どっちもどっち
タンタンタンッ。何度も刻まれる同じリズムは、見飽きるくらいに繰り返されていた。
丁寧に、踏みしめるように、カケルの足は正確に音を刻む。
それでもまだ納得してないらしい。額に流れる大粒の汗が、悔しさを滲ませていた。
「帰んねーの」
レッスンリンクがつるつると光っている。
「だって、せっかくのステージ、下手なショー見せらんないでしょ」
ふーん、でも、あっそ、でも、投げかける言葉ならいくらでもあったのに、どれも違う気がして口を閉じた。
「タイガきゅんは帰んなくていーの、いい子はそろそろ寝る時間だにゃ〜?」
曲が、一周してまた最初から流れ始める。だけどカケルはこっちを見たまま、突っ立っていた。流れる汗から目を逸らして言う。
「お前が、一人寝は寂しいって言うからだろ」
一瞬の沈黙。ぱちくりと零れそうなほど見開かれた目を、直視出来なかった。だいたい、見なくてもわかる。今ごろ、ニヤついた笑みを浮かべてるんだろう。
「…タイガきゅん、甘えるの上手になったね」
「ちっげーし!」
カチンときて、つい反応してしまった。だけど、こういう時に限って、案外カケルの耳が赤いことに気付いたりして。気付かなきゃいーのに、むずむずしてる唇とか、震えてる手とか、ああ、もう。
「おら、置いてくぞ坊ちゃん」
レッスンリンクの側に置いてあった荷物を、勝手にもって階段を駆け上がる。
「ちょちょ〜! シューズ脱ぐから待って!?」
背後から追いかけてくる声が、伝染したむずむずに拍車をかける。舌打ちは、上手く鳴らなかった。