冬のアルベド

「運命の赤い糸ってあるでしょ。あれね、私達の間には繋がってないと思うの」
「は?」

寒空の中ふとこぼした言葉は白く溶け、もうそんな季節がやってきたのだと主張していた。
寒がりの彼は頭の先からつま先まで暖かそうな防寒服で身を包み、それでもなお鼻の先を赤くして、時折吹く冷たい風に身震いをしている。私はコートのポケットにかじかむ両手を突っ込みながら、地面に下ろしていた視線を少しだけ持ち上げ前を見た。

「多分さ、運命の相手ってお互い他にいて、赤い糸は二人ともそっちに繋がってると思うんだ」
「だから何?」
「それなのに不思議なもんだなーって。今佳樹くんの隣にいるのは私で、私の隣にいるのは佳樹くんなんだもん」
「…………」

二人分の足音は止まることなく夜道に響いている。見上げた空は曇り、星など見えない。そもそも晴れていたところで星の光など街灯に霞んで、ろくに見えることはないだろう。空を覆う雲があざ笑うように私達を見下ろしていた。

「じゃあ、俺らの間にあるのって何なわけ」

目も合わせずポツリとこぼされた言葉は、うっかりしてしまえば聞き漏らしてしまうほど非常に小さく、か細いものだった。
それでも私はそれを聞き逃すことなく耳で受け止め、ようやく彼の方へと首をもたげた。

「赤い糸じゃなくて……首輪?」
「犬じゃあるまいし」
「あはは、そうだね」

今はリードを握り合って、離さないでいるから。