防衛任務があったからボーダー本部までやってきた。小佐野から任務より遙かに早い時間に呼び出されて渋々それを了承。隊室の扉を開けると同時に鳴り響く破裂音と飛散物、それから三人の「おめでとう」で今日が何の日かやっと理解した。

誕生日なのに防衛任務とかざけんなよ、と内心思わなくもない。が、任務だから仕方ないし、誕生日ではしゃぐ年でもない。日頃仲の良い奴らから祝いや御丁寧にプレゼントまで貰い、まぁそれでいいか。夜は適当に空いてる奴誘って飯でも行くか。そんな事をぼんやり考えていた。

任務を終え本部に戻り報告書を書く。学生は今夏休みだから本部に人はわんさかいる。騒がしくなるのは嫌いじゃないが今は邪魔されたくはないから隊室に籠もってさっさとこれを終わらせてしまおう。自分一人の隊室は驚くほど静かだ。


「すみません、諏訪さんいらっしゃいますか?」

静かな部屋に飛び込んできたノック音と声。誰だと訪ねることもない。声の主は良く知った後輩だ。入ってこいと促しても一行に開かない扉に不信感を抱き、仕方なく此方からその扉を開けてやる。


「おい名前入ってこいって言って……は?」

扉の先に見知った奴の姿は見えず、代わりに色鮮やかな黄色が眼前を支配した。
ドサリ。そんな効果音が正しいか。目の前に広がっているのは大量の向日葵だ。

「諏訪さんお誕生日おめでとうございます」

両手いっぱいに抱えたどデカい向日葵の花束の隙間からひょっこり顔を覗かせたソイツは笑顔でそれを差し出してきた。受け取らないのは流石に失礼なので仕方なくそれを受け取る。


「お前なぁ……祝ってくれんのは嬉しいけど花とか似合わねーだろ」
「そんなことないですよ。向日葵お似合いですよ?」

頭の先から足の先へと目線を移動させて。意図してる事が理解出来たので花束を方脇に抱え込んで空いた方の手でゲンコツをくれてやる。痛いとわざとらしく言ってくるがトリオン体だから痛くねーだろって返してやった。


「だって諏訪さん、向日葵みたいだなって思ったんですもん」
「うるせぇ。どーせ隊服と頭の色だろーが」
「いや、まぁそれもありますけど。なんだろうなぁ…向日葵って太陽の方向いて咲くから皆同じ方向向くんですよ。諏訪隊とか、他の皆、諏訪さんの事大好きだから諏訪さんの方に人が集まっていくし。なんか向日葵っぽいなぁって思って」

ああ、それだと諏訪さん向日葵じゃなくて太陽みたいですね。

なんて、笑うコイツにバレないように溜息を吐いた。


「太陽はお前だろ」
「え?なんか言いました?」
「なんでもねーよ」
「えー…あ、私この後防衛任務なのでそろそろ行きますね」

失礼します、と御丁寧に挨拶していくソイツを見送って踵を返そうとした時「あ、」と声がした。


「そうだ諏訪さん。向日葵の花言葉、知ってますか?」
「花言葉?知らねーよそんなの」
「そうですか…じゃあ大丈夫です」

ニコリと笑って今度こそ廊下を歩き出した名前の背を見送った。

また静かになった隊室で報告書を仕上げる。さっきはなかった色鮮やかな黄色いが視線に入る度名前の言葉を思い出す。

太陽みたい。

それはお前だ、と思わず口に出してしまったが。まさにその通りだ。

俺を向日葵と形容するのなら、アイツは太陽以外に有り得ない。
向日葵は太陽の方向に花を咲かせるのだから、それ即ち──


はぁ、と盛大に溜息を吐いた。らしくもねぇ。相手はまだ高校生。餓鬼じゃねぇか。そう、自分に言い聞かせてる時点で答えは明らかだし、ほんとにらしくない。再び盛大な溜息を吐き出したタイミングで小佐野が戻ってきた。


「諏訪さんそれ終わったらつつみんとひさと四人でご飯行こーよ」
「ああ…飯な、わかったわかった」
「あれ?随分おっきい花束だねそれ」
「誕生日プレゼントだと」
「へー…」

女の子でしょ?小佐野は楽しそうに笑う。どう答えてもめんどくせぇから適当にはぐらかして、そういえば、と話を切り替える。


「小佐野、向日葵の花言葉って知ってるか?」
「花言葉?ちょっと待って」

はい、と差し出された端末の画面に表示されていた言葉に俺は頭を抱える事になる。




(花言葉は──愛慕、私はあなただけを見つめる)
(やっぱり太陽はお前だ、と伝えてやらなくてはいけない)



--------------
WT初短編。
諏訪さんは向日葵と同化するよねって話をしたのがきっかけ。

諏訪洸太郎生誕祭2016
ALICE+