君のためのアコール



「槙人くん、こんばんは。お邪魔してます」
「どうも」

前からずっとこんな関係だった。姉ちゃんの友達の名前さんは、昔からよく家に遊びに来ては俺にも挨拶をして、槙人くんにも、と言っては手土産をくれたり話しかけてきたりと何かと気を遣ってくれていた。だから俺もそれなりに彼女に応えて、まあ、良い距離感でいたと思う。

「槙人くん、この間はありがとうね!」
「……いえ」

名前さんのことが好きだと確信してからも、俺はこの距離をどうにかするつもりなんて無くて、いつも通りあなたを見てた。それで良いと思ったから。付き合いたいとか全く思わないわけじゃないけど。今のままが自分にとっても、名前さんにとっても心地良い距離だと思ったから。

「電くんもすごく喜んでくれたよ!」

嬉しそう。名前さんのそういう笑顔が好きだ。かわいいと思う。ただただ、好きだ。

「よかったですね」


そう、それなら、目の届く距離のままで

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