Moon Fragrance
Very Short
ここは140字前後のSSを置いているページです。



 
【ルーファウス 】知っている瞳 【ルーファウス 】ハートの日(8/10)
記憶の抜け落ちた私を見て、貴方は瞳を揺らした。私は知ってる。毎日私の眠る枕元にそっと来て、愛を囁くのを。祈る様に聞こえる声は、氷が溶け出すように染み込んだ。私は貴方の目を知ってる。記憶がなくても、貴方の青い目が私を溶かすことを。貴方の目が大好きだと言うことを。私は本能で知ってる。 「あっつい……」と言うと「それならば脱げばいい」と目の前の涼しげな青い瞳をした人が私のブラウスに手をかけた。胸元をはだけさせて少しずつ位置をずらしながら口付ける。擽ったさに身を捩りながらでも“何か”を描いたことはわかった。気づかないけれど知っているその何かは貴方の想い。
クラウド誕生日 【ルーファウス 】遠雷の向こう
「平気か?」
「ああ」
「今日、誕生日だって言ってたろ? お前もついてないな、そんな日に遠出の仕事で乗り物酔いって」
「すぐにマシになる」
「仕事終わったらパーティやろうぜ。可愛い女の子たっくさん呼んで」
「ザックスらしい」
「だから仕事頑張ろうぜ。誕生日おめでとさん」
遠雷が聞こえてくる。薄らと光る雲間。じわじわと近づいてくるそれは、まるで私の不安の様だった。彼は70階の大きな部屋からそれを見据えた。来るなら来い、貫いてみせろと笑う背中は野心の塊。勝利するのは不安か豪胆か。その結末はまだ、あの雲の中。
【ルーファウス】隣で眠るキミ 【ルーファウス】つくづく敵わない
まだ帰したくないと車を走らせた夜道。昼間から元気に私の手を引いてはしゃいでいたお前は、高台の帰り道からうとうとし始めた。私に気をつかって寝まいとする健気な姿は何より愛らしかった。頭を撫でてやると嬉しそうな顔をして夢の世界へと入る。 その夢にも私が共にいられればと願う。 本を読むお前が目に留まる。伏し目がちに文字を追う瞳。それを私はずっと眺めていた。目が合ったときに恥ずかしそうにはにかむ顔が見たかったのだが、顔を上げたお前はにっこりと擬音がつきそうなほど私に微笑んだ。不覚にもドキッとした私は、お前の可愛さにつくづく敵わないと思い至った。
【ルーファウス】新婚ごっこ(夢主視点) 【ルーファウス】新婚ごっこ(彼視点)
落ち着いた朝、彼を起こすまでに朝食の準備をするの。野菜を洗って少量のサラダ、パンをトースターにセットして、彼を起こした後に卵を焼くだけ。彼の好きなスクランブルエッグ。起こしに行こうと階段を上って彼の部屋に行く。ルー起きてください。彼の手が伸びてくる。引き寄せられておはようのキス。 静かに部屋を出て朝食を作りに行く彼女。私が起きていることには気づかない。ある程度の朝食を作り終えて、またこの部屋へ戻ってくるのを待つ。優しくルー起きてくださいという彼女の声が好きで、毎日寝ているフリをする。それを合図に引き寄せてキスをするのが私の日課。
【ツォン】逃しはしない 【リーブ】自分のものには名前を
下のお前相手に小っ恥ずかしさを我慢して想いを伝えたというのに「主任、冗談ですよね?もしかして飲みました?」なんてお前はするりとすり抜けていこうとする。仕事柄のせいか冗談だと思っている。飲んでなどいない。酔ってこんなこと言うものか。本気だと信じるまで、いや、その後も逃しはしない。 疲れているのは知っているのですが、机に突っ伏して貴女が寝ていると意地悪をしたくなるんですよ。風邪をひいたら困るので、出来るならベッドで寝て欲しいのですが。 少しくらいなら許してもらうとしましょう。そうしてボクは貴女のうなじに唇を寄せるんです。 自分のモノには名前書いとかんとね。
【ルーファウス】居場所 【ルーファウス】その靴を脱ぎ捨てて
晴れも、雨も、風も、嵐も。お前はただ静かにここにいる。どこに行くこともなく、言葉を発する事もなく穏やかに、にこやかに私を見守り、側にいる。それがこの上なく心地よかった。変わらないお前の雰囲気と愛心が好きなのだと痛切に思う。 いずれ星に還るとしても、お前がいる場所が、私の居場所だ。 服が濡れることも厭わず靴を脱ぎ捨てて、夕陽をキラキラと反射させる海にザブザブと足を進めた。「一度やってみたかったの」と彼に言うと、緋く照らされた金色の髪を靡かせて笑いながら「楽しいか?」と聞いた。そして彼も同じように海に入ると私を抱き寄せる。重なった唇は太陽と影と海しか知らない。
