⚠︎ATTENTION
・このお話はハイキュー!の怪異パロです。全然排球をしている彼らはいません。人外です。
・筆者の趣味趣向性癖盛り盛りです。
・ちなみに筆者は白鳥沢戦までしか見れてません。怒らないで。
・彼らの年齢も定まってないので、容姿も切り替わります。許して。
・ちょっとグロ描写や、首絞め描写あります。
・めちゃくちゃ捏造あります。
・かなり自我のある主人公です。
・無理な人はここから逃げてください。
・どうぞお先に
[newpage]
Q.自分とは何ですか?
A.今見れば分かるだろうが、運のないド底辺女だよ
昔から私には運がない。
何もない所ですっ転び、体育の授業では投げたボールが生徒指導の先生の顔面へ吸い込まれ、公園で遊んでいたら毎回不審者に声をかけられ、学芸会では天井のライトが自分の真横に落ちてきた(その時の自分は木役だったので枝を持って戦慄していた)。
極めつけには、元旦に引くくじでは大凶しか出ない。
初めはドジだなぁ!と笑っていた友人も年々酷くなっていくこの惨状に真剣な顔をして「歩く厄災」という有難くもないあだ名をつけてきたし、家族には毎年厄払いに連れて行かれる。改善の兆しは未だ見えないが。
私もそのままでは良くないと思い、色々試しては見た。
こんなに運がないのは前世はきっと大罪人だったのだろう。は?前世の自分ふざけるなよ。尻拭いくらい自分でしろ。心の中ではそうぶちぶち文句を言いながらも、率先して人が嫌がる仕事を進んでした。仕事大歓迎!(fa⚫︎k me)
正直、この試みも今となっては良くなかったと思うが。進んで仕事をするということは、人から押し付けられるし頼まれると断れなくなってしまったのである。
つまり、今私が夕焼けに包まれる住宅街にある電話ボックスにいるのも身から出た錆ということなのだろうか。
「な訳ないだろクソが……」
カメラを構えながら受話器を手に取る。もちろん、録画はスタートしてある。頼んできた先輩に先ほどの独り言が届いて欲しいためだ。
18歳になるまで不運に見舞われつつも無事生き残れた私は心機一転で東京の大学へ進学した。このまま地元で鬱々と暮らすより良いと思ったのだが、家族は「地元でこんなとんでもない目に合ってるのに東京!?」と心配して引き留めてきた。心機一転もあったが都会に憧れていた私は説得に説得を重ね、段ボール一箱分のお守りを持っていくことで許された。業者かよ。
とは言えあの時はこんなにいらんだろ、と思っていたお守りが身につけると1日が終わる頃には千切れているため日替わりお守りとして活用させてもらっている。はじめて千切れたのを見た時は悲鳴をあげてしまった。
そうして始まった大学生活。
校内で行われていたサークルへの勧誘で、高校の先輩と出くわしてしまった。
「……香山?お前香山だよな?」
「…げっ、黒尾先輩」
すぐに背を向けて戻ろうとしたが、肩をがっちりと掴まれてぐるっと体を元の向きへ戻された。
「久しぶりなのにそんな態度……先輩悲しいなぁ」
「いたたたた、力強すぎだろこの人」
「あーあ、傷ついちゃったなぁ!」
「嘘つけ!」
黒尾鉄朗。
高校の時に入った生徒会でお世話になった人だ。
別に生徒会も私は入りたかったわけじゃなかったが、人手が足りなくて…!と友人に泣きつかれて断ることができず引き受けた。運気を上げるためと思えば苦ではなかった。黒尾先輩には、お世話になったのはなったし優しかったし嫌いではないのだが、いかんせん胡散臭いしダル絡みしてくるしあまり良い思い出がない。職場の上司、みたいな感覚である。
なんで入ったの?と聞かれた時は、運が良くなるために生徒会に入ったんですよね、と言うとこの人は椅子からひっくり返って笑い転げた。
人の悩みを笑いやがって、変な頭してるくせに。
「で、用はないんですよね?ね?なら私はここらで」
「あるに決まってるじゃん!いやぁ、可愛がっていた後輩に再会できるなんて俺はツイてるよなぁ」
「たすけて」
そうして『オカルトサークル』と看板がかけられた教室へドナドナ連行された。目を擦って何度見ても『オカルトサークル』と書いてある。
「………胡散臭いとは思ってたけど、まさか[[rb:本当 > マジ]]だとは」
「おいどういう意味だ」
