ネコ科の王子様だと思っていたあの子は、実はとんでもないオオカミ男だった。

「っ……、治良くん、待って」

ギシリと軋むスプリングと、欲情の色が見える彼の瞳が空間を支配していく。私の手の平を閉じ込めるように重ねられた治良くんの手が大きくて、彼はしっかり男の子だったのだと思い知らされた。

「なんで?……ダメ?」
「ダメっていうか……いや、ダメでしょ」
「でも名前ちゃんも嫌じゃないでしょ?」

眼鏡の奥で細められた瞳の中に自信と期待が見える。逃げようにもガッチリと捕らえられた腕は抜けず、私を見下ろす治良くんからせめてもと視線を逸らすと、逃がさないとばかりに彼も顔を近付けて囁いてきた。

「ね、名前ちゃん」
「……っだから、こ……ゆのは」

まだ早いって。少なくとも私達には。
そう言いたいのに、私の首筋をくすぐる彼の前髪と吐息が邪魔をしてなかなか言わせてくれない。思わずキュッと握り返した手に治良くんも微かな反応を見せ、握り直すように一層押し当てられる手の平が熱くてたまらなかった。その熱に浮かされてしまう。ここで負けたらダメ。ダメなんだけど、でも。

「…………ばか」

君って悪い子

とりあえずさ
指をからめることから始めない?


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