1話。近くて遠い君。

「あ、また鉄くずイジってる。」





「……」








ガチャガチャと船の整備をしている彼女。





ニコニコと言ってみれば、あからさまにジトリと視線だけが向けられた。








「ねぇ、そんなに油にまみれて楽しい?」





「…」









「…真っ黒じゃん。懲りないねぇ。」









「…」
手を止めて俺に静かな視線を向けてくる兎原。
俺は相変わらず笑顔を崩さない。
そんな俺をたまに、ちょっと悲しい目で見てくるのに、俺は気付かない。

ふりをする。
…分からないからさ。お前がそんな顔をする理由が。
だから、俺には笑うことしかできなくて。
そしてお前はこんな俺に相変わらず、ただ黙って、見つめている。
側にいるけど、
俺と君の間に存在する
見えない数センチ。

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