やわらかい棘
「東雲、悪いけどこれ、アイツに渡しといて」
「うん、わかった」
次の授業を知らせるチャイムの音。あなたから差し出されたCDケースには大きな傷が入っていた。古いシングルアルバム、私の知らない曲のタイトル。少なくとも今は絶対に埋まらない差。私と、理穂ちゃんと、名前くんとの間の距離。
「理穂ちゃん、さっき名前くんがこれ渡しといてって。来てたよ」
「あぁ、ありがと」
CDケースの傷を指でなぞる理穂ちゃんの慈しむような表情があまりに綺麗で、私はこの友達のことが本当に好きだと思って、同時に、悲しくなるほど敵わないと思い知らされた。
どっちも、なんて都合のいいこと言わない