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◆ 2019.0624 ( 17:19 )

夏が好き。

顔を上げて晴れていれば、殆ど毎日見えるもくもくと勢いのある雲。
青い空にずっと変わらず凛と映える白い雲。
力強い雲。生命の塊だと思う。あの雲を見ていると。
遠いのにこんなに近い。昔のことが思い出せそうで思い出せない。
恋焦がれるものが近くにあるようで手に入らない。そんな気持ちになる。

強い強い日差しがアスファルトをこんがり焼いていく。
陽向にある植物たちが蜃気楼で揺れながら汗をかいている。
日陰行けば視界が不自然なほど暗くなる。
陽向と日陰の世界は違うような感じがする。僕と君はこっち側、あの人はあっち側。
そんな風に人が遠く感じる。

虫の声がうるさい。うるさすぎて耳が痛い。
死んでいると思ったら死んでいない蝉が飛んでくる。
蚊が離れない。蟻がごはんを運んでいる。踏んでしまう。
虫は触れない。虫一匹の為にマンションを与え私が半日譲るくらい。
それでも誰もいない寒い毎日よりはずっといい。みんなが生きている夏は賑やかでいい。

夏の夜の匂いがいい。
人が暮らしている匂いが沢山する。
窓から入ってくる風が世界のいろんなことを運んでくる。
誰かの吐息が聞こえるくらい音がする。
部屋にひとりきりでも世界のたくさんの音が遊びに来る。
それを聞きながら勉強したり絵を描いたり目を閉じたりする。
夏の夜は長い。

夏は汗をかくから嫌いとも聞く。
汗をかく。髪がぴたりとくっついたりサラサラではなくなってしまう。
虫も植物も人間もくさい。
それでいい、それが夏。

子どもの頃は夏休みが楽しみだった。
だからきっと夏が好きだった。
大人に夏休みはない。私にはお盆休みも正確には存在しない。
それでも、7月8月が近づくとどきどきしている。
夏にわくわくしていた子どもの頃の心がまだ今も震えている。

夏は好きだ。
何の思い出がなくても好きだ。





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