「あ、また鉄くずイジってる。」 「……」 ガチャガチャと船の整備をしている彼女。 ニコニコと言ってみれば、あからさまにジトリと視線だけが向けられた。 「ねぇ、そんなに油にまみれて楽しい?」 「…」 「…真っ黒じゃん。懲りないねぇ。」 「…」 手を止めて俺に静かな視線を向けてくる兎原。 俺は相変わらず笑顔を崩さない。 そんな俺をたまに、ちょっと悲しい目で見てくるのに、俺は気付かない。 ふりをする。 …分からないからさ。お前がそんな顔をする理由が。 だから、俺には笑うことしかできなくて。 そしてお前はこんな俺に相変わらず、ただ黙って、見つめている。 側にいるけど、 俺と君の間に存在する 見えない数センチ。