※P4主人公名は月森。
※草食系純情番長


 表情がコロコロと変わらない人だったから、ちょっとした笑みにはぐわっと心臓を鷲掴みにされる位に威力があった。でもって、好意を伝えれば白々い頬をほんのりと赤く染めて好きだ、と返してくれるのでまた彼をますます好きになってしまう。そんな甘酸っぱい体験を常々経験しているが、それだけじゃ満たされないのが人の性か。ちょっとだけ別の顔も見てみたい。邪な考えが湧いて、あれやこれやどんな顔をするのか想像していた。怒った顔はあんまり変わらなさそうだし、悲しむ顔は正直見たくはない。取捨選択し、辿り着いたのは色っぽい顔。そういえば、恋人になったけれどそんな風に崩すのは見たことなかったな。どんなもんかなと、横目で彼氏の月森くんを見る。彼自身が持参した弁当を淡々と食べる姿に思わず笑ってしまいそうだったが、彼は視線に気づいたのか食べるか?と首をかしげた。素で可愛いなと惚けてしまう。ちょうだい。と一言言えば、目を細めて笑った。弁当の中から可愛らしいタコさんウインナーを箸で掴み、彼は口を開けて、それを此方に向けてきた。俗にいうあーん、というもの。些か恥ずかしいけれど、それ以上に嬉しさ一杯で彼に従いタコさんウインナーを口に招いた。美味しいか?と聞かれれば、もごもごしながらも美味しかったことを言葉にならない声で伝えればさぞ幸せそうに微笑む。
「俺、名前の嬉しそうな顔好きだ。」
 さっきより顔を赤くして、月森くんは言う。自分も同じだと伝えたら顔が茹で蛸になっちゃいそうだ。
 可愛い。ぼろっと本音が溢れ、彼は吃驚したが何だか堪えきれず彼の唇を奪った。ウインナーを食べた後だから当然キスの味は肉の味で雰囲気なんて無いけれど、何故か月森くんが美味しく思えて興奮した。少し食べてしまおうと彼の唇を挟み、柔らかさを確かめるよう甘噛みするが強い力で肩を押され、突き放されてしまった。
「な、何…」
 彼は耳まで赤くなり泣き出しそう表情でこっちを見つめられ、自分の仕出かしたことに罪悪感を覚えた。けれど、冷めるどころか余計に煽られているようだ。美味しそうだったから。そんな言い訳にもならない言葉で返事をする。
「美味しそう、だったからって…」
 反論しようと声が裏返ったようだが、徐々に小声になっていき終いには俯いてしまった。これは怒らせてしまったか。
謝罪の言葉をかけ、肩に触れるとゆっくり顔が上向いた。
「本当に美味しそうなのは名前だよ。」
 頬から耳にかけて赤く染めてぎらついた目を揺らめかせ、そう言う彼は私の返事を聞かず唇を奪った。


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