【リーブ】なんて言ったの?(夢主視点) 【リーブ】なんて言ったの?(彼視点)
「好きです」人の行き交う喧騒が掻き消しくれるだろうと思ったから小さな声でそう呟いた。彼はピタリと足を止めて、驚いた顔で私を見る。局長の空耳だということにしてもらおうとしたのに、私に向き直り「なんと言ったのですか!もう一度お願いします」と赤い顔で言われたら、そんなことできなかった。 雑踏の中でなんだか聞き捨てならない言葉が貴女の口から聞こえたのです。思わず足を止めてしまって、恥ずかしげにしている貴女に確信しました。上司と部下でなければ、もっと素直に自分から伝えられたのでしょうか。「なんと言ったのですか!もう一度お願いします」ずるいということは自覚しています。
【ルーファウス】共犯者 【レノ】幼馴染みやめたいんだけど
「今夜は流星が見られるらしい。そういうの好きだろう?」とまんまと乗せられて、2人で静かに抜け出した。主任にバレたら大目玉。地面に座って顔を見合わせ、にっと笑うの。無数の紅や蒼や黄の輝く澄み切った宙を流れる星は、あなたと私の共犯者。 売れそうな鉄屑を集めていると「なー、今日もかよ?」と間延びした声。上で暮らし始めたのに、私の幼馴染みは尻尾のように纏めた赤毛を揺らして定期的にプレートの下へと降りてくる。無視して鉄屑を選別した。腕を掴まれ「そろそろ幼馴染み、やめたいぞ、と」驚いて見上げれば鮮烈な赤が笑っていた。
【ルーファウス】恋を重ねる 【ルーファウス】水槽に浮かべる
恋を重ねる。

ーーお前の柔らかい声が好きだ。
ーー貴方の低い声が好き。
ーー優しい目が好きだ。
ーー自信に溢れた目が好き。
ーー慈愛に満ちた言葉が好きだ。
ーー真っ直ぐな言葉が好き。
ーー陽だまりの様な心が好きだ。
ーーそよ風の様な心が好き。

そばにいると何度でも好きになる。
想いのビー玉をポチャンと水に沈めた。流れなどない、常に透き通った水。上から照らすライト。ガラス玉は光を反射させながら、ゆっくりと底へ落ちた。1つずつ、1つずつ、想いを重ねる様に底へと落としていく。底だけが光り輝いていた。お前が受け取らない愛は水槽に浮かべる。いつかそれも沈むだろう。
【レノ】チョコとかパフェとか、愛とか 【ルード】待て、は得意じゃない
好きな所をひと掬い。甘くて酸っぱくて赤い苺ソース。好きな所をひと掬い。渋くてほろ苦くて茶色いチョコソース。好きなものだけを盛り付けたパフェは、いつだって甘くて酸っぱくて渋くてほろ苦い。パフェを頬張る私をにっと見る。「ホントにそれ好きだな、と」パフェの層は赤い猫への気持ちの重なり。 相棒は呼ばなかった。個室の居酒屋。気づいてない訳じゃないだろう。コイツは勘のいいやつだ。目の前でソワソワしている。「話がある」咳払いして冷静に努めた。「ま、待って……心のーー」「待ては得意じゃない」サングラスをくいっと上げる。俺のソワソワが伝わる前に済ませなければならない。
【リーブ】悪夢はもう見ない(夢主視点) 【リーブ】悪夢はもう見ない(彼視点)
あの頃は毎日怖い夢を視た。聞いたことのない音を立てて、建物が崩壊していく。その中をふらふらと歩いていく夢。私の上に瓦礫が崩れてきて目が覚める。優しい手に出会ってからは平気。隣で微睡む恋人に顔を寄せた。髭でチクチクする。「……また悪夢を見たのですか?」「いいえ、今日は幸せな夢です」 隣で起きる気配、頬に触れる優しい感触。「……また悪夢を見たのですか?」以前は毎晩、悲鳴を上げて飛び起きていましたねぇ。自分を酷く恨みました。でもここ最近はぐっすり眠れている様で安心です。「いいえ、今日は幸せな夢です」キスをくれるなんて、どんな夢か教えてもらわなくてはいけませんね。
【ルーファウス】何よりの薬 【ルーファウス】気遣い
風邪をひいて熱を出して火照った体に彼のひんやりとした手は冷たくて気持ちよかった。それを分かっているのか、額や頬や首筋に触れる。心地よくて目を瞑るといつのまにか眠ってしまった。夜中にあった寝苦しさは、熱と共に全て彼に吸いとられた。早く元気になれと夢現の中で聞こえた声は何よりの薬だ。 風邪がうつるのでやめて下さいと伝えているのに、社長は一切聞く耳を持たずに横になって私を抱きしめた。熱いなと言って笑い、一緒に眠りにつく。うつってほしくないと願いつつも、熱で心細くなっていた今は嬉しい気遣いだった。回復したらお礼はなにがいいかな。