ジトっと見てくる黒尾先輩の視線から目を逸らす。
先輩はその部室をまるで我が家かのように「ただいま〜」と言いながら入る。私が入らずにいると「おい、入りなさいよ」と声がかかったためしぶしぶ続いて入る。
中には誰も居ない代わりに、狭い部室の中には[[rb:夥 > おびた]]しい数の本が積み重なっている。本は床も占領しており、唯一のスペースはソファとパソコンデスクに付属しているゲームチェアくらいか。
「ソファでもどこでも座っていいぞ」
お茶出すから待ってろ、と黒尾先輩は器用に本を避けてお茶を汲みに行く。なんだかいつのまにがこの部屋に入ってしまったし、お茶まで飲むことになっている。のらりくらりしている彼のペースにすっかり乗せられてしまった。もうこれは逃げれないなと思いソファに座る。
待つ間、暇なので積み重なっている本を一冊手に取ってみる。
『恐怖!貴方の街の都市伝説〜忍び寄る死の音が聞こえるか〜』
「………」
先輩、悩みあんのかな。
そのくらいなら聞いてあげようかな。
あまりにも怪しすぎる本を見てつい遠い目をしてしまった。しかもよくよく見ればこの部屋にある本は全て[[rb:その手 > ・・・]]のモノだった。ここまでくると恐ろしさよりよく集めたなという気持ちが勝ってしまう。
コミカルで子供向けに描かれている本から歴史的観点から見た本など、様々あるが全て都市伝説や怪談などのホラージャンルである。
高校の時にお世話になった人がこの手のモノにのめり込んでしまっているのを知るのはなんとも言えない気持ちになる。できれば知りたくなかった。
「待たせたな〜……え、どうした?」
「お[[rb:労 > いたわし]]しや先輩…」
「お前が失礼なコトを考えてんのは分かったよ」
片手でお茶を乗せたお盆を持ち、片手で頭をチョップしてくる。
「言っとくけど俺もこのサークルに入ったのは人が足りないって知り合いの先輩に言われただけだからな」
「別にそのまま廃部になれば良かったんじゃないですか?なるべくしてなった滅びでしょ」
「滅びに対抗したかったんじゃね」
お茶を差し出して来た先輩は私の横に座る。え、横?ちょっと横はやめてくださいよ。
「だってソファ一つだし」
「ゲーミングチェア座ってくださいよ」
「分からないかなぁ、久しぶりに可愛がってた後輩に会えてはしゃいじゃってんの先輩は」
「はしゃいでも可愛いくありませんよ」
「ははは、こやつめ」
「いたたたた」
頭がギシギシと軋むくらいに掴まれる。割れそうだからやめて欲しい。先輩は掴むのをやめるとお茶を飲んで話し出す。
「実はな、協力して欲しいことがあってな」
「嫌な予感…」
「オカルトサークルはな、その名の通りオカルティックな活動をしていてな。まぁ例えば都市伝説の発祥を調べたり、今流行っている怪談を調べたり、曰く付きの住宅へ訪問したり」
「なんで廃部なってないんだこのサークル。滅びるべきだろ」
「活動してないサークルは廃部になっちまうんだ。だから動かなきゃいけないんだけど…」
すると黒尾先輩は大きなため息を吐きこちらを見る。
対する私は猛烈に嫌な予感がしていた。
「俺これから忙しくなるからサークル活動できそうになくてな〜、誰かやってくれそうな優しい[[rb:後輩 > ヒト]]を探してたんだよ。な、どっかサークル入る予定ないなら入ってくれね?頼む!俺も先輩から引き受けたのに廃部になんてできないんだよ」
ガバッと頭を下げてくる先輩の特徴的な頭を見つめながら私は絶望していた。こ、この人、私が断れないのを承知で頼み事を…!
「人には向き不向きがあってですね…」
だが私も負けじと反論はする。他のサークルなら入っていただろう。だがよりによってオカルトサークル。1番私が入ってはならないサークルではないか?運がただでさえ悪い私がオカルトサークルなんて入ったら次の日のニュースに乗ること間違いなし。絶対変死体になって見つかる。
「頼む!サークル活動として遠征に行って部費で旅行すればいいし、オカルトって言ってもほら!ちょっぴり怖いだけだから!」
「怖い目に遭うんじゃないですかぁ!」
「あ、ヤベ。遭わない遭わない!な?」
ヤベって聞こえたヤベって聞こえた!
言ってない言ってない!
