Moon Fragrance


得るための対価


※フォロワー様より、とあるシーンの夢絵を頂きました。
驚くくらいイメージ通りの夢主も描いてくださっているので出来ればぜひ見ていただきたいのですが、夢小説"だけ"をお楽しみ頂きたい方のために非表示ボタンを用意しました。先に押してご活用ください。
見てくださる方は、押さずにそのまま最後までお進みください。


では本編へどうぞ。



 ルーがたまには休暇をと、作業部屋に籠もりっきりの私をチョコボファームに連れてきてくれた。抜けるような青空に、牧草の匂い。気持ちがよくて、うーんと背伸びをした。あと、なんとも言えない匂いはチョコボかな?

「ルー、連れてきてくれてありがとう」
「ああ。長時間同じ姿勢は体に悪い。それにデートも同じところばかりではな」
「エッジもお店が増えてきて楽しいよ?」

 デートと言ってくれることに少し嬉しくも気恥ずかしくなりながら、チョコボが数羽ほど放牧されている囲いの柵に近寄って眺める。
 すぐ近くにいる子の羽は黄色で、その隣の子は茶色味が強い。もう少し先の子の羽根はちょっとオレンジ寄りの色をしていた。なんとなくだけど、若干の違いがあるらしい。あれ? 向こうの子は薄く緑がかっている。

「あれは山チョコボだよ」
「山チョコボ、ですか?」
「急な山でもへこたれずに登ってくれるんだ」

 珍しい色のチョコボを眺めていると、このチョコボファームを経営者のひとりである青年が教えてくれた。
 へー、山チョコボなんているんだ。他にも川を渡ってくれる川チョコボに、すごく珍しいけど山も川も大丈夫なチョコボまでいると教えてくれた。

「これ、お待たせ。チョコボたちのおやつ、カラッカの野菜だよ」
「あっ、ありがとうございます。ルー、ほら」
「リクがやればいい」
「えー」

 さっきここへ着いたとき、事務所のほうで小さなバケツに入ったチョコボ専用のおやつ、カラッカという野菜を準備してもらった。バケツひとつで200ギル。中にはニンジンに似た根菜が食べやすいよう縦に切られて、2本分ぐらい入っていた。そのバケツを持った瞬間、囲い中からチョコボが集まってきた。

「怖くない」

 勢いよく走ってくる子もいて、驚いた私は思わず後ずさってしまう。そんな私を見て、ルーがそう言いながら軽く笑った。
 仕事に戻ろうとする青年が最後に、しっかり開いた手のひらの上にオヤツを置いて差し出すと噛まれなくていいと教えてくれた。言われた通り一羽一羽にカラッカの野菜をあげていく。手のひらを掠める嘴の先がちょっとくすぐったい。
 おやつに夢中になっているあいだに、チョコボの首の辺りを優しく撫でてみた。ふわふわの羽根が密集している。首に抱きついてみたいのをグッと堪えた。

「初めてチョコボに触ったんだけど、すごくふわふわしてるね。触り心地、気持ちいい」
「楽しいか?」
「うん! ルーもおやつあげればいいのに」
「オレはリクを見ているだけでいい」

 私はチョコボじゃないと思いながら、顔が熱くなった。それを振り切るために、視線をあちらこちらと彷徨わせた。そうしていると、向こうのほうにまだ集まっていないチョコボを見つけた。お腹いっぱい、なのかな?

「ね、ルー。あっちにも……わっ」
「リク?」

 向こうのほうにいるチョコボにも試しにあげてみようと、移動するために一歩踏み出したら首が締まった。ググッと後ろへと引っ張られ何事かと首を捻ると、先ほど見つけたオレンジ色に近いチョコボが私のパーカーのフードを咥えていた。
 放してもらおうと、パーカーの喉元を掴んで少し前へと出てみようとする。だけどフードを咥えるチョコボは一向に放してくれる気配はなかった。チョコボが遊んでいるのだろうと、ルーが揶揄い混じりに笑っている。

「気に入られたか?」
「ね、おやつあげるから放してよぅ……」

 私はバケツからカラッカを2、3本摘まんでチョコボに向ける。だけどチョコボは私のフードを咥えたまま、いらないと言うように首を横に振った。足でザクザクと地面を蹴って、不満を表していた。
 遊んでいるわけではないのだと察したルーが見かねて、フードを引っ張り私を自分のところへ寄せようとしてくれた。だけどチョコボはフードを放さない。

「た、たすけて……」
「あ! こらー。お客さん捕まえたらダメじゃないか」

 ファームの仕事をしていた青年が気付いたらしく、助けに来てくれた。だけどまた首だけ振り返って見たチョコボは、意地でも放さないと言うように青年を睨みつけていた。
 青年が放せと怒りながら、チョコボを引き剥がそうとしてくれるけど、チョコボはビクともせず私のフードは咥えられたままだ。

