私はクラスメイト

「ねぇ槙人くん、私もそのゲームやり始めたんだけどさ、まだ色々よく分かんなくて……良かったら少し教えてほしいんだけどいいかな」

休み時間、勇気を出して話しかけた相手は同じクラスの寺沢槙人くん。横向きに倒したスマホを持ち、片耳をイヤホンで覆ってゲーム画面をタップしていた槙人くんは、ピタリとその手を止めて私を見上げた。

「いいよ」
「あ、ありがとう!」

意中の人に話しかけたいが為に慣れないゲームを始めたなんて動機は不純だろうか。
槙人くんの前の机の人の席を借りて、槙人くんの正面に来るように座ると「とりあえず苗字さんがどこまで進んでるか見せてもらえるかな」と槙人くんがイヤホンを外しながら尋ねてきた。

「あっ、うん。えーと、どうぞ」
「……二章まで進んでるんだね」
「うん。でも合成とかチーム編成?とかイマイチよく分かんなくて……。今持ってるカードがね、これとこれと、あと……」

そうして必死に質問と説明を繰り返す時間は思っていたよりずっと短く、次の授業を知らせるチャイムの音にハッと我に帰らされた。廊下に出ていた生徒達も続々と教室に集まり、私の座っている席の持ち主もすぐに飛んで帰ってくる頃だろう。
夢中で話し込んでしまったことに「ご、ごめん!」と慌てて謝ると「いいよ、また後で話そう」なんて言われてしまって、心臓がドキリと跳ねた。

「うん、また後で」

不自然じゃなかっただろうか、クラスメイトとして上手く振る舞えただろうか。顔に集まった熱はバレてやしないだろうか。
自分の席に戻り、チラ、と槙人くんの方を盗み見ると、シャーペンの芯をカチカチと押し出す彼の姿がそこに見えた。

こうでもしなきゃ、視線が合うこともない彼