「苗字さん!」
「龍臣くん」

待ち合わせ場所に着いた途端、名前を呼ばれた。振り返れば目を輝かせた彼がいて、その様子に思わず頬が綻んだ。
ごめんね、待たせちゃった?と聞けば、「俺も今来たところですから」と少し恥ずかしそうに笑う。ただ会えただけでこの反応なのだから、初々しくて愛しさがこみ上げてくる。

「それじゃあ、行きましょうか」
「うん」
「苗字さん、どうぞ」

おっとこれは予想外。先ほどまでの子犬のようなオーラはどこへ行ったのやら。
目の前には差し出された手と、彼氏の顔になった龍臣くん。この人こういうことはサラッとできるんだよな、なんて驚きを顔には出さずに彼の手を取り歩き出すと、私よりずっと背の高い彼からの視線を感じた。

「なーに龍臣くん」
「いえ、なんでも」

あー、そういうことする。なんだなんだ可愛いな。キュンと鳴った胸の高鳴りを合図に、指を動かしてわずかな抵抗。握っていた手の力を少しだけ緩ませた彼の指の間に、するりと指を絡ませる。先ほどよりもずっと密着した手の平がずいぶん熱く感じた。

「あっ……!え、えへ……苗字さん……こ、これ……」
「恋人繋ぎだねぇ」
「こ!こいびと、つなぎ……」

口角を上げてぎこちなく笑いを作りながら赤面する彼の額に、瞬く間に汗が浮いていく。自分から手を繋ぐのは平気なくせに、こちらからのアクションにはすぐこれだ。私の彼氏クンは百面相が得意だな。まぁ、面白いし、そういうところも大好きなのだけれど。

「汗しまって」
「無茶言わないでください……」

恋する器官

覚悟しといてね
もっとドキドキさせたげる


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