【ルーファウス】顔、口調、態度に出ないだけですごく怒ってる 【ルーファウス】鎖骨に咲いた花
私がなにをしたのか身に覚えがない。でも彼はすごく怒っている。きっと会議で何かあったに違いない。あの曲者揃いの統括人だ……。でもいつも社長室に呼び出して、いきなり服をはだけさせて軽くといえど首元に噛みつくのはやめてほしい。それ以外では直ぐにはわからない、機嫌の悪い時の彼の癖。 疲れ果てて、あられもない姿で気を失うように寝ている恋人。ついこの間まで恥ずかしそうにしていたのに、いつの間にか慣れている。お前がつけた鎖骨に咲いた花。初めて自分から私の肌に唇を寄せてきた。私の独占欲が移ったか。今日は一段と悪くない夜だ。
【ツォン】逃げるなよ、追いかけたくなるだろ 【ルーファウス】距離のつかみ方
「ちょ、ちょっと待ってください。心の準備が……!」自分から誘ってきたくせに、待ったをかける。逃げるなよ、追いかけたくなるだろ。後退りながら遠ざかろうとする彼女をベッドへ追い詰める。後がなくベッドの縁に腰掛けた彼女を押し倒し、逃げ道をなくした。「覚悟を決めろ」 会社の資料室で彼女を見つけた瞬間、何故だか懐かしさが込み上げてきた。梯子の中段に腰掛け、文面に一心に注がれる視線。その視線をこちらに向けるにはどうしたものか。驚かせずに近づき、心を落とさせるには策を練るべきだろう。少しずつ、少しずつ。こちらへ引き寄せ、離れられなくしてやればいい。
【ルーファウス】中秋の名月 【レノ】中秋の名月
輪郭まではっきりとした真円の月が空に浮かんでいる。光の反射を受けて輝いているくせに、私には眩しすぎた。だが、喉から手が出るほどあれが欲しい。満ちては欠けながら姿を変える、捉え所のないお前が。どれだけ腕を伸ばせば手に入る?どうすれば私で輝かせることができる?今の私には理解し得ない。 「ねぇ、あれほしい」「は?なに言ってんだ?」でけえ真ん丸の月を見ながら、本当にこいつは突拍子もないことを言う奴だ。「無理に決まってんだろ、と」「こんなに近くに見えるのにー?」ほっぺを膨らませて不満そうに見ても、無理なもんは無理だろ。月の代わりに大人しく俺のこと見てろよ、と。
【ルーファウス】悪戯をされても知らない 【ルーファウス】冷えた手
薄暗い部屋のソファーの上でまた本を読んでいたのか。私が貸した本を飽きもせずに何度も読み返している。そしていつも眠りこけている。ブランケットを掛けてやるとむにゃむにゃと動く口。その仕草に自分の物でよかったと常々思う。もう少し経てば起こしてやろう。それまでにどう遊んでみるか楽しみだ。 止まない雨。気温は日に日に下がっていく。ひんやりとした窓に手を当てて、早く止まないかなと外を見るのが癖になってしまった。そんな私の横に立って「太陽が恋しいか」と問う彼。それに頷く私の手を取って「手が冷え始めている」と温めてくれる。こうやって温めてくれるなら、太陽よりも冬が恋しい。
【ルーファウス】海 【リーブ】流星群
数年住み続けた地の、海の香りだけが脳裏にこびりついている。穏やかな波の潮騒も、寄せては弾ける白い波も、水面に揺らぐ金色の光も、今は薄れてしまった。それは美しく、心地よく、私の中を占めていたはずなのに。残るのはただ、海の香りだけ。私の海を完成させるには、大部分のあなたが足りない。 「今日の夜は流星群が見られるらしいですよ。一緒に行きませんか?」練習のつもりで口に出してしまったのです。あとで何気なく自然に誘いたかったのですが、その……あなたが後ろにいるなんて気づかなくてですね。「えと……」「あ、あなたを誘ったのですが……一緒に、見に行きませんか?すみません」
【ルーファウス】噤んだ言葉と気高い青
「なにを――」私はそこで口を噤んでしまった。目の前の彼が訝しげに私の名前を呼ぶ。「なんでも、ないです……」言えなかったんだ。青い瞳が揺れても、一瞬にしていつもの気高い眼差しに切り替わった事に。なんでも言えると思ったのに、――そんなに恐れているのですか、なんて言えなかったんだ。聞いたところで、はぐらかされるのも分かりきっているから。息すら呑んでくれないだろう。きっと。
Moon Fragrance