キャラスト

キャラクター詳細
遺瓏埠「玉鯉薬房」の店主・鯉杏。彼女は紛れもなく漢方を専門とする医者であるが、彼女が研究する漢方は先進的な分野にある。
漢方とは大前提、ゆっくりと効果が出るものだ。そのため、患者の身体の負担も少なく、お年寄りにはありがたい薬となる。けれど、鯉杏の場合はその長所をそのままに、より即効性のある漢方を生み出すことを目標としている。
研究には数多の失敗がつきものであり、鯉杏も例外なく幾度となく失敗と反省を繰り返した。時に、漢方の材料をひっくり返す癇癪を起したこともあるが、決して投げ出すことはなかった。
その努力の甲斐あってか、少しずつではあるものの、その成果は出てきているようだ。
「オエェ…鯉杏、せっかく漢方を改良するんなら、味もどうにかしてくれよぉ…」
苦々しい顔をする嘉明を前に、鯉杏はそれはもうにっこりといい笑顔を浮かべた。
「良薬は口に苦しって言うでしょ〜?それだけ効くってことだから我慢してね〜」



キャラクターストーリー1
ストーリー解放条件 好感度Lv.2後に解放

鯉杏は沈玉の谷の山奥で育った両親の間に生まれ、ごく普通に愛情を受け、普通の少女として育つはずだった。
だが鯉杏が2歳になる頃、彼女の異常性が浮き彫りとなる事件が発生する。それは事件というには何の前触れもなく、物騒なものではなかったかもしれないが、この家族にとっては紛れもなく「事件」であった。ただ一人、鯉杏だけがそのことを認識しないままに。
ある日、両親と鯉杏の三人で出かけたところ、生まれたばかりの子ウサギが鴉に狙われ、生きたまま食われている光景を鯉杏は目にすることになる。母親が慌てて鯉杏の目を覆って抱きしめるも、鯉杏はそれを拒否するように母親の手を叩いた。驚いた両親の目に映ったのは、今までになく瞳をキラキラと輝かせる鯉杏の姿だった。
「かわいい!ねぇ、かわいいねぇ!」
絶句する両親に向かって鯉杏は興奮した様子で可愛い可愛いと連呼した。
初めて目にする愛娘の異常性に両親は戸惑いつつも、子供にありがちな無垢な残虐性の一種と思い、これを一時的なものだろうと受け止めようとした。
けれど、両親の願いも虚しく、日を追うごとに鯉杏の猟奇と狂気は拍車をかけ、苦しむ姿が可愛いとウサギの両耳を掴み上げる程度だったものから、じわじわと首を絞めてみたり、水に溺れる様をじーっと観察してみたりと、5つを迎えても一向に収まる気配はなかった。
鯉杏の異常性に先に限界が来たのは、優しかったはずの父親だった。
「いっそ…お前も俺の手で……」
だが、その手が目前に伸びようとも鯉杏はにっこりと見つめたまま、逃げる気配は微塵も感じられなかった。それが恐ろしくなった父は逃げるように鯉杏から背を向けた。
鯉杏は動かなくなった母親を見て、まだ動くものを探しに向かうのだった。



キャラクターストーリー2
ストーリー解放条件 好感度Lv.3後に解放

家から出た鯉杏が向かった先は、とある洞窟だった。そこに何か目的があったわけではない。ただ、何となく向かった先がそこだったというだけである。
けれど、その偶然は鯉杏にとって幸運だったと言わざるを得ない。洞窟の先にいたのは美しい鯉たちで、この時鯉杏は意図せずして仙縁に恵まれたのだから。
洞窟へと迷い込んで来た幼子を捕まえた浮錦仙人は、鯉杏の要領を得ない独特な話からおおよその流れを察し、鯉杏を引き取ることを決めた。鯉杏が周りを泳ぐ鯉を欲しがったこともあり、世話役として数匹を与え、鯉杏を見守った。破天荒な鯉杏に驚かされることも多かったが、浮錦はそれも鯉杏の個性としてのびのびと育ててくれたのだ。
鯉杏が7つになった頃、いつものように森で動物と遊んでいると、同じくらいの歳ごろの少年に声をかけられた。今まで両親と浮錦という限られた者としか出会ってこなかった鯉杏は、初めて見る自分たち以外の人間に大いに興味を示す。
「人間?ちっさい!あなた誰?名前は!」
鯉杏の質問攻めに少年は押され気味で、一つずつ答えようとするも、遠くで響く太鼓の音に時間がないことに気づく。
「!まずい、もう始まっちまう!ほら、オマエもいくぞ!案内してやるから!」
少年は鯉杏の手を引いて沈玉の谷を駆けていく。向かった先には更に多くの人がいて、賑わっており、その光景に鯉杏は圧倒された。
「こんなに人間がいるなんて!」
「?そりゃいるだろ。おかしな奴だな。ほら、もう始まるぜ」
特等席だという丘から、少年が指を差す先には、獣の被り物をして踊る人間の姿があった。沈玉の谷の名物、獣舞劇との出会いである。無言で真剣に劇を鑑賞する少年の横顔を、鯉杏はじっと見つめていた。少年の名は嘉明。それが劇よりも何よりも、鯉杏の心に深く刻まれた。



