甘くゆるやかな呪い

さっきから視線が痛い。
夏休み入って半ば、俺は月末の写真展のための作業をしていた。サークルの有志数名によって作ったグループで、一度展示会をやってみたいと話していたのがようやく実現するのだ。まだ納得のいく作品が出来ておらず、まだもうちょっと、と時間をもらったのはいいものの。
じーっと背後から突き刺さる視線のせいで、どうにも集中出来ないでいた。
視線の出処は間違いなく同室の太一だ。太一はラグに座ってローテーブルで作業している俺の後ろで寝っ転がって、雑誌を読んでいるはずだった。が、ちらちら見られているのは気が付いていた。それがなぜか、次第に突き刺さるものに変わっていったのだけど。
一度気になれば、なんだか気になってしまうもので。
「太一、どうかしたか?」
耐えかねて何度か尋ねたけれど、
「ん*? なんでもないッス」
の一点張り。
何でもないと言う割には、その視線、隠せてないぞと苦笑いしてしまう。
そうして再び105号室に沈黙が降り立つこと数分。突如ごろごろごろと音がしたかと思うと、太一がラグの端から端までを転がって、俺に激突した。
「太一?」
そのまま俺の腰に抱きついて、頭をぐりぐりと擦り付ける太一。なんだなんだとその頭を撫でてやれば、吸い込まれそうなほどまんまるの青い瞳がちらと瞬いて逸れた。
「………臣クンに俺っちを構わないと死んじゃう呪いかけたッス」
ぶぅ。続けてわかりやすく、むくれる音。呆れるほど可愛いその呪いは、抱きつく形となって俺にまとわりついた。
あぁなんて愛しいのだろう。
「それは大変だ、そんな呪いをかけた悪い太一にはお仕置きが必要だな?」
くすりとひとつ笑ってそう言えば。
「そうッスよ、思う存分お仕置きするがいいッス」
甘くゆるやかな呪いが俺の首に回って、そっと近付くまま唇を重ねた。