「ごめんなさい、お客さん。このチョコボ、野生の迷いチョコボで、うちのエサに釣られて来たみたいなんだ。オーナーができないならずっとは置いておけないし、だからと言ってオーナー候補たちを蹴散らしちゃうしで……」

 エサ代だってタダじゃないんだぞ、一般のお客さん相手じゃなくてオーナー候補に媚びを売ったらどうだと、通じるのか分からない言葉で青年がチョコボを諭そうとしている。

「お姉さん、このチョコボに気に入られちゃったみたいなんだけど……」

 一般のお客さんじゃオーナーになってもらえないよと、青年はチョコボ相手にボヤく。

「洋服代とか、迷惑を掛けたお詫びは必ずするんで、少しのあいだ気の済むまで……」
「なるほど。ふむ」

 青年の提案など耳に届いていないのだろう、面白いと言いたげにルーが呟いた。変なこと言いださないよね?

「ルー? 飼えない。流石にチョコボは飼えないよ!」

 私は喉元の服をなんとか引っ張り返しながら頭を横に振る。

「家の裏に小さな厩舎でも――」
「ダメです!」

 建てようなんて思ってないくせに、笑って本当にやりそうな口ぶりだから困る。というか、ルーならできてしまう。ヒーリンはまだしも、エッジで飼うのは可哀想だよ。だけどルーがふっと鼻で笑った。

「……放してやってくれないか」

 私のフードを咥える嘴を撫でて、分かっていると仕方なさげにルーがチョコボに交渉し始めた。だけどチョコボはもっとフードを咥え込んだ。

「確かに今の住まいでは、お前を飼ってやれない。それに私も、彼女がいなくては困る。大切な人なのでな」

 チラッと私を見ながら、最後の優しい声で言われた言葉に気恥ずかしい居心地の悪さを感じる。

「そこで提案なんだが、彼女の名前でオーナーになってやってもいい」
「え?」
「忙しいからな。なるべく1、2ヶ月に1度は彼女を連れて来てやる」
「る、ルー?」
「お兄さん?」

 ちょ、チョコボにそんな交渉をしたって……。

「だがもちろん、無償で、というわけではない。我々にはなんのメリットもないからな。そこで、だ」

 ルーは青年のほうを見遣った。その顔は楽しそうであり、仕事の顔でもある。青年と、チョコボ相手にどうするんだろう。

「ここは、チョコボレースのチョコボたちも預かっているんだったな」
「そうだけど」
「調教はどうしている」
「調教師がくるよ。登録すれば、調教してもらえる。あとはジョッキーが自ら調教しに来たり。まさか」

 そのまさかだと、ルーはまたチョコボを向いた。青年が、野生にレースは厳しいと声を上げている。

「レースに出ろ。そして勝て。期間は、そうだな……」

 ルーは全く青年の言葉を聞いていないし、1人考えるように目線を横へ逸らした。そしてすぐにチョコボを見据えた。

「期間は1年。エサ代、調教代、その他費用の全てを出してやる。そのあいだに結果を出せ。その後、いい成績を引退の時期までキープできれば、お前が気に入った彼女にも会える。条件はそれだけだ。引退後も面倒を見てやろう。簡単だろう?」

 簡単じゃない。それ絶対、簡単じゃない。レースに出るだけならまだしも、勝てなんて。しかもレースに出場してるチョコボって、ある程度小さなころから慣らしていくものなんじゃ? 青年は野生には厳しいって言ったばかりだ。

「ルー、無茶だよ」
「私はこのチョコボと商談している。やるかどうかはこいつが決める。それに、いつまで経っても放してもらえないぞ?」
「それは嫌だけど……」

 だけどルーが話し終わった途端に、チョコボが私のフードを放してくれた。詰まり掛けてた息も解放される。
 チョコボが、やってやると言わんばかりに羽をバサバサさせて、何度も飛び跳ねていた。

「どうやら商談成立のようだな」
「うそ……。キミ、ほんとにやるの?」

 私が聞くと、チョコボはクエッ! と大きく鳴いた。

「頭もいいらしい。人を見る目もいい。気に入った。成績は確認しているからな。頑張りたまえ。キミ、契約書を」
「わ、分かった! いえ、分かりました! お兄さんたち何者?」
「ただの実業家だ。リクもおいで。リクの名前を書くんだから、キミが必要だ」
「え? あ、え?? が、頑張ってね?」

 私は残っていたカラッカの野菜を全部、やる気満々のこの子にあげて、不安になりながらルーの後ろを小走りで追いかけた。
 契約書の全てにしっかり目を通しているルーの横で、あの子がこの先本当に約束を守り続けるなんて、思いもしなかった。もちろん、ルーも私も、ちゃんと約束を守り続けた。






なす様より頂きました!
チョコボ相手に商談している社長です!
イメージそのままで、本当にありがとうございます!
得るための対価



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