マネキンは恋をしない

「私、槙人のこと何か勘違いしてたみたい」

最初は落ち着いててカッコイイと思ってたんだよね。周りの男子より大人びて見えてさ、同い年なのにすごいな、いいなって。誰かがヘマしても変に騒がないし、サッとフォローしてくれるときもあるし、結構優しいとこあって意外と頼れる奴じゃんって思ってた。身長もそこそこ高いし、顔も悪くない。ゲームばっかやってるとこはまぁこの際しょうがないとして、女子からもちょっと人気あったし、槙人みたいな人が彼氏だったらカッコイイかもって、自分も大人っぽくなれるかもーなんて思ってたわけ。違ったんだけどさ。

「槙人が何考えてるか全然わかんないよ」

私から告白して、付き合って彼氏になったのに槙人は今までと何も変わらなくて、私ばっかりいつも期待してさ、馬鹿みたいだよね。私ばっかりがカッコつけたがってて、ホント、馬鹿だった。
私、槙人のこと都合よく考えてたんだよ。でも槙人は全然思い通りにならなかった。だからイライラしたし、嫌だった。

「……ね、槙人。別れよう」

今、私は槙人から目を逸らしてるっていうのに、槙人はきっと今でも私を見下ろしているんだろうなってわかるよ。

「…………わかった」

ああ、結局この人は私が期待するような答えは出してくれなかったし、私の方こそ槙人の気持ちなんか本当はこれっぽっちも考えていなかった。
見上げると、槙人は静かにまばたきをして、相変わらず黙ったまま私を見ていた。

( 私達の好きはおんなじ好きじゃなかったね )