うぶ
「そろそろ素直になったらどうなのよ?」三月が嫌々と首を振る度に、誘うようにフリルが揺れる。その仕草はまるで初心な少女のようで、なるほど壮五が執着するわけだと心の中で納得した。要するにとても美味そうなのだ。壮五のように吸血鬼でもない自分が誘惑されるほどに、目の前のこいつはアンバランスな魅力で人を引き付ける。
「オレには壮五がいるから」
突っぱねる腕には力がこもっていない。それは三月の心の中を映しているようだった。何度口説いてこちら側に引きずり込もうとしても、こうやって形ばかりの拒絶をされる。いい加減認めたらいいのに、案外強情なところも気に入っている。
「あのねぇ、そんな可愛い顔で言われても説得力ないんだけど?」
意地の悪い笑みで近付けば、ふいっとそっぽを向かれた。その拍子に白い首筋が明らかになる。すっと通ったそこに目ごくりと息をのんだ。しかしふたつの小さな噛み痕のようなものを見つけて、胸の奥にどす黒い何かが溜まっていく感覚がした。
「な、なに、ひっ!」
逃げようとする体を抑えるために、腕を掴んで捩じ上げ体をさらに密着させる。思いのままがぶりと歯立てて上書きするように首筋に噛みつけば、鼻から抜けるような腰に響く声を出して体を震わせた。じわりと滲んだ赤い滴りに舌を這わせれば、ふわりと鼻先に香る甘ったるい匂いにくらりとした。最後の仕上げにもう一度そこに口付ければ、がくんと崩れ落ちる体。すかさず手を伸ばし、優しく抱き留めた。そうして汗で額に張り付いた髪をかき分けてやれば、ふわふわと夢見心地に彷徨う三月の視線が俺を捉え、蕩けた。
「たまんないなぁ」
浅い呼吸を繰り返すうっすら開いた口から、ちろりと赤い舌が覗く。舌なめずりをして、その一回り小さな口内を堪能する。ぽってりと艶めしく輝く唇に浅く軽く、何度も角度を変えて口付けて。下唇をひと噛みしてやれば、焦れたように奥から追いかけてきた舌を捕らえて絡める。どこか甘くいつまででも味わっていたい気持ちになり、つい虐めすぎたらしい。
「ふ、んんー、んっ、はぁっ、はぁ、」
飲み込み切れなかった唾液が三月の口端から、つうっと流れ落ちた。それを辿るように、しなる背中を、ゆらめく腰をゆうるりと撫でた。先程と変わらず誘うように揺れる水色のエプロンからでもわかるほどに、ぴんと主張する可愛い存在に手を這わせれば、ひんっとよりいっそう高い声を上げてないた。するりと簡単に紐を解くと、期待の籠った熱い視線とぶつかる。もう三月の頭の中から壮五のことなどすっかり抜け落ちているだろう。それでいい、この瞳に映るのは俺しか許さない。