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仕事に行かなきゃいけない理由も、仕事に行きたくない言い訳も、わたしは同じぐらい思いつける。寝起きで考えの鈍い今だって。とりあえずスマホのアラームを止めて上半身を起こしてみたものの、いつもの矛盾する使命感と倦怠感が体内で争っていて、そこから容易には動けない。探偵をやっていると嘯いた、セフレのような、恋人のような、けれどもやっぱりヒモのような男は器用にうつぶせて寝息を立てている。再び目を落とした電子画面には間違いなく起床時間を表示しているけれど、部屋は真っ暗でとても朝が来たとは思えない。うちのカーテンは遮光機能もくそもない安っぽいペラペラのものなのに、冬の朝日はそれにすら押し負ける軟弱ものだ。おまけに布団の中と外の温度差はひどいものだし、乾燥でのどが痛い。なにもかもだるすぎる。嫌気がさしてつい漏らしてしまった。
「仕事、行きたくない。」
「じゃ、休めば?」
間髪いれず帰ってきた返答にぎょっとして隣を見ると、いつの間に起きたのか、横臥した太宰さんが私にむけて、にやにやと笑っていた。
「一日くらいさぼったってクビになるわけないでしょ。ずる休みしちゃいなよ。なまえちゃんが頑張って、無理してまで行く価値ないよ。会社なんて。」
「息をするように出まかせ言うの、やめません?」
自分よりダメそうな人に言われて正気に返った。そうだ、仕事に行こう。年末の忙しい時期に仮病使って休んだりしてもみろ。クビは免れても向こう三か月は居心地が悪くなること請け合いだ。たった一時の誘惑に負けてストレスで胃を痛めるようなマネは、もうしないと春先にも誓ったばっかりじゃないか。それに、もしも万が一クビになったら生活費はどうする。この人の収入は不定期なうえに量もまちまちだからとても頼みにはできない。
「ひどいな。君にとって私はそんなに信用ならないのかい?こんなにも君を思いやっているのに。」
「信用されたかったら、それ相応の態度をとってください。」
深いため息をついて額を抑える。ただでさえうんざりしているっていうのにこれ以上私の頭の中をかき乱さないでほしい。会社に行くってだけで今の私にとって大仕事なのに、これ以上余計なところに力を割きたくない。もうこんなやつの話なんて聞いてやるもんかとベッドから降りようと体の向きを変えようと、した。
「……何やってるんですか、太宰さん。」
しかし私の腰はガッチリと太宰さんにホールドされてしまっていて、ちっとも身動きができない。そのまま引き倒され、のしりと馬乗りされた。見上げた太宰さんは、やっぱり嬉しそうに、楽しそうに、にたにたと見下ろしてくる。調子にのってトレーナーの下から忍び寄ってきた左手は、ハエにやるように叩き落としてやった。
「ひどいな、二人でいいこと、したくないの?」
「いい大人なんだからTPOくらいわきまえてください。」
「私はなまえちゃんを元気づけようとしただけなのに。」
「元気なあんたを鎮めるために、の間違いじゃないの。」
「そうともいう。」
「あ、バカ、ちょっ、待ってっ!」
振り払ったはずの彼の手はいつの間か素肌を這っていて、小言はもう聞かないとばかりにめちゃくちゃに口内を蹂躙された。酸欠と快感で意識の輪郭がぼやける。時間に余裕なんてないのに、身支度する手間を考えれば今すぐこの人を突き飛ばしても最寄り駅まで走って行かなくてはならないのに。
「ねえ、なまえちゃん。やっぱり会社行く?というか……行ける?」
目をギラつかせた男が、頬を紅潮させ、目を潤ませた女にする質問じゃない。さっきから脚に押し付けられている熱く張り詰めたものが余裕はないと言っているのに、あくまであなたは飄々と振舞って、決定権は私に委ねる。常に優位に立ちたいからだ。それに、責任は私に被せてしまえる。なまえちゃんが決めたんだよ、と。それがこの人の常套手段だと分かってはいるのに彼は何枚も上手で結局私はいつものように追い詰められてしまうのだ。
「早く答えなよ。」
容赦のない指先はスウェットとショーツの向こう側から核心のすぐそばを何回も往復している。じゅくりとすっかり潤ったそこに押し付けられるクロッチの感触が気持ち悪くて、もどかしい。
「きょう、は、いかな……い。」
とうとう私が陥落してしまうと太宰さんは一層口角を釣り上げた。
「ほんと?実は私もね、目が覚めた時から君をめちゃくちゃにしてやりたくて、堪らなかったんだ!いやあ、気があうね。」
やっぱりこいつ、自分がムラついてるだけだったんじゃん!
怠惰の朝に
2017/12/14