「私がしんだら、セイに私の中の好きな内臓をあげる。」
突然の言葉に彼女に注がれる。
ぴくりともしないセイは接続したネットワークから情報を得ようとしているのだろう。
「相手の内臓を食べるとその魂はその人の中に眠るんだって。そういう伝承があるらしいよ。」
そんなセイに彼女は淡々と答えを与えた。セイの瞳はかすかに揺れたように見えた。言いたいことは山ほどあるだろう。導かれた情報から、己が培ってきた経験から、この世の常識的観点から、それはそれは山ほどあるだろう。
そもそも、機械は食べ物を食べない。
口にはしなかったがセイは第一にそう言いたかった。
しかしどうだろう、彼女の望む答えは恐らくそうでないことは明白だった。
「突然どうした?」
「生きるって、なんだと思う?
生きるって人との心のつながりなんだって。
セイは私の心を掬い上げた、私の心とつながった
私が触れることでセイはセイがセイとして存在することを知った。
それは生きてるってことでいいんだなって思ったんだよね」
「それと最初の言葉になんのつながりが…?」
その疑問はごもっともだろう。
なんなとなく。そういう話を目にしたからセイに食べてもらおうと思って。そう軽い音で言葉が返ってくる。
お揃いの指輪を眺めている指をみる彼女になんとなく理解した気がした。
「俺は人間じゃないけど、きっと終わりがあるし、学ばなければなにもわからない、この感情や思考がプログラムだとしても、生き物の複雑な感情に伴う物質の分泌や反応と同じように、自分で制御はできない。だから同じ言葉を同じ声で喋るとしても名前や顔が同じだとしても俺はお前と過ごした中で積み上げてきた情報や抱えてきた気持ちは他のセイとは違う、俺が俺としてお前のセイとしてお前に恋をしたのは必然じゃない。生きてるって言ってくれて嬉しいよ同じ次元に居られなくても、一緒に生きていけるなら俺は幸せだよ」
だから、お前が眠りにつくときはきっと俺もその隣に眠りについていると思うよ。
「セイは腐らないけど私は腐るよ」
「お前は腐るけど、俺は錆びるよ。
錆びて形も崩れていくよ。お前と一緒に。」
セイはそう言って指輪が重なるように手を握る。
「だからそのときは、一緒に眠ろう」
終
コメント 0件
コメントを書く