自販機の前で俺を見上げながら名前ちゃんが聞いた。陳列された色とりどりのラベルに一通り目を通し、温かいお茶を指して「これ」と告げると、名前ちゃんはすぐさま財布の中身を確認し、数百円を投入した。
「先に押していいよ」
「ありがとう」
奢りという意味なのであろう、彼女の気遣いを素直に受け止める。明るく点灯したボタンを押すと、ガコン、とペットボトルの落ちた音が響いた。
取り出し口からお茶のボトルを拾い上げて彼女に視線を戻すと、名前ちゃんと目が合った。
「名前ちゃんは?」
「あ、えーと、私はこれ!」
そう言って彼女が押したボタンの上にはカフェオレのスチールボトル。先ほどと同じように落下音がガタンと鳴り響き、飛び付くように名前ちゃんが取り出し口に手を突っ込んだ。
「あちち!」
想像よりも熱かったらしいボトルの熱に指先を踊らせる名前ちゃん。思わずその手からボトルを攫うと、名前ちゃんが「あ、ありがと……」と申し訳なさそうな顔を見せた。
「大丈夫?」
「うん、袖引っ張ってこうやって持つから……大丈夫!」
「そっか」
服の袖を指先まで伸ばした彼女にボトルを返すと、名前ちゃんは嬉しそうに、恥ずかしそうに、「これなら熱くない!」と笑った。
これ飲んだら、どこに行こうか