私は忘れていたんだ。彼と私の関係を――

彼と共に過ごす日々は最初に考えていたよりも遥かに楽でそれは単に、彼が私【徳川家康】のことを覚えていないから。彼にとって私は私【苗字名前】であり、私【徳川家康】ではない。

でも、その事実が嬉しかった。

それと同時に、私の中に芽生えていた彼への感情が、少しずつ大きくなっていく。決して「好き」とは言えない。
――それは恐らく罪悪感

だけど、日を増すごとに大きくなる感情に、私は少しずつ融かされていった。


「苗字、図書館に行かないか?」
「いいよ、行こ」

私は甘えていたのかも知れない。


「なぁ苗字」
「なに?」
「…いや、なんでもない」

私は気付かないでいた。最近、頻繁に図書館に行って歴史書を読み漁っていることに。時折見せる複雑な表情に、彼のちょっとした変化に――



そしてそれは突然だった。


「苗字」
「なに?」


「お前、【徳川家康】なのか……?」


「え」
「…その反応だとそうみたいだな。俺のことも知っていたのか」


彼と出逢ってから、あまりに自然すぎるその距離感に私は忘れていたのだ。

私【徳川家康】と彼【石田三成】の関係を。




(真実を知った貴方)
(逃げるように走り出す私)
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