そう私たちは押し問答続けていたが、黒尾先輩がついにプライドもクソもない土下座をしてきたので誰かがこの現場を見たらどうするんだ!と私が折れた。
「はぁ…分かりました」
「ほんっとに助かる!じゃあこの入部届けにサインな」
「用意周到なのがムカつく…!」
入部届けを奪い取り、サインをする。
「……はい、できましたよサイン」
「ありがとうな。[[rb:香山リカ > ・・・・]]、これから[[rb:も > ・]]よろしくな」
ニィ、と意地が悪い猫のような笑みを浮かべる黒尾先輩を見て私は今日1番のため息をついた。やっぱり私には運がない。
「で、私は具体的に何をすれば良いんですか」
「そりゃ、オカルトサークルがやる事は一つだろ。検証だよ検証」
「1人かくれんぼやれとか言ったら退部します」
「じゃあ今回のは1人かくれんぼじゃないから大丈夫だな」
本当に意地が悪い。ギロリと睨みつけるが先輩には痛くも痒くもないのだろう。実際、ずっとニヤニヤと上機嫌だ。
「先輩も人数合わせで誘われたんでしょう?なら適当で良いじゃないですか」
「初めは誘われたからだったけど、後から面白くなってネ。意外と面白いぞ〜、ほらこういうのとか」
そう言って2つの記事を私に渡してくる。
記事の題名は『[[rb:猫ヶ丘 > ねこがおか]]団地で凄惨な事件か。電話ボックスで一体何が』と書いてある。
「これ、近所の…」
「そう、大学からも近い猫ヶ丘団地。当時はこの事件めちゃくちゃ有名だったみたいだぜ」
1枚目の記事に目を走らせる。
週刊誌の記事のようだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『[[rb:猫ヶ丘 > ねこがおか]]団地で凄惨な事件か。電話ボックスで一体何が』
昨夜未明、猫ヶ丘団地の電話ボックスにて男性3名の遺体が発見された。遺体はあまりにも損傷状態が激しく、警察は他殺の線で捜査を進めるようだ。目撃者によると3人の遺体は電話ボックス内に折り畳まれるようにして重なっていたらしく、「人の行いとは思えない。恐ろしい」と住民達は怯えた様子を見せていた。
電話ボックスの外も中も血で染まっており、その光景は現実のものとは思えなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…電話ボックス内で死亡。しかも男性3人が?」
「それ、捜査で全員20代の男性って事が発覚したらしい。3人も居て全員殺されるなんてなぁ」
「………折り畳まれるように重なっていた」
あまり気持ちの良い記事ではない。
どれほどの殺意、あるいは狂気があればそのような犯行に及べるのか。そしてこの犯行に及ぶにはそれなりの体格も必要だ。かなり屈強な人物が犯人なのか?
そんな事を考えながら2枚目の記事を読み始める。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『[[rb:猫ヶ丘 > ねこがおか]]団地に根付く都市伝説!』
こんにちは。
ライターのAである。
本日は東京都E区猫ヶ丘団地の都市伝説『公衆電話のケンマくん』についてご紹介しよう。
『公衆電話のケンマくん』は猫ヶ丘団地の公衆電話から電話がかかってくると、かけられた人物はその日の内にケンマくんに殺されるというものだ。
ケンマくんは全国に広がるあの有名なメリーさんの前から広まっていたことからメリーさんの[[rb:原型 > プロトタイプ]]と言われる事もある。メリーさんと違う点は、こちらからケンマくんへ電話をかけることができるという事だ。
だが、かけるのはやめておいた方がいいだろう。なぜなら、かけれる電話はただ一つ。猫ヶ丘団地の公衆電話だけであり、かけた者は皆悲惨な姿となって発見されているのだから─────。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「オカルト雑誌ですか?これ」
「嗚呼、かなり人気のあるオカルト雑誌らしい。今も発行してるって」
「もしかしてですけど、1枚目の記事の犯人が『公衆電話のケンマくん』だととでも言うんですか?」
「そうだったらオカルトサークル的には面白いな」
笑えない。
確かに1枚目の時間は現実味がなく、人がやったとも思えないし思いたくない事件ではあった。だが、それをやったのが都市伝説である、というのもあり得ない。
それなら人間が犯人の方がマシだ。
この2枚の記事がなんだと言うのだろう。
そう思って黒尾先輩を見ると、彼はニッタリとこちらを[[rb:嗤 > わら]]って[[rb:視 > み]]つめていた。
ゾッと背筋が凍り、息が止まる。
