ向かっている。転送位置を見る限り、これはなかなかハードな試合になりそうだ。
「なぁ名前。お前だったらどう動く?」
「どうって…立場に寄る」
「うちの隊なら」
凍矢は普段亜里阿から滅多に出ないからランク戦観戦どころか他者の試合もあまり観ない。戦術的な面で学ぶこともあるのか。だけど、
「うちの隊なら、は愚問デショ。レイニーキラーがいるうちにとって暴風雨なんてラッキーステージでしかないから」
ああ…、と凍矢は自分で聞いたくせにげんなりする。雨ステージの凛香ちゃんは頼りになる分、ちょっと面倒くさい。それは我が隊の共通認識だ。
「普通の隊ならこの雨と風じゃまず長距離狙撃はない。橋を壊されたら隊の分断は免れないけど、うちの隊はそういうのいろいろ関係ないじゃん。だから愚問」
「じゃあ玉狛、名前が三雲の立場だったら」
「玉狛だったら」
三雲の立場だったら自分はどうするか。考えるまでもない。
「雨取使って迷わず橋を落とすデショ」
爆音響くスクリーン上では今まさに、橋が破壊されたところだった。
波乱の幕開け
(お前らやっぱ似てるなって言葉は無視した)
41-T 嵐の前のなんとやら
|