ストロベリーの刑

「龍臣くん何飲んでるの?」
「いちごオレです。なんか、新発売の商品で今人気らしくて、たまたま見かけたんで買ってみました」

ピンクとホワイトの二色で彩られたパッケージには真っ赤な苺のイラストがプリントされている。龍臣くんの手に似つかわしくない可愛らしい飲み物。見れば見るほどそのギャップに色々な気持ちが込み上げてくる。

「へぇ〜。気になるから一口だけちょーだい」
「い、いいですよ」

どうぞ、と渡されたパックには、龍臣くんが先程まで咥えていたストローが刺さっている。「甘さも控えめなので苗字さんでも飲めると思います」なんてニコニコしながらも、体はどこか落ち着かない様子でソワソワと揺れ動いていた。
この人はいまだに間接キス一つで照れているのか? それを探るべく、これみよがしにストローを持って口元へ傾けると、龍臣くんはピタリと動きを止め、私の唇とストローとの間にチラチラと視線を走らせた。
ちゅう、と吸い上げた薄ピンクの液体が口内へ滑り込み、喉を潤していく。甘すぎない苺とミルクのハーモニーがうんたらかんたら。私に食レポの技術は無い。

「美味しいね。ありがとー」
「い、いえ……」

どこかぎこちない笑顔でパックを受け取る龍臣くんに、少し意地悪してみたい気持ちが湧いてくる。待つこと数秒、龍臣くんが再びストローに口をつけたその時を見計らって、彼の腕に寄り添った。

「間接キスだね」
「ぷぁッは!」

噴き出した龍臣くんに「汚い」と大笑いしたら、真っ赤な顔で「苗字さんが、お、驚かすからじゃないですか!」と叫ばれた。
それが余計に可笑しくって愛しくって、たまらず引き寄せた彼の唇を奪ったら、苺とミルクの味がした。


まだ純情な君を処す