しかし瞬きをすると彼の表情はいつものニヤニヤとした笑みに戻っていた。………見間違い、だろうか。
「お前には、この公衆電話に行って欲しい」
「…はぁ!?私に死ねって言ってんですか!?」
「そんなわけないだろ、お前のことは可愛い後輩だと思ってんだから。この電話ボックスに電話をかけに行ってる人間は何人もいるし、それでも今でもピンピンしているやつもいる。別に絶対かけろとは言ってないし、その必要もない。電話ボックスに行って動画を撮ってくれればそれでいい」
電話かけてくれたらそれはそれで嬉しいけどな!と言う先輩に絶句する。仮にも殺人事件があった電話ボックス。つまり、心霊スポットだ。
「む、無理無理無理無理」
「深夜に行けって言ってる訳じゃないよ。朝でも昼でもいい。それに、ここは過去に殺人事件があっただけの住宅街だ。そんな所いくらでもあるし、子供達だって通学路としてこの電話ボックスを横切ってる。近くに交番だってあるぞ」
「なんでそんなプレゼンしてくるんですかぁ…」
プレゼンを聞いていると、そこまで危なくなさそうにも思えてきた。夜じゃなくていいし、電話もかけなくていい。なんなら動画を撮るだけ。それで終わるなら、まぁ……。
「〜〜〜分かりました。撮るだけですからね!」
「お前には助かりっぱなしだよ。ありがとうな」
「はぁ〜〜〜…」
先輩が頭を撫でてくるがそんなのでは絆されやしない。ぺっ、と先輩の手を弾く。
おぉ怖、と先輩が[[rb:戯 > おど]]けた様子を見せる。この人は本当……そんな訳ないくせに。
「とりあえず今日の講義が4限までなので、その後に行きます。夜には行きませんし電話もかけませんからね!」
「それでいいそれでいい」
「失礼しますっ!」
黒尾は大きな音を立ててドアを閉めた後輩をニタニタと見つめていた。あの後輩は叩けば鳴るから面白く、[[rb:弄 > いじ]]りがいある。彼女は黒尾にとってお気に入りの一つである。
だから、気に入ってるヤツには気に入ってるヤツと仲良くして欲しい。
ソファに置いてあった記事を拾い上げる。
男性3人の殺害。電話ボックス内に折り畳まれた死体。メリーさんの[[rb:原型 > プロトタイプ]]。かけられた者は死ぬ。
『公衆電話のケンマくん』
「さて…どうなるかねぇ」
ニタニタ、ニヤニヤ。
男は[[rb:嗤 > わら]]い、ソファに身体を沈ませ記事を投げ捨てた。何、ただ3人の[[rb:畏れ知らず > 馬鹿]]が死んだ[[rb:だけ > ・・]]の記事だ。役割を終えれば必要ない。
面白くなる確証はあった。
否、なってくれないと困る。
なってくれなければ。
「アイツが殺しちゃうかもしれないからな」
男にとってもお気に入りが減るのは本意ではないため、なんとかなれ〜と後輩に届きもしない[[rb:応援 > エール]]を送るのだった。
──────────────────
先輩の心、後輩知らず。
後輩の心、先輩知らず。
電話ボックスの前まで来た私は、中々入れずに居た。
一見、至って普通の町にある電話ボックスのように見える。普通に子供も横切って行ったし、パトロール終わりのお巡りさんが交番に入って行ったのも見た。だから、今なら助けを呼ぶ事だってできる。
でも怖いものは怖い。
だってこの中で人死んでんだよ…?マヂ無理…。
しかし、このままだと日が暮れてしまう。段々と暗くなって来ており、[[rb:黄昏時 > ・・・]]と呼ばれる時間にもなってきた。カラスの急かすような鳴き声が聞こえる。
「……ど、どうにかなれ〜〜!!」
そう叫びながら私は電話ボックスへ飛び込む。犬を散歩中のお爺さんが怪訝そうに私を見てきたが、残念ながら構っている暇はない。
電話ボックスは未だに使われているようだ。確か事件は5年前に起こったそうだし、もう気にする人はいないのかも知れない。『ミカとナツはズッ友!』『ここは呪われる』『暇な方はこちらに電話!080……』など、電話ボックス内には多くの落書きがしてある。電話の横には電話帳があったので中をペラペラと巡ると、あるページで手が止まる。
「……」
そこには『ケンマくん』への電話番号が書いてあった。大方、都市伝説を面白がったものが書いたのであろう。
「…いや、電話はしない」
好奇心はあるが、圧倒的恐怖がソレを上回る。
大体かけられて殺されるなら可哀想だが、かけて殺されるのは自業自得では?かけられた『ケンマくん』に少し同情までしてしまう。かけられてキレたのかもしれないな、なんて考えながら公衆電話内を撮影していく。
確か、こういう心霊系を撮影する時は実況をするのがセオリーだったか。撮るだけとは言ったものの、本当に撮っただけで先輩は満足するだろうか?
