いけないことでも



時計の針がカチコチと音を立てている。
静かな部屋の中に響くのはそれぐらいで、私達はベッドの上で抱き合いながら静かに見つめ合っていた。
私の上に覆い被さった龍臣くんを挑発するようにマキシ丈のワンピースはずり上がり、龍臣くんのために太ももを晒して見せている。遠慮がちに太ももへ手を伸ばした彼は何か言いたげで、私は思わず吹き出してしまいそうになるのをグッと堪えて口を開いた。

「龍臣くん、もっと見たい?」
「う……」
「いいんだよ? 見ても、触っても…」

内緒話をするように囁いて、ゆっくりと動かした手で彼の視線を誘導する。ワンピースを胸元まで上げ、装いの無い胸を龍臣くんの前に曝け出すと、龍臣くんがゴクリと生唾を飲み込む音がした。

「……やらし、」

含みを持った笑みで呟いた彼は大きく口を開くと、先端の蕾をはぷりと遠慮なく咥えこんだ。顔を押し付けて双丘の柔らかさを堪能しながら、既にぴんと立ち上がったそれを口内でたっぷりこね回す。思わず声を漏らして身をよじると、逃さないとばかりに腰に腕を回されて固定された。舌全体で刺激していた乳首を今度はちゅっと吸われ、甘い刺激に体が痺れていく。

「あっ……は、ぁ…」
「気持ち良いですか?」
「う…んっ、……もっとして……」

素直に強請る私の言葉を合図に龍臣くんにもさらに火がついた。口は再び先端をねぶり、空いていた手はもう片方の胸を下から上へすくい上げるように揉みしだいて異なる刺激を同時に与えはじめる。きゅんと疼く刺激についつい腰をうねらせると、それに合わせて龍臣くんも腰に回していた腕を滑らせ、大きな手のひらで私の背中や腰を撫でつけるようにまさぐった。

「あっ…ぁ、きもち、ぃ……ぁあっ!」
「んふー…っ、ふぅ、ふんン……」
「や…ぁん! 龍臣く…っ、んっ、」

龍臣くんに愛されて善がる私の声と、龍臣くんの鼻から抜けるくぐもった声。混ざり合う体温と衣擦れの音。僅かに軋むベッド。そのどれもが興奮を加速させ、お互いの下腹部を知らずのうちに刺激していた。夢中で胸にむしゃぶりつく龍臣くんの頭を抱き寄せ、耳やうなじをさり気なく指でくすぐると、彼の体がぴくりと震えて反応を見せた。

「はぁっ…はぁ…………苗字さん……」

ふと上げられた顔は赤く染まっており、額に汗を浮かばせている。微笑み返すと噛み付くように唇を奪われ、すぐに滑り込まされた舌で私の舌はすくい取られて滅茶苦茶にかき回された。興奮が抑えきれないと言わんばかりのキス。暴れる舌を唇で挟んで上下に動かしながら吸い上げると、猛獣のようだった彼はたちまち飼い犬へと姿を変えた。

「む! ぅ、う……」
「んっ……ふぅ…んン……」
「っぷぁ、…はぁ、苗字さん…っ、俺、もう……」

申し訳なさそうな顔をする龍臣くんに触れるだけのキスをし、自ら下着に手をかけて「いいよ」と囁くと、彼はすぐさま一度起き上がって自分の下着を取り払い、私の下着を両手で優しく脱がした。そして膝裏へ手が滑り込み、脚を広げさせられる。恥ずかしがる暇もなく露わにされたそこは一目見てわかる程に濡れそぼり、彼の愛を待ちわびていた。

「あっ…やだ……」
「っ、苗字さん……!」

濡れたところへ、涎を垂らした肉棒がキスをした。入り口を探してぐいぐいと押し当てる龍臣くんはまるで我慢のきかない子供のように見える。

「あん……ダメだよ龍臣くん、ゴムつけないと」
「あ……す、すみません……」

慌てて枕元の棚へ手を伸した龍臣くんは小箱の中へ視線を落とすと面食らった様子で「えっ」と声を上げた。

「どしたの?」
「あの、苗字さん、これもう入ってないですよ」
「あ……そういえばこの間ので使い切っちゃったんだったね」
「う……」

それじゃあ今日はできないのか?と明らかに肩を落とした彼にすり寄り、胸にキスを落としながら「ごめんね」と謝ると、龍臣くんは気落ちしながらも「いいですよ…」と困ったような笑顔を見せてベッドの上へ仰向けに倒れ込んだ。そんな顔しないで。まだ収まりつかないのは私も同じだよ、龍臣くん。
ちゅ、ちゅとリップノイズを立てながら龍臣くんの体へキスを落として覆い被さるように跨ると、龍臣くんは驚いた顔を見せて私を見つめた。

「えっ? 苗字さん?」
「ん?」
「その、…………はいっちゃい、ますよ……」

ぬるりと擦り付けられた感触に敏感に反応する彼のモノは相変わらず元気で、ヌルヌルと愛液を塗り付けるように腰を揺らすたび、硬さを増していった。私は意地悪でいやらしい大人なので、とぼけた顔で「んー?」と微笑みながら、少しずつ体勢を変えて彼を刺激していく。ぬるり、ぬるりと愛液を零しながら逞しい竿を這い上がり、カリ首を超えて一番上まで到達したとき。

「…………」
「……んふ」

動きを止めた私を龍臣くんが見つめる。それはいけないと葛藤する龍臣くんの乳首を爪で軽く引っ掻いたら、入り口にピッタリと口付けられていた先っぽが、ほんの少し前に進んだ。

「苗字……さん……」
「なぁに? 龍臣くん……」

真っ赤に染まりきった龍臣くんの顔を見て、ニヤリと笑んだ。まるで気付いていないとばかりにとぼけて返事をすると、龍臣くんの腰がゆっくりと慎重に持ち上がってきた。

「うっ……!」
「……んッ、…ふふ……」

上体を起こし、龍臣くんのお腹へ軽く手をつく。座りこんだ私のアソコは完全に龍臣くんを奥まで咥えこんでいた。避妊具をつけていては味わいきれない龍臣くんの形が、熱が、直接伝わっている。結合部を凝視して口を開けっ放しの龍臣くんに向かって「……はいっちゃったね」といたずらに言った途端、私の中で彼のモノが一層大きくなった。

「あっ! はぁ、ン…!」
「ズルいですよ…っ!」

弾けたように腰を突き上げはじめた龍臣くんの胸に倒れ込む。それでも動かし続ける彼の体は熱く、歯を食いしばって快感の波に耐える龍臣くんが愛おしくて、溶かされてしまいそうだと思った。上も下も生々しく繋がった肉体は離れることを知らず、きっとこのまま夜が更けていくのだろう。朝になったら私は貴方の腕の中で目覚めて、相変わらず恥ずかしがる貴方に向かって「おはよう」と言うのでしょうね。

「龍臣くん…、っ、好き……!」
「俺も、好きです……っ!」

だからどうか召し上がれ。

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