「んん?何か欲しいものがあるの?」
いつものように優しく顔を覗き込んでくる先生の目が、いつも以上に大きく見えて思わず目を逸らした。
もうすぐ先生は、先生をやめてしまう。僕の部屋でこうして勉強を教えてもらうことも、会うこともできなくなってしまう。だからその前に言いたいことがあって、本当はそれを言うつもりだったけれど、せっかくここまで言えたのに僕の喉はもうカラカラで、言おうと思っていた言葉は喉の奥へと引っ込んでしまった。
「……先生と、遊びに行きたい」
その代わりに出てきた言葉に先生は驚いてぱちりと瞬きをすると、にっこりと微笑んで「いいよ」と言ってくれた。
あなたはおとなで、ぼくはこどもで、せんせいで、せいと。