キャラクターストーリー3
ストーリー解放条件 好感度Lv.4後に解放

嘉明と出会ったその日、鯉杏は帰るなり、浮錦にあったことを矢継ぎ早に報告した。たくさんの人間への興味から、自分もあそこに行きたいという鯉杏の要望を潮時と考え、浮錦は少しずつ鯉杏を人間社会へと馴染ませることに決める。鯉杏が行動範囲を広げ、人里へと近づくと、嘉明とよく会うようになり、その交流は嘉明の両親とも広がるようになる。
嘉明の両親は、鯉杏が変わった子であることにも薄々気づいていたものの、嘉明に対する鯉杏の態度などから見守ることに決めたようで、比較的穏やかに進んでいく。そんな折、嘉明の母親が病死し、落ち込む嘉明に鯉杏は不思議そうな顔をして尋ねた。
「ねぇ、嘉明。なんで泣くの?なにが悲しいの?なんでそんなにつらそうなの?」
死が何かを理解していない鯉杏に、嘉明はぐっと涙を堪えながら口を開いた。
「なんでって、もう会えないんだぞ。死ぬって、そういうことなんだ。もう二度と、お袋にオレたちは会えないんだ…」
鯉杏はじぃっと嘉明を見つめた。
「どうして死んだの?」
「病気で…治らなくて、死んじまった」
もう聞かないでくれと嘉明が口にしようとした途端、鯉杏は嘉明の両手を取って立ち上がる。驚く嘉明の目に映ったのは、瞳をキラキラと輝かせた鯉杏の姿だった。
「じゃあわたし、お医者さんになる!ビョーキを治せばいいんでしょ?わたしがぜんぶ治してあげる!だから泣かないで、嘉明!」
それは鯉杏の無垢な狂気の延長であった。けれども、確かにその狂気は嘉明という少年を救いたいという思いやりでもあったのだ。こうして鯉杏の将来は僅か一瞬にして決まるのだった。



キャラクターストーリー4
ストーリー解放条件 好感度Lv.5後に解放

医者になると決意した鯉杏の行動は恐ろしいほどに早かった。沈玉の谷唯一の医療機関である診療所を訪れ、宜清に弟子入りを頼んだ。まだ子供であることもあり、宜清は最初は取り合わなかったものの、あまりにも鯉杏の意志は固く、結果的に殆ど強引に宜清が折れる形で弟子入りを果たした。
漢方医である宜清について漢方を学び出すと、鯉杏はあることに気づく。漢方は患者の負担こそ少ないものの、ゆっくりと効いていくもので、治療に根気がいるのだ。嘉明の母親が治療の甲斐もなく亡くなってしまったのは、漢方に即効性がなかったからではないかと疑った鯉杏は、自身の医学の方向性を転換させることに決める。
「老いぼれ爺さん。わたし、即効性のある漢方を作ってみる!」
「何を言っておる、この馬鹿弟子は…」
鯉杏の型破りともいえる発想に宜清は当初、すぐに根を上げるものを信じて疑わなかった。だが、宜清の予想に反し、幾度となく失敗と得られない成果を前にしても、鯉杏が諦めることはなかった。もちろん、八つ当たりは幾度となくされたものであったが、その研究が二年、三年、とそれ以上続くと、宜清も鯉杏の評価を改めざるを得なかった。
「これは…本当に医学の確信に迫るやもしれぬ…」
そんなこと、やはり本人の前では口が裂けても言えないが。鯉杏の努力はこうして少しずつ実を成しているのであった。



キャラクターストーリー5
ストーリー解放条件 好感度Lv.5後に解放

これまでから考えるに、鯉杏の行動原理の多くには「嘉明」の存在がある。その証拠に、嘉明の家出に伴い住居を遺瓏埠へと移し、嘉明が鏢師になると鏢局の医療担当にまでなり、嘉明の仕事について玉鯉薬房を留守にすることだって珍しくない。何故そこまで嘉明に尽くすのか、他ならぬ嘉明が問うたことがある。それに対し、鯉杏はきょとんとした顔で、まるで当然のようにこう答えた。
「だって、そこに嘉明がいるから」
その答えの意味は嘉明にはさっぱり分からなかったが、鯉杏はそれこそが答えと言うように満足げに微笑みを浮かべる。
もっと詳しくその独特な感性を紐解くのであれば、その感情は正に「興味」だろう。鯉杏は嘉明という人間そのものに多くの「興味」と「関心」を寄せているのだ。
それは、恋や愛という言葉では、生温いほどに。
「だから嘉明。もっと見せて、もっと教えて。君のこと!」
「お、おう…?」
そうやってよく分からないまま頷いたのが嘉明の運の尽きだろう。鯉杏はいっそ俯瞰的に、超越するように、嘉明という観察対象に狂気の慈愛を一心に注ぐのであった。



神の目
ストーリー解放条件 好感度Lv.6後に解放

ある日、嘉明が商人を護送中に悪名高い盗賊に遭遇し、嘉明は荷物と商人を救うため、一人残り戦い、見事勝利するも大怪我を負う。
その治療を鯉杏がしている最中、商人たちが荷物の確認をしたところ、運搬していた荷物に被害はなかったどころか、神の目が一つ多く、それを感謝の印として嘉明に渡した。
嘉明の葛藤を静かに見守っていた鯉杏だったが、丁寧に布で覆われた感謝状を前に、漸く神の目を慎重に受け取った嘉明の姿がどこか誇らしく、自然と笑みが零れ出た。
その夜のことだった。一人机に向かい、嘉明のカルテを広げていると、いつの間にか机の上に赤く煌めく神の目が静かに鎮座していた。
神の眼差しが鯉杏にそそがれたように、鯉杏の眼差しもまた、たった一人に向けられている。そう、その視線はずっとずっと、昔から。いっそ直向きなその思いは、狂気というには純粋すぎる色をしていた。
その次の日、鯉杏の腰に着けられた神の目を目撃した嘉明は、それはもう驚いた声を上げた。
「オマエも神の目を受け取ったのか!?」
そんな嘉明を前に、鯉杏はお揃いと言って力いっぱい抱き着くのであった。