「……公衆電話内は、至って普通ですね〜。入ったら息苦しくなるとか悪寒が走るとか、そういうのはありません」
ぐるぐるとゆっくり公衆電話内を回って1人で喋る。誰かに外から見られたら恥ずかしいので正直早く終わりたい。
「『ケンマくん』の電話番号が電話帳に書いてありました。電話はもちろんしませーん」
カァ、カァ。
カラスの鳴く声がする。
カァ、カァ。
「天井にも何もありませんね。はい、普通の公衆電話でした。これでいいでしょ、[[rb:黒尾先輩 > ・・・・]]」
ピタ。
カラスの鳴き声が止んだ。
外を見ると、さっきまで鳴いていたはずなのにカラスが一羽も見当たらない。かなり近くで鳴いていたと思うのだが。私が不思議に思っていると。
にゃーん。
「猫?」
三毛猫が電話ボックスの横を通っていく。
その金色の目が、暗闇に光る。
「…待って、おかしい」
暗闇に光るのはおかしい。
だって、今は夕方だったはずだ。なのに、なんで。
「なんで夜になってるの……?」
段々と暗くなるのではなく、まるで電気を消したかのように。
空が、暗くなっていた。
ジリリリリリリリ!!
「ヒッ!?」
人っこ1人も居なくなってしまった、静かな住宅街でけたたましい音が鳴り響く。それは電話ボックスの受話器から鳴り響いていた。
そんな事起こるわけがないのに。電話ボックスとは本来かけるためのものだ。かけられる筈がない、かけれる筈がない。
思わずへたり込む。先ほどから電話ボックスのドアは強く押しているが開かない。
どれだけ無視をしても電話は鳴り止むどころかどんどん音が大きくなっている。耳を塞いでも、あまりにも大きい音は遮断できない。
「やめて…やめてよぅ…」
あぁ、やっぱり私は運が悪い。
先輩のお願いなんて引き受けなければ良かった。
ふと、オカルト雑誌の記事を思い出す。
───『公衆電話のケンマくん』は猫ヶ丘団地の公衆電話から電話がかかってくると、かけられた人物はその日の内にケンマくんに殺される。
公衆電話から電話がかかる、じゃなくて公衆電話にかかってきた場合はどうすればいいの?その場合も死ぬの?
「ッあ」
触ってないのに、動いてないのに。
受話器が勝手に落ち、音が鳴り止んだ。ぷらぷらと本体と紐で繋がっている受話器からは、ザーーーと砂嵐のような音が鳴っている。
「ッはぁ、はぁ」
呼吸が浅くなる。涙が滲んで、視界がぼやける。
とりあえずここから出なければと思い、電話ボックスのドアを必死に押す。押して、叩いて───。
「───ねぇ」
学生の声にも低い男性の声にも聞こえるその声が、耳に届く。ヒュッ、と息が止まる。砂嵐に混じって、その声が聞こえてくる。
「───そんなに必死にドアなんて押して、楽しい?」
くすくす、[[rb:嗤 > わら]]い滲ませた質問に涙が抑えきれなくなった。自分の行動がバレている、一体どこから見てる?
それとも、まさか
「───じゃあ、出してあげようか」
中に
恐る恐る振り返ると、いつの間にかそこには。
包丁を持ち、ニタリとこちらを見つめる男が立っていた。
「ッッ!!」
「ほら、せーの」
男がドアを押すと先ほどまで何をしても開かなかったドアがすんなりと開いて、私は地面に倒れ込んだ。
「っは、っは」
急いで立ち上がり、暗くなった住宅街を走る。
どの家にも、電気はついていない。
「なんで!どうして!?」
こんなに暗いのに、つけないなんてあり得ない。
あり得ないことが起きている。
私の走る足音と、後ろを歩く男の足音が街に響く。
男は歩いている筈なのに、いつ振り返って見ても私との距離が一向に離れない。それが私をどんどんと焦らす。
この猫ヶ丘から出れば、もしかすれば助かるかも知れない。そう思いながら[[rb:我武者羅 > がむしゃら]]に走っていた私だが、前に現れた電話ボックスを見て思わず足を止めてしまった。
「───は、え、なんで」
どうして、[[rb:電話ボックス > 開始地点]]に戻ってるの?
