「それはその、月が綺麗ですねとか……そういう類でですか?」
歩き疲れ、立ち寄ったカフェでこちらから出した他愛もない話題。
にもかかわらず、彼は視線を落として真面目に考え込んだ。
「……いざ考えようとするとなかなか思い浮かばないものですね」
困ったように笑う彼につられて私も笑う。
何て言葉が返ってくるのか期待をしていた身として、少し拍子抜けしてしまった。上手いことはぐらかされたとがっかり半分、照れ笑いする彼にトキメキ半分。
「ちなみに名前氏はどう訳しますか?」
「んー、そうだなぁ〜」
アイスティーに沈む氷をストローでかき回しながら、少し考える。
ふと見ると、彼とバッチリ目が合った。
「……だいすきーって訳すかなぁ」
そのままニッコリ笑ってみれば、瞬く間に染まる彼の頬。
「ッ……、そ、そのままの意味じゃないですか」
「えへ!そうだね!」
すき、すき、だいすき。直球ストレート。