彼、石田三成は同じゼミ仲間だ。最初は彼と接することに抵抗があったが、次第に彼の私への態度に違和感を覚え始めた。


――彼は、前世の記憶が欠落している


姿形は違えど、きっと彼【石田三成】の魂は私【徳川家康】を覚えているはず。それでも私を拒絶しないのは、彼に記憶がないからだろう。そのことが、せめてもの救いだった。

最初はぎこちなかった距離が、少しずつ近付いていった。


「苗字、お前を昔から知っているように感じる時がある」
「何言ってるの石田くん、気のせいだよ」
「そう、だな…気のせいか」

嫌に脈打つ心臓を必死で抑え込む。彼とはそれなりに親しい関係になった。親しくなったが故に、心苦
しくもなる。

彼には前世の記憶が無い

だから、気にしちゃいけない。
彼は私【徳川家康】の知る彼【石田三成】ではない。そう、心に言い聞かせて罪悪感から逃れようとしていた。

そして、少しずつ近くなる距離の中で私の心も少しずつ変化していった。


「苗字、次の課題はもう済んだのか?」
「うーん、もう少しかな」
「なら図書館に行かないか?手伝ってやる」
「ほんとに?有難う」

隣で僅かに微笑む彼に、ズキリと心が痛む。それを彼に悟られぬよう、私も微笑み返す。

近付き過ぎた彼との関係に、私の心にある“感情”を植え付けた。


知ってしまったその“感情”

認めてはいけないその“感情”



これが“恋”だと気付くのにそう時間はいらなかった。


隣同士歩く彼の左手が、私の右手と微かに触れてお互い顔を見合わせる。一瞬目が合い、逸らす。また触れる手と手。横目で見た彼の頬は紅く染まっていて、彼に見付からないよう私は小さく笑った。

また心がズキリと痛む。
それでも、隣の彼が笑ってくれるなら、それでいい。




(好き、だなんて言えない)
(縮んだ距離が苦しい)
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