「あーあ、もう終わり?」
ビクッと体を震わせて、振り返るとそこには男が居た。
「今回もつまんなかったな…」
爪をいじりながら、包丁片手に近づいてくる男─ここまでくるともうケンマくんでしかないだろう─を見て座り込んでしまう。
あの包丁で刺されて、ぐちゃぐちゃの血だらけにされて、電話ボックスで折り畳まれた死体として発見されるのだろうか。
いくら運が悪いとはいえ、そりゃあないだろ。
ケンマくんは猫のように目を細めて[[rb:嗤 > わら]]い、私の前でしゃがみ込んだ。
「もう走れないの?ゲーム終わり?」
………はぁ?ゲームってなんだよ。
こんなに必死になって逃げてる私を見て、ゲーム?
昔から運が悪くても必死に生きて、運が悪いなら善い事をしようと人のためにも働いて。こんなに頑張ってきたのに。
ゲーム[[rb:ごとき > ・・・]]で死ぬの?私。
グツグツと、感情が煮えたぎる。そんな事を知らないケンマくんは言葉を続ける。
「じゃあ、最期の言葉とか言っとく?」
クルクルと包丁を回して、彼が可笑しそうに言う。
最期、最期なんだ。
最期なら。
[[rb:善い事 > ・・・]]なんてしなくていいよね、どうせ最期だもん。
ケンマくんの首を掴んで彼に掴み掛かる。
驚いて包丁を手から落とした彼は、私によって地面に押し付けられた。
首を絞める手に力を込めるが、彼の表情は変わらない。
「……なんのつもり?それ、なんの意味もないよ」
「ムカつくから殺そうとしてるの」
「はぁ?」
意味が分からないという顔の彼にお構いなしに私は言葉を続ける。彼の意見なんて正直関係ない。私が話したいから話す。
「今までさぁ、私運が悪いの。何度も危ない目に遭ったし、何度もツイてなくて人生やめたくなったけど。折れるなんてムカつくし嫌だから、少しでも運が良くなるように頑張って善行重ねてたの」
ギリギリ、と彼の首に入れる力を強める。
苦しそうではなさそうだが、不快そうに顔を[[rb:顰 > しか]]めた彼が私の手首を信じられないくらい強い力で握ってくる。ミシミシ言ってるし、めちゃくちゃ痛いのでヒビが入ってるのかも知れない。
だが、アドレナリンだろうか。
それとも死を間近にした火事場の馬鹿力だろうか。
私も緩めるどころかどんどん彼の首に指を食い込ませる。首に爪が食い込んで、血が出ている。
「それでもさぁ、こんな目に遭うなら。もう最期くらい善い事なんてしなくてもいいなぁって。だから」
「お前を死んででも殺してやろうって思ったワケ」
彼が目を見開く。
幽霊だか妖怪だか怪異だか分かんないヤツでも感情ってあるんだ。最期に知らなくてもいいこと知っちゃったかもしれない。
「殺してやるよ、お前のこと。ムカつく、本当にムカつく。お前がこれからのうのうとこんなクソみたいなゲームを続けるのがムカつく」
「絶対、殺してやるからな」
彼の首を指で突き破ってやろうともっと力をこめようとすると、首に衝撃が走った。
いつの間にか、彼が私の手首から手を離している。
「っくそ………」
最後にこちらに手を伸ばすケンマくんを捉えて、私の視界は暗転した。
─────────────────────
ゆらゆら、ゆらゆら。
誰かに抱き抱えられているかのような、包まれた安心感を感じる。[[rb:所謂 > いわゆる]]抱っこというやつだろうか、これは。小学生の時の学芸会事件ぶりかな。あの時は、お母さんに泣きついて────。
待て、じゃあこれは誰だ?
パチッと目を開けてまず目に入ったのが赤のジャージ。
そう、先ほどまで追いかけまわされていた赤。
ギギギッと軋む首をあげ、私を抱える人物を見上げる。
「あ、起きた」
「……う、うわああああああああ!?!?」
反射で体が後退するが、すぐに壁にぶつかる。
私がいるのは、あの忌々しい電話ボックスだった。
やっぱり殺すなら電話ボックスという拘りでもあるのだろうか。
「…どんなにお前が場所変えたって、お前を殺してやるから。そこにお前の死体も並ぶだけだよ」
拳を握りしめて、ケンマくんを睨みつけると。
ポポポッ。
彼はその頬を桃色に染め、うっとりと目を蕩けさせた。
「──は?」
「ふ、ふふふ、やっぱり。アンタ、相変わらずその態度なんだ。ふふふ」
コロコロと笑う彼を見て、理解が及ばない。
人を人とも思わない、面白がるような嗤いではなく。
綻ぶような、笑顔。
? ??? な、なに?何これ?
