凍矢をぶった斬り、蜂の巣にし、首を吹っ飛ばし、朝の鬱憤を全部解消した。相変わらず容赦ねぇなとたまたまその場に居合わせた出水をついでに巻き込んでこれもまたボッコボコにした。出水ざまぁ。
本部を出た時にはすっかり夜だった。凍矢を支部まで送り届けた後、その足で玉狛へと向かった。
「名前どうしたこんな時間に」
「レイジさん、こんばんは。三雲居る?」
出迎えてくれたのはレイジさんだった。夜も遅いし三雲が居なきゃ明日にでも出向こうかと思ったんだけど、どうやら居るようなのでそのまま上がらせて貰う。
ベランダに一人黄昏れるその背中に一歩一歩近付いていく。此方に気付かないその無防備な背中。嗚呼、何時だったか奈良坂や佐鳥相手にも同じような事したなぁと思いながらトンっと首筋に手刀を当てる。勿論軽く、触れる程度に。
「っ!苗字先輩!」
「随分へこたれてるじゃん。そんなに那須ちゃん仕留められなかったの悔しい?」
視なくたって、三雲が考えてる事なんて手に取るようにわかる。三雲は思い詰めた表情のままだ。
「あれだけ有利に事を進めて、鈴鳴も思惑通り動いてくれたのに結局自分の力じゃ1点も取れなくて悩んでますってか」
「……はい」
「実力差はそんな簡単に埋まらない」
バッサリと言ってやる。
当たり前だ。だからこそ皆努力するんだから。
「あそこで無理に点を取りに行く必要はなかったはずだ。お前じゃ那須には勝てない、それは撃ち合ってわかったはずだ。それでもお前は行った。確かに点を取りに行こうとする気概はいいけど、無駄死にじゃ意味がない」
私は″捨て身″が嫌いだ。
何かを犠牲にして勝ち得るものなんて、大嫌いだ。
三雲は黙ったままだ。
静寂の中、振動音が聞こえる。私のじゃない、三雲の携帯。その後すぐに私の端末も振動し始める。メッセージアプリを開けば御丁寧に瀬尾ちゃんから次のランク戦の対戦カードが送られてきていた。
「次は上位グループとだね」
「そうですね…」
「一つ言っておく」
盛大に溜息を吐き出して。
「努力の方向性は間違えるなよ。それじゃあ何時まで立っても上になんて行けないぞ」
せめて阿呆な事をしないよう忠告をしといいやろう。三雲の表情はわからないけど、どうか、どうか。
「なんだもう帰るのか」
「はい、お邪魔しました」
「もう夜も遅い。送っていく」
「大丈夫ですよ、今日は愛車があります」
そうか、と小さく息を吐く。心配してくれるのは嬉しいけどレイジさんはちょっと過保護だと思う。
「レイジさんといい蒼也さんといい、過保護過ぎませんか?」
「お前が危なかっしいことばっかするからだろう」
「否定は出来ないです」
思わず苦笑。
気を付けて帰れよ、レイジさんの声に軽く会釈をしてバイクのハンドルを握った。
空には晴れているはずなのになんだか心はモヤモヤと雲が掛かっているような、そんな気分だ。
危うささえも
(認めたくないけどアイツは私に似ている)
41-W もう一雨来そうな予感
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