「勿論。世界樹の踏破なんて、わくわくするじゃない」
ここはミズガルズ図書館にある一室。心配そうに見つめる彼女に、緑髪の女性はにっこりと笑ってみせた。
「世界樹の迷宮の探索って危ないんでしょ?なのに一人だけで行くなんて…」
「大丈夫よ、ギルドメンバーを募るから。無謀な事はしない」
よもぎは彼女を安心させるために笑うと、机の上に散らばる紙を丁寧にたたみ、封筒にしまう。その様子を見ていた彼女は、首を傾げながら問いかける。
「あれ?外部の人の手紙?」
「
彼氏かと思った。彼女はそう笑うと、よもぎは少し頬を膨らませ、そんなんじゃないと拗ねてみせた。そんな拗ねた友人を宥めるべく、よもぎの傍に寄る。その時ちらりと見えた便箋。そこには綺麗な文字で「
あの兄妹と初めて会ったあの日から、何年過ぎただろう。よもぎは目線を下ろし、ふと思考を巡らしてみる。あの日は、そう、確か
「
その日 よもぎは相談を受けていた。ミズガルズと深い関わりがある国 カレドニアの幼き姫様がミズガルズに留学してきた頃の話。姫様とファフニール、そして相談者のフラヴィオはとても仲が良かった。そんな仲良し3人組が魔物に襲われ、無事助かったあの日。フラヴィオが言うには、あの日 ファフニールの姿が変わったのだ、と。
「よもぎ姉、俺…俺っ!すごく怖くてっ…!
3人が魔物に襲われて。アリアンナ姫も、フラヴィオも死を覚悟したという。しかし、ファフニールは最後まで二人を守ろうと二人の前に立った。そして魔物の爪がファフニールを捉えた、その時。ファフニールの姿が変わり、魔物を倒したという。
肝心のアリアンナとファフニールはその時の話を覚えていなかった。覚えているのは、「嘘つきフラヴィオ」という名を持つフラヴィオだけ。みんなが疑うのは不思議ではない。…それでも。
よもぎに訴えるフラヴィオの姿は、嘘じゃないような気がして。よもぎは笑みを浮かべ 屈むと、フラヴィオと視線を合わす。涙を浮かべたフラヴィオの瞳が瞬く。
「
そう、そうだ。フラヴィオの必死の訴えを軽くあしらった大人達。普段は困った顔をして話を聞いていたのに、この時だけはまともに取り合わなかった。まるで、この件を有耶無耶にしたいとばかりに。
「よもぎ姉…!」
「私、調べてみる。ファフニール君の事、心配だから」
フラヴィオの頭を優しく撫でるよもぎに、フラヴィオは安心したように笑った。あの日から笑う事を忘れたかのように、暗い顔をしていたフラヴィオ。安心させられた事に、よもぎはほっと息をついた。
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