さっきまで己を殺そうとしてきた相手が急に花咲く笑顔を見せてきた。もしかして、今が殺すチャンスなのか?
それとも、笑顔で油断させてグサッとか……。
私がハテナを飛ばしていると、彼が手首をそっと掴んで撫でる。
「…ごめんね、ヒビ、入っちゃったかも」
「何…急に変わり身なんてして…気でも狂った?」
「───うん、狂ったのかも。だってこんなに楽しくて、面白いの初めて。初めてなんだよね、俺を殺そうとしてきた人間。大体はみんな腰抜かして死ぬか、逃げるのを諦めて死ぬ。だけど、アンタだけは俺を殺そうとしてきた」
何十年もの間で、たった1人の女が。
彼に反抗するという手段を取った。
彼の首を絞めて、彼に血を流させて。
彼を、その目で貫いた。
その時の彼女の顔はお世辞にも涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、普通なら綺麗とは言えないだろう。
だが、彼は綺麗だと思った。
カッコいい、とも思った。
怖い、とも思った
怪異である彼が、恐れた異端。
彼女との出会いは彼にとって何度も同じゲームを繰り返していた時に起こった初めての[[rb:出来事 > イベント]]。
初めての[[rb:出来事 > イベント]]なら、攻略方法も分からないし慎重に進めなきゃ。
「俺、アンタのせいで楽しくなっちゃった。初めて人間に殺されるかも知れないって、ワクワクして。アンタのこと、気に入っちゃった。ねぇ、だから」
金色の目が、私を貫く。
その奥にはドロドロとした、感情が渦巻いている。
「俺を殺そうとした責任、取ってよ」
「………………取るわけないだろ!!!」
私はケンマくんの頭を叩いて、電話ボックスを飛び出した。
「いったァ〜〜〜〜……」
あの後、急いで家に飛んで帰った。
いつもならしないチェーンまでかけて、毛布にくるまった。チェーンだけでは足りないと思い、いつアイツが来ても反撃できるように包丁を枕元に忍ばせた。
朝まで寝れずに震えて待ったが、アイツは来なかった。
猫ヶ丘団地が行動範囲なのだろうか。今度からはあそこに近寄らないでおこう。
大学が午前は空きコマだったので、病院に行った。
手首はやっぱりヒビが入っていたらしい。ヒビが入ったのに力を入れたからか、治療にかかる期間が少し長かった。不幸中の幸いなのは、ヒビが入っていたのは利き手じゃない方だった。
お大事に、と言われ診察室を出る。死なないだけマシだったのかもしれない。包丁を持った男から逃れたのは、運が良かったのだろう。
いや、まず追いかけられること自体がいい訳がない。
大学に行ったら先輩に訴えてやる。退部だ退部!あんなサークル私が滅ぼしてやる!
