ヒーロー!お姫様はあそこよ
彼はね、とても優しくて強いけど、とてもとても弱い人なの。
いつだか、彼女は沢田綱吉をそう表した。
初めて私が実際に話したのは一度だけ。
だけどその一度で彼は、とても慈愛に満ちた、太陽の様な人なのだとわかった。
これが全てを包みこみ、調和するボンゴレの大空なんだと、私は息を呑まずにはいられなかった。
それほど沢田綱吉という人間は温かい光の様な人間なのだと思っていたのに…
どうして……?
私はとあるマフィアの使用人で、令嬢の付き人だった。
彼女はとても優しい人で、私のような使用人にも友人の様に接してくれた。
私は彼女に尊敬、友愛、忠誠いずれの感情を抱いていた。
彼女は私にとって生きる希望の様なものだった。そして彼女は沢田綱吉の婚約者だった。
沢田綱吉ならば彼女も幸せになれる、そう思っていた。
それなのに。
この耳に遠くから聞こえるのは紛れもなく彼女の悲鳴で。
この目に映るのは紛れもなく彼女の婚約者である沢田綱吉で。
「どうして……? 」
私は一使用人。
私くらい死んでしまっても誰も困らないのに。
私より、彼女の方が優先されるべきで。
私が彼女より優先されるなんてことあってはならないのだ。
「俺には彼女より君が必要なんだよ」
ヒーロー!お姫さまはあそこよ!
(酷く歪んだ笑顔の彼の瞳はどことなく怯えているように見えて。
遠くで聞こえていた彼女の悲鳴が聞こえなくなっていたことどうでもよくなってしまった。
今までわからなかった彼女の言葉の意味がわかった気がした。
確かに彼は…)
明日葉様に提出