答え合わせはベッドの上で
[side : 大和]目覚めて第一声は、「いってぇ」だった。ガンガンと頭痛を訴える脳ミソが、目覚まし代わりのアラームを鳴らす。はーい立派な二日酔いでちゅねー。久しぶりの邂逅にこっちはそれどころじゃないけどな。布団の隙間から見えた、おびただしい数の空き缶は見なかったことにした。
思考が回ってくると、腕の中に何かがいることに気が付いた。ミツだ。みつ…ミツぅ?いやいやいやいくら恋人だとはいえど、お兄さんまだ一回も手出してないです。それどころか、キスも片手で足りるくらいしかしてません。こんな突然腕の中に来られても…しかもご丁寧に裸!いやぁ最近のミツは積極的でお兄さん嬉しいなぁ!まぁ現実逃避はこの辺にしておいて、まったくもって意味が分からない。大事に大事にしてきたはずの恋人との初夜が、泥酔している間に終わっているなんて誰が信じようか。マジで言ってる?どんなに見つめても、裸でベッドインしている事実は覆らない。なんてこった。
さらに言うと、本当に何も覚えていないし思い出せないので、自分がどっちの役回りだったかすらわからない。体格的に考えたら俺が上、つまりミツが女役をやったってことだ。もちろんそれが妥当だし、俺もミツを抱きたいと思っていたからそうであれば大団円。何にもまだ解決してないけど。しかし相手はミツだ。そう、問題は相手があのミツであることだ。自他ともに認める男前、可愛い顔して兄貴分、そのギャップに落ちた男は数知れず、もれなく俺もその一人だ。おそらくミツに抱かれたいツアーやったら五大ドームが満員になるだろう。それくらいミツの男前度はずば抜けて高いのだ。もちろん俺がミツを抱いたって信じている。だけど、だけど万一俺がそのミツの男前度にころっと落ちてしまい、尻を差し出してしまっていたら…?いや、夜のミツという漢の前では、尻を差し出さずにはいられないという可能性もある。十分にありうる。例えばこうだ、大和さんオレが超気持ちよくしてやるから、ちょっとケツ貸せ。はいぃぃぃ!みたいな。そう思うと段々腰まわりが痛いような気がしてきた。奥とかズキズキするかもしれない。あとめっちゃ気持ち良かった、気がする。だとすると俺がミツを抱いたのではなく、俺がミツに抱かれた疑惑が一気に強くなってきた。予想は出来ていたが、まさかの展開。俺は知らない間に処女を卒業していたのか…
いやいやいやそんな簡単に己の大事なことを決めていいのか二階堂大和。そもそもやってないっていう選択肢も考えられるんじゃないか?突然我に返ったが、部屋の床に転がった空き缶に交じって、大量の避妊具らしき残骸が落ちていたので即却下した。ですよね。そう簡単に事実は変えられない。
そうこうしているうちに腕の中のミツが身じろぎして、目を覚ました。
「お、おはようミツ…」
昨日は何があった?なんて聞けない。泥酔してたとはいえ初夜を覚えてない恋人なんて最低すぎる。挨拶以降なにも言えなくて黙りこむ俺に。
「身体、大丈夫だった?」
にこやかにミツが問う。身体の具合を心配されるってことは、俺やっぱりミツに抱かれてしまったのか…!朝の光に照らされて輝くお前さんの男前な笑顔が眩しいぜ。なんだか自分がちっぽけな人間に思えてきた。処女喪失がなんだ。女役がなんだ。結局これからもミツと一緒にいられるならもうそれでいいや。
「あぁ、大丈夫だよ。ミツの方こそ」
「オレは全然平気。そろそろ朝ご飯作るかな…大和さん何食べたい?」
すっかり結論を受け入れた俺は、次の行動を起こすべく考える。
二回目やるときまでに、ちょっとほぐしとこう、と。
[side : 三月]
窓から爽やかな光差す朝。恋人のたくましい腕に抱かれて目覚めは最高、だけど頭は二日酔い。割れるように痛い頭に動く気すら起きない。大和さんもまだ寝ているみたいだし、もう少しこのまま寝ていよう。ってちょっと待て、オレ、今、大和さんって言った?ヤマオさんでもなくヤマノさんでもなく大和さん。おっかしいなー?昨日オレ何してたっけ。まだキスも数回しかしていない恋人と、目が覚めたら全裸でベッドに泣ていましたって、それどう考えても事後じゃないですか。まじか。全裸で入るベッドってこんなに気持ちいいんだなー、知らなかった。ちょっと得した気分になりつつ現実逃避は忘れない。なんだって、恋人と過ごす初めての夜(の営み)だったのに、べろんべろんに酔っぱらってなんにも覚えてないとかありえない。悲しすぎる。よくよく気が付けば、締め切った部屋いっぱいに酒の匂いが充満している。一体どれだけ飲んだんだ。片付けるのがめっちゃ怖い。
あとついでにいうなら、その…どっちがどっちだったか、みたいなのもさっぱり記憶にない。どっちがどっちか、って、そんな恥ずかしいこと口に……できます。こう見えても成人男性なんでね。とまぁ、オレが抱いたのか抱かれたのかって話だ。本当に何も覚えていないから、自分の勘に頼るしかない。やたらめったら気持ち良かった気がするのは覚えている。たぶん。体格的に考えると、大和さんが男役で、オレが女役だ。間違いない。でも相手は大和さんだ、そう大和さんなのだ。大和さんといえば、めんどくさがり。休日も寝てばっかで掃除すらロボの武蔵に頼るばっかり。そんな大和さんが、オレを抱くためにオレの尻の穴をほぐ…ほぐ…ほぐすか?普通。しなさそう。もっというなら、めんどくさいし疲れるから俺は動かないから、ミツ動いて〜とか言いそう。うわ脳内再生余裕じゃん。
と、いうことは、だ。もしかしてだけど、もしかしてだけど。オレが大和さんを抱いたという可能性もありうるんじゃないか?お兄さんここに寝てるから、ミツの好きなようにして〜。うん、いける。これだ、これだよ!それでオレは、じゃあ最高に気持ちよくしてやるからな。覚悟しろよ大和さん、って言うんだ。全然ありうる。むしろこれしかないような気がしてきた。すごい、オレは泥酔して知らない間に大和さんで童貞を卒業していたのだ。大和さんは男としたことないって言ってた。つまり、オレは大和さんの処女を頂戴してしまったのだ。なんてこった。全く覚えていないけれど、果たしてオレはマグロな大和さんを満足させられたんだろうか。世紀の覚悟をして処女を捧げてくれた大和さんの体を、オレなりに精一杯いたわってあげなきゃ…!
そうこうしているうちに大和さんがオレが目覚めたことに気が付いたらしい。
「お、おはようミツ・・・」
と、少しか弱い声での朝の挨拶が降って来る。きっと体の変化に心がついてきてないんだな。めんどくさかったとはいえ、オレのためにありがとう。
「身体大丈夫だった?」
そんな気持ちをこめて、努めてやさしい声と表情で返す。すると大和さんの表情が少し驚いたような顔をして、すっと安らいだ。やっぱりオレの判断は間違っていなかったんだな。今日くらい大和さんがだらだらしてても怒らないし、朝食はリクエストを聞いてあげよう。それから、それから。
「あぁ大丈夫だよ。ミツの方こそ」
「オレは全然平気。そろそろ朝ご飯作るかな…大和さん何食べたい?」
ベッドからそっと抜け出しながら次の行動に移すべく考える。
二回目までに、もっとテクを磨いておかなきゃ、と。