始まり

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「よもぎ、本当に行くの?」

「勿論。世界樹の踏破なんて、わくわくするじゃない」


ここはミズガルズ図書館にある一室。心配そうに見つめる彼女に、緑髪の女性はにっこりと笑ってみせた。

──彼女の名は蓬。叡智の殿堂と呼ばれるミズガルズ図書館の調査隊の一員である。ソードマンと名乗り 剣の修行をして約数年。先輩達の口添えもあり、「タルシスという街の伝承の調査」という任につく事ができた。


「世界樹の迷宮の探索って危ないんでしょ?なのに一人だけで行くなんて…」

「大丈夫よ、ギルドメンバーを募るから。無謀な事はしない」


よもぎは彼女を安心させるために笑うと、机の上に散らばる紙を丁寧にたたみ、封筒にしまう。その様子を見ていた彼女は、首を傾げながら問いかける。


「あれ?外部の人の手紙?」

え?ああ、うん。友人なの」


彼氏かと思った。彼女はそう笑うと、よもぎは少し頬を膨らませ、そんなんじゃないと拗ねてみせた。そんな拗ねた友人を宥めるべく、よもぎの傍に寄る。その時ちらりと見えた便箋。そこには綺麗な文字で「──ローレル」と書かれていた。




あの兄妹と初めて会ったあの日から、何年過ぎただろう。よもぎは目線を下ろし、ふと思考を巡らしてみる。あの日は、そう、確か──



──え?ファフニール君が?」


その日 よもぎは相談を受けていた。ミズガルズと深い関わりがある国 カレドニアの幼き姫様がミズガルズに留学してきた頃の話。姫様とファフニール、そして相談者のフラヴィオはとても仲が良かった。そんな仲良し3人組が魔物に襲われ、無事助かったあの日。フラヴィオが言うには、あの日 ファフニールの姿が変わったのだ、と。


「よもぎ姉、俺…俺っ!すごく怖くてっ…!


──でも、誰も信じてくれないんだ」


3人が魔物に襲われて。アリアンナ姫も、フラヴィオも死を覚悟したという。しかし、ファフニールは最後まで二人を守ろうと二人の前に立った。そして魔物の爪がファフニールを捉えた、その時。ファフニールの姿が変わり、魔物を倒したという。


──正直、信じられない話だった。


肝心のアリアンナとファフニールはその時の話を覚えていなかった。覚えているのは、「嘘つきフラヴィオ」という名を持つフラヴィオだけ。みんなが疑うのは不思議ではない。…それでも。

よもぎに訴えるフラヴィオの姿は、嘘じゃないような気がして。よもぎは笑みを浮かべ 屈むと、フラヴィオと視線を合わす。涙を浮かべたフラヴィオの瞳が瞬く。


──うん。分かった、信じるよ。教授達の対応、少しおかしかったもんね」


そう、そうだ。フラヴィオの必死の訴えを軽くあしらった大人達。普段は困った顔をして話を聞いていたのに、この時だけはまともに取り合わなかった。まるで、この件を有耶無耶にしたいとばかりに。


「よもぎ姉…!」

「私、調べてみる。ファフニール君の事、心配だから」


フラヴィオの頭を優しく撫でるよもぎに、フラヴィオは安心したように笑った。あの日から笑う事を忘れたかのように、暗い顔をしていたフラヴィオ。安心させられた事に、よもぎはほっと息をついた。


──しかし、フラヴィオの話が本当なら、