「名前くん、こっちこっち!」

突然引かれた手に、体温に、俺の心臓が跳ねる。
無邪気に笑いながら前を進んでいく彼女に何て声を掛けたらいいのか分からない。彼女が何気なく触れる度にどうしようもなくかき乱されることを、今後どう伝えていけばいいのか分からない。俺よりも少し先に生まれたあなたに追いついて並んで歩くためには、どうしていけばいいのだろうか。

「待ってください」

今はこれだけしか言えないけれど。
柔く握り返した指先で彼女の細い指を包み込んだ。

秘める指先

いつかちゃんと云うから。
どうか今はこの手を繋いだままで。


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