──緊急脱出したのは……鈴鳴第一村上隊員!勝敗の行方は雨取隊員と……各部隊の隊長に託された!
三上の実況が響く。
私からしたら何時だって勝敗の行方は隊長に託されてると思ってる。それを言ったらきっと隣に居る奴から「そんなに信用ねぇのかよ」って言われそうだ。そうじゃなくて、やられるとは思ってないけどなんかあったら私がどうにかするからってことで。結局最後の最後、私が敵を倒せば良いじゃんって思ってるから。
隊員を生かすも殺すも隊長の役目なんだから、結局勝敗の行方は何時だって隊長に託されてるデショ。
「那須隊長撃ち合いから一転機動戦に切り替えた!」
東岸の射撃戦も那須ちゃんが機動戦に切り替えた事で終盤に差し掛かっている。これは来馬先輩狙いか。那須ちゃんと来馬先輩が下に降りたことで三雲の射線が通りにくくなったし雨取の位置も割れてる。
「このままいったら那須隊の勝ちだね」
「このままって事は打開策はあるってことだろ」
「玉狛が他より優れてる点ってなんだかわかる?それがわかれば答えは簡単」
私の問いに凍矢は頭を傾げるが、すぐに、あ、と小さく声をあげる。
「砲撃。雨取が居れば地形条件を変えられる」
「正解。じゃあ今この状況で何処を破壊すれば玉駒に優位になるか」
「上流の防波堤!」
本日何度目かの爆音が響く。やはり三雲も同じ手に辿り着いたか。増水した川の水が住宅地へと流れ込んでいく。
「水攻めか…でもこれならもっと早い段階で…例えば那須隊二人が落ちた段階とか。鈴鳴の合流を許すとしても玉狛だって合流してた方が有利だったんじゃ」
「どうだろうなぁ。通常時の村上先輩を空閑が落とせるかってとこになってくるから。部隊の力量じゃ玉狛より鈴鳴のが上だし。まぁどっちが良かったかはわかんないよね」
はっきりいって空閑以外、戦力として数えられる力ではない。それは三雲もわかってる。だからこその三雲の立ち回り方。
那須ちゃんの変化炸裂弾が来馬先輩を襲う。来馬先輩の緊急脱出、死角からの追尾弾が那須ちゃんに命中。まさに置き土産。ダメージを受けた那須ちゃんに斬りかかる三雲。
「残念、それじゃあ那須ちゃんには勝てないや」
三雲を襲う弾丸の嵐。来馬先輩に放った変化炸裂弾の一部が戻ってくるように設定してあったんだろう。那須ちゃんからすれば三雲の動きなんて先読み出来る範疇に過ぎない。でも、
「玉狛の作戦勝ち、か」
「空閑隊員!?川を渡り切って来た……!?」
那須ちゃんの身体にヒビが入っていく。トリオン切れによる活動限界。那須ちゃんの身体は光の筋となって行った。
「最終スコア4対3対2玉狛第二の勝利です!」
「玉狛勝ったな」
「そうね」
きっとアイツはあんまり納得してないんだろうな、と。此処最近面倒を見てきた後輩の事を頭に浮かべてふぅと一息。
このまま三上先導のもと試合の振り返りに入っていく。太刀川さん真面目にやれるのかなって思ったら案の定三上に釘刺されてるし。
「名前としてはどうだったんだこの試合」
「どうもこうも太刀川さん達が言ってるのとまぁ大体一緒だよ」
──勝てる相手に負けたエースの村上が悪い。
太刀川さんの言葉はごもっともだし、それ故に重い。
「うちの隊って実質的なエースって立場ないじゃん?各々戦えるし。でもエースって看板が付くと、自分の勝敗がチームの勝敗左右する事が多いから重いよね」
「いや、うちのエースはお前だろ」
「私が前線立たなくても皆好き勝手戦うデショ」
「ランク戦した記憶が昔過ぎてわかんねー」
わざとらしく言い放つ。
確かに、亜里阿第一としてランク戦をした記憶は遙か昔、A級認定されるまでの数回程度。その頃は戦神の鎖の制御もままならなくてただ私が暴れ回って他の皆も暴れての戦略もへったくれもなかった。そしてなにより、今のメンバー全員揃ってランク戦したことは、多分ない。
「ランク戦したいね」
「……名前の口からそんな台詞が出るとは……現実世界でも暴風雨とかになるんじゃね?」
「よしとりあえず真っ先にお前をぶった斬る。覚悟しとけ」
異論は認めない。
試合の話がいつの間にか東岸の射撃戦の話にシフトしてる。隊長として勝ちの画を描く力、か。
「納得してねーな」
「那須ちゃんが早い段階で三雲を落としてたら多分那須隊が勝ってた。太刀川さんの言葉もわからなくないけど結果論だよねって話」
結局三雲の動きは最後まで読まれてたし、那須ちゃんがその気になればすぐ落とされてた。すぐ落とせるのに落とさず居たのも結局那須ちゃんの勝ちの画を描く力の部分になるんだけど。
「以上をもってB級ランク戦ROUND3昼の部を終了します。皆さんおつかれさまでした」
「じゃあ終わったし帰るか」
「馬鹿。折角連れて来たんだ、付き合いなさいよランク戦」
「…仰せのままに」
恭しく下げてきた頭を思いっきり引っぱたいてやる。痛ぇよってトリオン体だから痛いはずがない。さっさと行くよ、と凍矢を引っ張って外に出た。
昂ぶる熱を鎮める方法
(刃を交えるしかないんだと思う)
41-V 例えば豪雨だったとしても
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