「あれ…」
「ん?どうかした?」
「徹くんって、メガネだっけ?」
お昼時、彼に外で一緒に食べようと呼び出されて待ち合わせ場所についた。
笑顔で手を振る彼に違和感を感じて、すぐにそれが何なのか気づいた。
彼がメガネをかけていること。
結構前からかけてるよ、と言われて記憶を遡ってみるけど全くそんな覚えはなかった。
高校のときは部活三昧で一緒にいる時間が少なかったこともあって彼のことはあまりよく知らなかった。というか知ろうとしていなかったからかもしれない。
そう言ったら少しショックを受けたみたいだったけど。知らないものは知らないし、どうしようもない。
拗ねた彼に「これから知ればいいでしょ」と言ったら機嫌は上々。腹に黒いもん飼ってる割には案外扱いやすいタイプだ。
「惚れちゃった?」
「嫌いじゃないけど、見慣れないかな」
「見慣れない…かあ。なるほどね。
莉央のメガネ姿は俺好きなんだけど、外ではかけないの?」
「外では必要ないし…あまり持ち歩いたりはしないよ」
ふぅん、と空返事が返ってくる。
この話題に飽きたのかと彼から目線を逸らしたら機嫌の良さそうな声が降ってくる。
満足そうに、でも少し意地の悪そうに微笑む彼がいた。
こういう表情に女の子って落とされてんのかな、なんて考えたりする。
「なんか、いいなそういうの」
「そういうのって…」
「俺だけが知ってるみたいじゃん?」
「え…あ、あぁごめん…高校の時授業中はメガネだったよ…今もだけど」
「えぇ〜」
「メガネ好きなんですか」
「メガネが好きっていうか、メガネかけてる莉央が好き?」
「はあ」
「メガネのときキスしようとするとさあ、邪魔じゃん。こう、俺がとってやってキスすんの好きなんだよね、ちょっと興奮する。」
「マニアック」
確かに部屋でメガネをかけているとふと手を伸ばされることがよくある。
あれはそういう事だったのか…興奮してたのか…どういう心理だ。
「マニアックじゃないよ!今度やってみなよ!」
「誰と?」
「…わかってて聞いてるでショ…」
俺以外の誰とやるのさ、と不機嫌そうに視線を左へ向ける。私はこういう、子供っぽいところを見るのが一番好きだなあ。なんて考えながら彼のメガネに手を伸ばす。
身長差があるたら胸元を掴んで屈ませてメガネを取る。驚いて目を見開く彼を無視してキスをした。
「…」
「…」
「え…」
「やっぱり、よくわかんないかも…興奮するの?」
「されるのも興奮するかも…」
「…新しい扉開かないでください…」
にや〜と変な笑顔を浮かべる彼が今日一番に気持ち悪い。そういえばご飯まだだったね、と半歩ほど先に歩き出した彼に続く。
「ねえ、今度はさ。」
「ん」
「ヤるとき、メガネかけててよ」
「邪魔だってどうせイラつく癖に」
「そんなことないっ」
あるから言ってんだよ。
言葉を飲み込んでついていく。
後日、結局邪魔だと不機嫌そうに見下ろす彼に
「だから言ったのに」と苦笑する私がいるのだ。
終
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