大学に着いて真っ先に向かった『オカルトサークル』。
そのドアを思いっきり開けて、退部を宣言しようとした。した筈、だった。
「黒尾先輩!!私、こんな部活や…め………」
「おはよう、その言葉は聞かなかったことにするぞ。なんと喜ばしいことに、このサークルに新入部員が入りマシタ〜。良かったな、同級生だぞ」
本が積み重なって汚い部室、そのソファで座っている黒尾先輩の前に立っている毛先が金の黒髪をを一つに括った彼は。
「…初めまして、孤爪研磨です。アンタなら下の名前で呼んでいいよ」
「な、な、な………!」
「お、じゃあ俺も研磨って呼ぼうかな〜」
「……ちょっと」
ジロリと黒尾先輩を見つめるのは髪色は少し変わっているが、間違いない。昨夜。私とデスバトルを繰り広げたケンマくんであった。
「…ヤ」
あまりの情報量。
あまりの悪夢に私は。
「ヤダーーーーーーー!!」
部室を飛び出した。
「あ〜あ、出ていっちゃった。オマエ、怖がらせ過ぎたんじゃないの?」
「怖がらせた?まさか」
部屋にあるゲーミングチェアに我が物顔で座り、[[rb:孤爪研磨 > ケンマくん]]はニタリと笑う。
「怖がらせてきたのは向こうだよ。俺はその責任を取って欲しいだけ」
「…っは、本当に」
面白くなったなぁ。
先輩は飛び出していった後輩の心配なんて1ミリもせず、彼女が出て行ったドアを見つめ続ける昔馴染みを見て心底愉快になった。
己がけしかけた出来事であったが、こんなに予想外の展開になるとは!だから人間は面白い。
だが精神的負担は大きかっただろう後輩に、先輩である男は今度何か奢ってやろうと決めた。彼は気配りのできる先輩なので。
「…あ、でも」
「ん?」
「腕、ヒビ入れちゃったから。大丈夫かな」
「オ、オマエなぁ…!」
たった今それを聞いて、高い料理屋に連れていく事が決定した。
飛び出して行った彼女はまだ知らない。
これから多くの災難と恐ろしい出来事が彼女の身に降りかかる事を。
そして、まさかそれを解決していくのが。
殺し合いをした彼と共にということも。
彼女はまだ、何も知らない。
[chapter:公衆電話のケンマくん、解決]
FUn malheur ne vient jamais seul
(不幸が起きるときは、1つだけではない、不幸なできごとは続く、悪いことは重なる)
[[rb:香山リカ > 可哀想な子]]
本作の主人公。
普通の女子大学生。
しかし、運が悪い。とても悪い。悪いのは前世の自分のせいでは?Jesus me!と中指立てながら徳を積むヤベェ女ではある。
死ぬんなら別に徳なんて積まなくてヨシッ!という思考回路に至り、ケンマくんをぶち殺そうとするから本当にヤベェメンタルしてる。ただ、これから彼女を取り巻く怪異達の方がヤバいので相対してヤバく無くなっていく。
別によくある夢小説の怪異に好かれやすい体質、とかそういうのはない。ただただ、[[rb:研磨 > ケンマ]]の癖に刺さっただけである。刺さってなかったら殺されていた。
これからも不運は降りかかってくるゾ!頑張れ!
ちなみに香山リカというのはメリーさんの元ネタであるリカちゃん人形の本名。
[[rb:孤爪研磨 > ケンマくん]]
彼の元ネタはメリーさん。
電話ボックスの男性3人ぶち殺したのもケンマくん。なんならもっと殺してるし、電話かけてあちこち行って殺し回ってた。都市伝説試しに来る陽キャとか配信者も問答無用でぶち殺してる。そういう時はうわ、俺の嫌いなタイプ来たって思ってる。
デスバトル時は金黒フォームだったが、大学に侵入するには目立つかなと思い黒金フォームになっている。
「俺を殺そうとした責任取ってね♡」と最悪の月姫を繰り広げたやべぇ男。メンタルはアルクェイド。
これからヤバくも頼れる男にはなる。
[[rb:黒尾鉄朗 > 先輩]]
この人の言動でえ?って思った人いたら嬉しい。
なんでケンマくんに電話かけた人が今もピンピンしてること知ってるんだろうね。まるでケンマくんに教えてもらったみたいだね。時々、人のこと人間って呼んで人外ムーブしている。
そもそも、知り合いの先輩は本当にいるのか。
オカルトサークル自体存在するのか。
全てが謎。
───ねぇ、知ってる?うっかり入ってしまうと出れない世界があるらしいよ。……そうそう![[rb:裏世界 > バックルーム]]!怖いよね〜。最近行方不明者多いし、もしかして〜?…あはは!冗談だよ!ところでさ〜、駅前にできたカフェでも行かな…………え、みゆき?どこに行ったの?
───聞いた?あの噂。そうそう、[[rb:比丘尼 > びくに]]湖で人魚が居るって話!でさ、写真を撮ったって人がいてね。で、その写真がネットで上がってて……………あれ、おかしいな。さっきまで映ってたのに。
───いつも綺麗な花をありがとうね。私ここの花が本当に好きなの。いい匂いもするし、家で飾ってるのよ。一体肥料は何を使っているの?…企業秘密?も〜!しょうがないわね。
───八尺様。八尺様。どうか、お鎮まりください。お鎮まりください。どうか、あの子を連れて行かないでください。
───やばっ、寝過ごしちゃった!?あ〜、明日仕事なのに。こんな田舎の駅なんて東京にあったっけ…。え〜っと、きさらぎ駅……?
次回、『[[rb:welcome to the backrooms > 裏世界へようこそ]]』