「どうして、こうなったんだろうか」
はあ、と大きな溜め息が人混みに溶ける。
私は、ずっしりと背中に背負ったギターケースを背負い直すとまたひとつ溜め息をついた。
目の前に広がるのは大きな町に沢山の人
それなら今までとさして変わらない。
しかし、目の前の光景は明らかに私が慣れ親しんできた故郷とは異なっていた。
目の前を横切るのは私とは違う装い
どんな風に鍛えればそんなボディビルダーみたいな肉体になるのかと思うような見ただけで強靭な体の屈強な男たち
100センチにも満たない小人のような人々が人混みに流されないように踏ん張って歩いている姿にもすっかり慣れてしまった。
西瓜でも入っているのではないかと疑いたくなる立派な乳房を持つ美女たち
その他にも角が生えていたり、動物のような耳を立てた人々がごった返していた。
そして、それ以上に違う点はこの町がある場所
ここはなんと空の上に存在するのだ。
私が、こうなったわけをどうか聞いて欲しい。
私は何処にでもいる只の大学生であった。
私はバンドを組んでおり、そのなかでもギターを担当していた。
それが起きたのは、バント練習の帰りのことだった。
何時もより練習が長引き、真っ暗な道を一人心細く帰っていたのだ。
しかし、私はなんだか胸騒ぎを感じて急いで家に向かっていた。
カランッ
すると、後ろから何かが落ちた音がした私はふっと後ろを振り返ったがそこにはなにもなくましてや人の姿も存在していなかった。
ヒヤリと背中に冷たい汗が流れる。
前をゆっくりと見ると少し先に白い外套を纏った謎の人物がこちらに向かって歩いてきた。
驚きのあまり声が出そうになるが、すんでのところで飲み込んだ。
目を凝らし、相手を見てみると顔はフードで隠されていたが身長や体格的に男性であろうと予想がついた。
そのあと、目の前で立ち止まった男は
「君は、神を信じるかい?」
突然口を開いたかと思うと、訳がわからないことを問いかけてきた。
「は?」
私は思わず、脱力してしまった。
髪、紙・・・神?
何をいっているのかいまいち理解できずぼんやりと立ち尽くしていると、目の前の男は首を傾げもう一度繰り返した。
「君は、神を信じるかい?」
私はなんだかよくわからなかったがとりあえずなにも考えないまま
「いるよ。きっとね。」
そんなことを答えてしまった。
目の前の男は黙りこんでしまった。
何故だろうか、こんなにも怪しいのに只の不審者には見えないと思うのは声がよかったからだろうか。
変人過ぎて呆れてしまったからだろうか?
私も黙りこみ、それからどれだけの時間が流れたのかは、わからないが唐突に男はひとつうなずくと
「君にしよう」
その言葉を呟いた瞬間的
私と男の周りで旋風が起きる。
「な、なに!?」
狼狽える私に対して目の前の男の外套が、バサバサと靡いているだけ。
「君に、頼みがある。
星の涙を見つけて欲しい。」
「何をいってるの!?」
風に当たらないように両手を顔の前でクロスさせていると目の前の男が被っていたフードが外れた。
純白の髪に氷のような真っ青な瞳が印象的な男は無表情のままこちらを見下ろしている。
「星の涙は星の民にしか触れられない数多の奇跡の結晶
進化し続ける彼らと異界のものである君にしか頼めない。」
私はそんな人たちの間を縫い何時もの慣れ親しんだ噴水前にやってくる。
ここまで来るのに何時もいろんな意味で疲れきってしまう。
この先が本番だと言うのに。
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