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強く決心したのは高校を卒業して少し社会に出た頃だ。高校在学中は少し迷っていた。もともと自信もない自分には、芸能界なんて入ってもきっと辞めてしまう。生き残れないと思ったからだ。そんな中、唯一無二の弟が倒れて病院へ入院し、お金に余裕もなくて苦手な勉強も取り組んでいい会社に入って稼ごうと思ったけれど、現実はそんなに甘くなかった。
これじゃあ足りない。次の手術費用はどうすれば、弟の命は。両親はそればかり通帳を見ては頭を抱えている光景を目にして決意した。
私が必ず弟を助けるから。
そう言って飛び出して事務所を探しまくった。
たどり着いたのは、とても小さな個人事務所。古びた建物と、事務員さんも数えるくらいしかいないプロダクションだったけれど、こんな私を受け入れてくれただけでもありがたくて籍を置かせてもらった。社長と呼ばれる人は、優しそうな少し歳を重ねた男の人で、よく隣には強面のおじさんがセットでついていた。
小さな事務所だから、マネージャーという人は私には着いていなかったけれど、自分なりに業界の人には積極的に挨拶をして一生懸命仕事をこなした。
どんな仕事でもよかった。小さな仕事の前座でも、それがいつか大きなステージに立てる力になるなら。
「…IDOLiSH7」
渋谷の大きなモニターに映る輝かしい7人に目を奪われた。心から頑張れと言いたくなるような、応援したくなるような、素敵なアイドル。
「…私も、もっと頑張らなくちゃ」
現場には事務所関係の人はあまり来なくて、社長も顔を出さなかった。それでも仕事はくれたし、話せばとても優しく接してくれた。
そんな時、念願叶って全国放送される歌番組に呼ばれた。メインは最近デビューして人気急上昇中のIDOLiSH7。まさか共演できるとは思えなくて驚く。
「お前も最近は順調だし、業界関係の方からも評判がいいぞ。CDや雑誌の売れ行きも相当だ」
「ありがとうございます」
「この番組で新曲を歌ってこい。何があっても歌うんだぞ。いいな」
「…?、はい」
違和感を感じたが、事務所を後にして新曲の練習をする。
本番当日。
廊下でIDOLiSH7と出会う。
「…IDOLiSH7のみなさん。は、はじめまして!名字名前です!本日はよろしくお願いします!」
大きく頭を下げる。
「名字さん…!そ、そんな!こちらこそ本日はよろしくお願いします!」
前にいた可愛らしい女の子の言葉に続いて後ろの7人が挨拶をしてくれた。
「この人、コンビニの雑誌のことで見たことある」
「環くん失礼だよ。今人気急上昇の名字さん」
「俺歌全部聞きました!」
「ダンスも本格的でカッコイイと可愛いが共存してるよな!」
「Heyガール!イッツビューティ!」
「こらナギ!」
とても明るく話しかけてくれるみんなに驚きつつ、金髪の男の人は背の低い子に引っ張られていった。
「あの、今から打ち合わせで、そちらのマネージャーさんはどちらにいらっしゃいますか?」
「マネージャーいないので私が行きますよ」
「えっ?」
「え?」
「ま、マネージャーいないのか?」
「そんなことって」
「うち小さい事務所なので」
「にしても…」
「えっと、…マネージャーさん」
「は、はい!小鳥遊プロダクションの小鳥遊紡です!」
「小鳥遊さん、一緒に行きましょう」
「はい!」
会議室に行くまでに小鳥遊さんと雑談する。彼女はまだ19歳になったばかりの新卒で聞き覚えのある苗字は父が社長だかららしい。明るくて礼儀正しくて可愛い女の子だった。
会議室に入ると他にもマネージャーさんやスタッフさんが座っていた。
打ち合わせする。
楽屋に戻る。社長の側近がいる。パシられる。自動販売機に行く。
「あれ?名字名前ちゃん」
「!?二階堂さん…!」
アイドリッシュセブンの二階堂大和さんだ。
「すみません!今から楽屋挨拶に行こうと思ってたんですけど!」
「え?いやいや、さっき会ったしいいって」
とても優しかった。歳も近くて話しやすくて。電話がかかってくる。戻る。
楽屋挨拶に行く。
TRIGGERに会う。
本番前。