半宵のささめごと



真夜中、既に皆が寝静まった頃。常夜灯だけが灯る薄暗い部屋の中に横並びで敷かれた布団は、片方のみが二人分の膨らみを孕んでいた。

「…………」
「…………」

拳一つ分の隙間を空けて一つの布団の中で寄り添い合う私と龍臣くんの間には沈黙が続き、触れ合うわけでもなく、お互いの吐息と視線だけが至近距離で交わっていた。薄暗さにもすっかり目が慣れ、瞬きをする龍臣くんの瞳がよく見える。これが私の部屋であったなら、いつもなら構わず抱きついてキスをしているところだ。しかし今日は違う。ここは私の部屋ではなく、彼の、龍臣くんの部屋なのだ。彼氏の実家にお泊りというだけでも緊張するのに、彼の弟や両親が同じ屋根の下で眠っているこの状況で欲望のまま乱れるわけにもいかない。そう思っているのは龍臣くんも同じなようで、彼もまた手を出すわけでもなく、ただ黙って私の様子をうかがい続けていた。

「……龍臣くん」
「……なんですか?」
「……ん」

ちょっとだけ、しよ。そういう意味で彼の指に自分の指をそっと絡め、瞼を閉じて唇を軽くとがらせると、龍臣くんの喉がゴクリと鳴った音が聞こえた。つんと控えめに当たった唇の先を追いかけて、私の方からもついばむようにキスをする。ちゅっと小さなリップノイズが耳に響く度、甘く痺れるような心地良い幸福感が脳髄を刺激した。次第に体を引き寄せ脚を絡ませ合い、情欲のかき立てられるままにお互いの唇を貪る。龍臣くんの歯列をゆっくりとなぞると、一瞬びくりと震えた彼が私の腰を抱き寄せ、主張をはじめた自身のモノを押し当てながら、私の腰やお尻を満遍なく愛でるように撫で回しはじめた。

「っん…、ぅ」
「ぁ……」

どうしよう、完全にスイッチが入ってしまった。大好きな龍臣くんの香りでいっぱいの布団の中で本人と愛情たっぷりのキスをして興奮しないわけがない。私はもう、龍臣くんに直接触れてほしくて堪らなかった。

「…苗字さん……。声、我慢できますか?」

どうやら龍臣くんも耐え切れないらしい。頷くと龍臣くんの温かい手がシャツの下から滑り込まされ、私の乳房を優しく包み込むとやわやわと揉んで胸の感触を楽しみはじめた。かと思えば、既にぷっくりと膨れ上がった蕾をふいに指ではじいてみたり摘んだりと意地悪に弄くられ、いやらしい愛撫に私の全身がビクビクと震え、たまらない気持ちにさせられた。静かにしなければと思えば思うほど背徳感が快感をより濃密にそそらせ、手で口を塞いでも嬌声が漏れてしまいそうな程の刺激が私の背筋をゾクゾクと痺れさせる。壊れてしまいそうだ。必死に声を押し殺す私のシャツを捲り上げた龍臣くんが先端にかぶりつき、敏感になったソコをねろねろと舌で転がして私の体をさらに火照らせる。ちゅうちゅうと吸い上げる音が布団の中から耳まで届き、どうしょうもない程の快感に全身からじわじわと汗が噴き出してくるのを感じた。

「ぅ……んんっ……!」
「声、我慢してください…」
「…っ、ん………ぁ」

そう言って数分間乳房をねぶり続ける龍臣くん。敏感になったところを執拗に責め続けられた私の限界は思っていたよりすぐにやってきた。たまらず自らズボンに手をかけ「もう挿れてほしい」のアピールを彼に送ると、それに気付いた龍臣くんは、一度体を起こして私のシャツもズボンも下着さえも何もかも奪い取り、自身の服も一気に脱ぎ捨てて私の上にのしかかった。龍臣くんが私の秘部へと手を伸ばしたとき、そこは既に洪水の如くびちゃびちゃに濡れて愛液を滴らせていた。

「苗字さん…すごい濡れてますね…」
「は、ぁ……、たつ、おみくん……も、早く……欲しい……」
「っ…!」

その瞬間何かが弾けたように起き上がった龍臣くんが、いつの間にやら枕元に忍ばせていたらしい小さな箱を手に取った。なんとなく分かってたけど、やっぱり最初からそのつもりだったんだね。瞬く間にそれを開封し装着した龍臣くんは私を見下ろすと、開かれた脚の間に体をねじ込み、先端を入り口へヌルヌルと数回擦り付けた後、愛液で濡らした熱い肉棒をずっぷりと挿入した。身悶える私の様子を見ながらゆっくりと進み、奥へ当たった感触を確かめるように数回軽くノックをすると、今度は引いて…また押し付ける。龍臣くんが腰を動かす度に結合部からぬちゅぬちゅといやらしい音が出て、それを意識するほどどうしようもなく濡れてしまう。もっと激しく突いてほしい。もどかしくて自然と浮き動く私の腰を龍臣くんがガッチリと掴みこみ、ひくつく蜜壷の中を緩やかにかき回して私を一度目の絶頂に導いた。

「っは……あっぁ…ぅ……」
「イっちゃいました? …苗字さんの中すごい気持ちよくて……俺も…すぐイきそうです……」
「んっ……い、ぃよ……もっと動いて……」
「っ……! そんな風に言われたら……我慢できなくなっちゃいますよ…!」

撫でるような優しい動きだった出し入れがわずかに激しさを増し、ずっちゅずっちゅと一層淫らな水音が布団の中に響いた。嬌声が漏れてしまわぬよう必死に堪えるのが精一杯な私に、龍臣くんが思い切り口付けて唇をねぶった。ゾクゾクと背筋が震え、ねだるように龍臣くんの背中に腕を回すと、汗の浮いた肌同士がぺたりと吸い付くように重なる。だんだん早くなるストロークに私の中もきゅうきゅうとときめくような締め付けを返して龍臣くんを求めた。

「苗字さっ……っあ、イく…! うっ……!」

一際膨張したモノから白濁液が勢い良く吐き出され、私の最奥でゴムの薄膜越しにドクドクと脈打つ感覚が伝わってきた。龍臣くんは最後の一滴まで出し切ると、暫し余韻に浸ってからずるりと竿を抜き出し、液でたっぷり膨らんだゴムを外した。

「……あの、苗字さん……俺、まだ収まりつかなさそうで……」
「…………いいよ?」

つまり、第二ラウンド。私達は背徳感に包まれながらまた絡みつくようなキスをして抱き合った。本当はもう控えたほうがいいことは分かってる。でも、私だってまだ物足りないの。もっと乱してほしくてたまらないんだよ。だからお願い、もう一回しよ。


でもバレないように、静かにね。

BACK