馬鹿はどっちだ

四角い液晶を眺める瞳が、煌めいた。
「無料パフェ、アツいな…!」
「パフェ〜?」
「そそ、無料でパフェが食べ放題になるホテルがあってさぁ」
大方リツイートか何かで回ってきたのを見たのだろう。ガクくんの好奇心は多岐に及んだ。
これこれ、と表示されたものを見て、僕は顔を顰める。
「いやこれラブホじゃん」
「そうなんだけどぉ」
出た。こういう時の伏見は、なかなかにしぶといのを僕はもう嫌というほど知っている。もちろん、次に出る言葉も。
「とぉやさん、今度このラブホ行こうぜ」
言うと思った。
嫌ですよ、顔に出そうになって、一瞬逡巡する。いいって言ったらこの人どんな顔するんだろ。ひとたび気になれば、それがすごくいい案に思えてきた。
「いいですよ」
自分から誘ってるみたいで恥ずかしい。目は合わせずに言った。
「……え、ぁ、マジか!?」
一瞬面食らった顔。の後に嬉しさ隠せてない笑顔。そんでもって、すぐにスケジュールを聞いてくる、この現金さ。
まあ、嫌いになれない僕も僕だ。



「こんな美味くて色々種類あるのが無料だなんて、来れて良かったぜ」
ガクくんの視線はずっとメニューから外れない。何度通えば制覇出来るのかも分からない数のパフェは、それはもうガクくんを魅了した。
部屋に入ってから僕は放置されたまま。ベッドの反対側でスマートフォン片手に不貞腐れている。
「本当にパフェ食べたかっただけかよ」
笑い混じり、ため息混じり。そっと小声に乗せて呟く。
ちょっと期待してたの恥ず……寝よ。何かじわっと疼いた気がしたけど、見ないふりをする。ぽすんと落ちた先のベッドは、柔らかく僕を迎えてくれた。
反対側に座っていたガクくんが、振り返る。
「とぉやさん、寝んの?」
「……寝る」
今更何言っても遅い。布団を引き上げて籠城を決め込む僕。
「……とぉ〜やさん」
見なくても分かる、にやけ顔で近付いてくる伏見。
「あーもう来んな来んな!」
けれどもここはベッドという狭い島の上。捕まるのも時間の問題だった。すぐに布団は剥ぎ取られて、拗ねた顔を隠す最後の砦は両腕だけになってしまった。
「そんなにしたいならパフェとしたらっ!?」
「刀也さんの方が甘いし美味しいよ」
「……っ!っ!」
カッと熱くなる頬に、ひとつ唇が落ちてくる。
馬鹿なのか、コイツ。ほんと馬鹿だ。んでもって、こんなセリフで許す僕もたいがい馬鹿なんだろうな。