惚れたもん負け。
ある日突然だった。
「あなたに一目惚れしました!好きです!」
その赤い髪に負けず赤みを帯びた顔は幼さもあるけど真剣な眼差しでそう告げられた日。名前も分からないけれど嘘偽りのない言葉だと感じとれたのは真っ直ぐ見つめる彼の瞳だろうか。
「…え、と…」
「こら!困っとるやないかい!」
ばしん、と頭を叩いたのは大阪では有名なヒーローのファットガムさんだ。大きな体は丸みがあって少し可愛らしい。
「あ、すんません急に!」
「…いえ、」
「あの!でも気持ちは本物なんで!」
「でも、…お互い名前も知らないし」
「名前!教えてください!」
「え…」
「会ってすぐナンパ…今時の若者怖い…」
「な!先輩!ナンパじゃねーっス!本物っス!」
「市民を困らすな」と再びファットガムさんが少年をどつく。その奥では大人しそうな子が若干引いていた。いやでも、ほんとに会ってすぐ告白…?なぜ?私の何がそうさせたのだろうか。特になんの変哲もない普通の大学生だ。一目惚れ?いやいや、生まれてこの方特別綺麗だとか可愛いとかも言われたことのないどこにでも居るような容姿のはずだ。そもそもなぜ彼らとこうして関わっているのかはつい先程の出来事で。
「さ、ネーチャンも怪我ないかだけ診てもらった方がええ。一応病院行こか」
ファットガムさんに連れられていく。そう、日が暮れてきた最中、バイトで働いているお花屋さんのすぐ近くにヴィランと言われる悪組織が出現して、それに巻き込まれた時に駆け付けてくれたのがこのファットガムさん達ヒーローだ。
「歩けるっすか?!あ、俺抱えるっス!」
「え、だだだ大丈夫で、す……!?」
「あー、ほら、手貸してください」
立ち上がろうとすれば足首に痛みが走って何故かほぼ強引に手を引かれてあっという間に抱えられた。幼さを帯びた顔からは想像もつかない鍛え上げられた体が彼の露出の多いコスチュームから直に伝わって顔に熱が集まった。不可抗力だ。これは許して欲しい。
病院に連れられて簡単に処置も終え、検査で1日だけ入院となった私は一度処置室から出てしばらく待ってくれたファットガムさんたちにお礼を伝える。
「まぁ酷い怪我やなくてよかったわ。ほな、俺らは報告があるから失礼させてもらうで」
「はい。本当にありがとうございました」
頭を下げて何度もお礼を言う私にファットガムさんは、その愛らしい表情で謙遜する。
「なんかあったら連絡してや。これうちの事務所の連絡先やから」
名刺をいただいて再び頭を下げる。
「ほら、レッドも一旦本会に帰って報告があるんやから。授業もあんねやろ」
「授業…?」
「あぁ、言ってなかったな。このサンイーターとレッドライオッドは雄英高校の生徒でな。インターンでうちに来とんねん」
「こ、高校生……」
プロ顔負けの立ち振る舞いと活躍ぶりで全然学生とは見えなかった。いままで黙っていたレッドくんが顔を上げる。
「やっぱ子供だって思いましたか」
「……」
「俺、本気なんス。初めて見た時からあなたのこと好きだって思ったんス」
「……でも、私あなたから見たらおばさんじゃない…?大学生だし、」
「歳なんて関係ないっス」
「……そんなに可愛くないよ?」
「俺にとっては世界一可愛いっス」
「……」
真剣な表情で見つめる彼についにファットガムさんも何も言わなくなって、私も言えなくなった。
「……じゃ、その、お友達から…お願いします」
私の言葉にぱあっと顔を輝かせた彼にほんの少しだけ胸が弾んだ。
「ウス!あざす!!あの!名前!俺切島鋭児郎って言います!おねーさんの名前は!?」
「え、と…名字名前、です」
「名前さん!うわー!ちょー嬉しいっス!!」
そうして、突然のその出会いは私の人生で大切な宝物になるものだ。
「名前さん!元気っすか?」
「わ、びっくりした…」
翌日の入院の日も彼、切島くんは突然現れた。
職場体験も終えてインターンに活動していたころだ。ファットガムの事務所で先輩と共に見廻り、街中を歩いていたとき、